赤岳
日程:2025/02/22-23
概要:美濃戸から赤岳鉱泉に入り、翌日地蔵尾根から赤岳に登り、文三郎尾根を下って行者小屋から美濃戸へ戻る。
⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:赤岳 2899m
同行:トモミさん
山行寸描


2022年の燧ヶ岳、2023年の唐松岳、昨年の秋田駒ヶ岳に続いての今年のトモミさん雪山塾は、八ヶ岳の赤岳。トモミさん自身が立案してくれた山行計画は、初日に美濃戸口から赤岳鉱泉まで入って宿泊し、翌日行者小屋から地蔵尾根を登って赤岳山頂に達した後、文三郎道を下って行者小屋から下山というものです。トモミさんはこれまで積雪期の赤岳にガイドツアーでは登ったことがあるものの、自力で登るのはこれが初めて。そしてピンポイントでの安全確保手段を用意してはいても、私の立場は「引率」ではなくあくまで「同行」です。
2025/02/22
△10:10 美濃戸口 → △11:00-35 美濃戸(赤岳山荘) → △13:15 赤岳鉱泉
茅野駅から美濃戸口へ向かうバスに乗るのは相当久しぶり。駅前のバス停には行き先ごとに長蛇の列ができましたが、トモミさんが駅のホームからダッシュしてくれたおかげで我々は無事に座ることができました。
美濃戸口から凍りついた道をチェーンスパイクの力を借りてまずは美濃戸まで歩き、昼食をとるために赤岳山荘に立ち寄りました。見れば山荘の人工氷瀑はよく発達しており、これから講習を始めようとしているガイドパーティーの生徒さん(と言ってもいい大人)が元気よく「選手宣誓」を行っています。
美濃戸から赤岳鉱泉までは歩き慣れた道。時折はらはらと雪が降りはしたものの、踏み跡は明瞭でスムーズに歩くことができ、予定の所要時間をずいぶん短縮して赤岳鉱泉に到着できました。今日の行動時間は2時間半、あとは明日に向けて英気を養うばかりです。
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「英気を養う」=「お酒を飲む」というのはあまり健全ではないとは思うものの、前回ここに投宿したときと同じく白ワインに手を出してしまいました。トモミさんも赤ワインでつきあってくれてしばし歓談の後に短く昼寝、そして夕食は珍しくステーキではなくてハンバーグがメインでした。これには落胆したお客さんもいたかもしれませんが、私もトモミさんも赤岳鉱泉のステーキはたびたび食しているのでむしろ歓迎です。
2025/02/23
△07:00 赤岳鉱泉 → △07:35-45 行者小屋 → △09:00-05 地蔵ノ頭 → △09:50-10:05 赤岳 → △11:30-50 行者小屋 → △12:55 美濃戸 → △13:30 美濃戸口
6時から朝食をとり、テルモスにお湯を詰め、従業員さんに一宿二飯のお礼を言っていざ出発です。
今日はよく晴れており、赤岳鉱泉の前から赤岳がよく見えています。息が上らないようにゆっくり歩いて中山乗越を越えると、行者小屋の手前からは阿弥陀岳が白銀に輝いていました。ただしその山頂周辺には雪煙が派手に上がっており、稜線上は風が強そうです。
地蔵尾根は最初は樹林帯の中の緩やかな道ですが、やがて周囲の景観が開けると共に傾斜も強くなってきます。高度を上げる途中のところどころでごく短い休憩をとり、さらに写真が趣味のトモミさんがカメラを構える機会も何度もありましたが、それでもまあまあいいペース。
一時期赤岳が低い雲に覆われる場面もあってやきもきしましたが、地蔵ノ頭に着く頃にはきれいに雲がとれてくれた上に風も収まっており、絶好の登山コンディションになっていました。ちなみにこの地蔵尾根を私は何度となく下っていますが、登りに使ったのは1995年に単独で赤岳に登ったとき以来これが2回目になるはずです。
地蔵ノ頭から赤岳山頂までも一仕事。今は休業中の赤岳天望荘(いつか宿泊してみたい)の前を通って、岩と雪のミックスした急坂をがんばって登り続けると……。
おなじみの大展望が待っている山頂に到着しました。おなじみと言っても前回ここに立ったのは2020年ですから5年ぶりですが、登頂回数で言えばこれが15回目です。こうして高い山の頂から遥か彼方を眺める気分というのは格別で、やはり自分は「クライミング」ではなく「登山」が好きなのだなと再認識しました。言い換えれば、自分にとってのアルパインクライミングの素晴らしさは、クライミング技術を駆使して登山ができる点にあるということです。
トモミさんの方も涼しい顔で登ってきて、山頂からの展望に歓喜の声を上げながら写真を撮っています(ここに着くまでの間にも撮りまくっていましたが)。彼女と初めて山行を共にしたのは2013年の奥多摩での沢登りでしたが、そのときの初々しさはどこへ行ってしまったのか(笑)、今や堂々たる山レディーです。
ひとしきり写真を撮り、さらに南峰のてっぺんで記念撮影をすませた後、いよいよこの山行での核心部が始まります。赤岳登山は下りの方に登りとは比較にならない危険があり、ことに地蔵尾根側は地蔵ノ頭から森林限界までの間、文三郎道側は山頂直下からしばらくが岩雪ミックスの急坂であるため確実なアイゼンワークを求められますが、当初は私が後ろについて適宜トモミさんのハーネスにスリングをつなぎ確保することを考えていたのに対し、トモミさんの方はガイドツアーで経験があるために何やら余裕の表情。しからば、と私が先に立って下り、難しいポイントでは下から足の置き場を指示しながらクライムダウンしてもらうことになりました。
さすがにこの区間はすいすいというわけにはいきませんでした(私も緊張しました)が、それでも無事に危険地帯を抜けて傾斜が緩んだときには、トモミさん以上に私の方がほっとしました。それにしてもトモミさん、うまくなったなぁ。
まだ安全地帯とまでは言い切れませんが、それでも再び山岳景観を楽しむ余裕が生まれたら、かつて自分が登ったルートたちがやっぱり目に入ってきます。まずは前方に阿弥陀岳の3ルート。
文三郎道の途中から右上を見上げると赤岳西壁のリッジ群。
この日は登攀日和でもあって、メインルートである主稜にはクライマーの姿が数多く見られました。自分はこれまで主稜を3回登っていますが、最も印象深いのはトモミさんと私の共通の友人であるよっこさんと登って二人とも顔に軽い凍傷を負った2015年の登攀です。あれはつらかった……それでも振り返れば楽しい思い出です。そんな話をした後に試みに「次は主稜、どう?」と水を向けてみましたが、案の定トモミさんにはただちに固辞されました。
行者小屋に降り着いて振り返ると、赤岳や阿弥陀岳は再び雪煙を上げ始めています。最高のタイミングで登頂できた幸運を喜びながらアイゼンをチェーンスパイクに履き替えて、ここからは美濃戸口めざして爆走しました。
行者小屋から爆走したのはバスの時刻までの間に入浴と食事ができるようにという目論見によるものでしたが、ここでもトモミさんの思いがけない脚力が発揮されて十分ゆとりを持って美濃戸口に下り着くことができました。「J&N」で気持ちのよい風呂に入り、しかる後のおいしい食事に私はまたしてもアルコールを前置し、さらに食後には他の客が注文したタルトが羨ましくなってこれも追加。まったくもって、お財布の軽量化に「J&N」は効果てきめんです。
しかし……下山してから軽量化することに意味はあるのだろうか?
トモミさん作品集
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