塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

唐松岳

日程:2023/03/19

概要:山女子2人と共に八方池山荘に泊まり、八方尾根から唐松岳まで往復。風の強さには緊張したが、素晴らしい展望に恵まれた。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:唐松岳 2696m

同行:トモミさん / エリー

山行寸描

▲八方池山荘の近くから見た朝焼けの眺め。前も後ろもヤバい(笑)。(2023/03/19撮影)
▲唐松岳山頂からのパノラマ。どちらを向いても大展望。(2023/03/19撮影)

昨年3月に後立山の唐松岳を目指したものの、視界が悪く丸山までで引き返したトモミさんとエリー。その際に「次の機会には君もついてきたまえ」と2人から指令を受けていたのですが、本当にそれが実現してしまいました。プランとしては土曜日にバス移動で八方尾根の麓に入りゴンドラとリフトを乗り継いで八方池山荘まで上がって宿泊し、日曜日に唐松岳までをピストンしてその日のうちに帰京。トモミさんが宿やバスの手配を全部してくれたのに、土曜日の天気が全国的に悪く直前までやきもきしましたが、晴れ女エリーのおかげで予定通り決行ということになりました。頼りになる娘たちに引率してもらって、私はのほほんとついていくだけの大名山行(敬老山行?)です。

登山前日の昼過ぎにバスで白馬八方に降りると、雪というより雨模様。ゴンドラで上がってもガスガスですが、明日の天気予報が快晴になっているので不安はありません。

八方池山荘に泊まるのは私は初めてですが、ビュッフェスタイルの夕食をお腹いっぱいいただき(白馬岳ではないけれど「大䨮溪」もいただき)、掛け布団がいらないほどに暖かい部屋でゆったりと寝ることができました。みんな、明日はがんばろう。

2023/03/19

△07:00 八方池山荘 → △10:00 丸山 → △11:25-40 唐松岳 → △12:40 丸山 → △13:50 八方池山荘

午前3時に起床して出ていくパーティーもありましたが、我々は山荘で朝食をとってから出発する計画にしており、その前に御来光を仰ぎに外に出てみました。

日が昇る方角には遮るものがなく、左に目を転じていくと戸隠山から高妻山、妙高山、火打山、雨飾山とかつてそのピークを踏んだ山々が連なっています。

さらに後ろを見るとモルゲンロートに染まる白馬三山や、南の方に鹿島槍ヶ岳も近くに見えていてトモミさんは大興奮。確かにこの眺めはヤバい!キンと冷たい空気の中に立っていても時間がたつのを忘れそうになります。

6時から朝食をとり、先行者が多いために登路がトレースされていることを期待してワカンを山荘にデポして、いよいよ出発。緩やかな登りをこなしながら徐々に高度を上げていきましたが、立派なカメラをぶら下げている2人はここぞというポイントに差し掛かると撮影モードに入るので、登高ペースはかなり遅めです。

八方池や下ノ樺にはテントが張られていました。自分もかつては残雪の八方尾根や遠見尾根の途中にテントを張ってアルパインルートを目指したものですが、八方池山荘の快適さを知ってしまうとテント泊はもうできないかもしれません。

鹿島槍ヶ岳の双耳を面白く眺めたり、シュカブラ状の雪面の模様を楽しんだりと飽きることのない登りが続きましたが、尾根上の雪は徐々にクラストを始め、その変化に伴いアイゼンを装着し、さらにはストックをピッケルに持ち替えてといった具合に細かく気配りをしながら先行パーティーの後を追い続けました。

尾根の上部に達すると登頂を終えて戻ってくる登山者とすれ違うようになりましたが、この頃から右(北)から左(南)へと吹き抜ける強い風のために緊張感のある登高になってきました。高度の影響も多少あってどうしても足が止まりがちになりますが、立ち止まってしまっては寒風のためにかえって体力を消耗するので、ここは我慢のしどころです。

やっと稜線に出ると、まず目を引くのは南隣の五竜岳の巨体です。

黒部川を挟んで剱岳の黒々とした姿も立派。

目指す唐松岳のピークはすぐ近く。あと少し、がんばろう。

登頂!折よく居合わせた登山者に写真を撮ってもらえた上に、この頃には風が収まってきたのも幸運です。おかげで雲一つない快晴の空の下、心置きなく写真を撮りまくりました。見渡せば先ほど名前をあげた山々に加え、ここからは眼下に不帰ノ嶮を見下ろせ、その向こうの天狗の大下りの先に白馬三山が見えています。また、遠く目を凝らせば北には富山湾、南には槍ヶ岳のとんがりも認めることができました。

私がこのピークに最初に立ったのは1993年なので今からちょうど30年前、そして直近では不帰一峰尾根を登った2014年に登頂していて、その間に2回ここに登っていますからこれが5回目の唐松岳ということになります。しかし最初(8月)を除いてこれまですべて5月の連休の登頂だったので、3月という冬と春の境目での登頂は初めてです。そういう意味では、自分にとってもこれは価値のある登山でした。

我々が下る頃には、朝に下界を発ってワンデイでピークまでを往復する登山者たちがわさわさと登ってきており、稜線が細くなっている八方尾根上部ではすれ違い渋滞を生じるほど。この時期の唐松岳がこれほど人気の山だとは知らなかったので、この賑わいぶりには驚きました。

それでもやがて尾根の幅が広がり、傾斜も緩くなって穏やかな下降となったら、後は春山JOYといった気分で下るだけ。この1年間続いている激務のために山歩きの機会をあまり作れていないエリーは膝がぷるぷるになったそうですが、どうにか無事に八方池山荘に帰り着くことができました。お疲れさま。

下界に降りて最寄りのカフェで昼食をとり「八方の湯」で温泉につかってさっぱりしてから、予定通り16時半発新宿行きのバスに乗って帰京の途につきました。すると、稜線上に丸く虹のような光彩が輝く不思議な光景を見ることができました。

ブロッケン現象に似てはいますが、それにしては太陽と虹と見る者との位置関係が異なります。きっとこれは、1年越しのリベンジを果たしたトモミさんとエリーに対する山からの祝福だったに違いありません。

……などと喜んでいたのに、後日知ったところによるとこれは大量に飛散した花粉が虹色に見える「花粉光環」(別名「悪魔のサークル」)だったそうです。やれやれ……。