日原川川苔谷逆川

日程:2013/06/02

概要:川乗橋から川苔谷沿いの林道を30分で逆川に入渓。ウスバ林道が横断する地点で遡行を終了し、大ダワ経由で鳩ノ巣駅へ下山。

山頂:---

同行:さとし&よっこ夫妻 / チオちゃん / スミヨさん / トモミさん

山行寸描

▲最初の2段10m滝。初めての沢登りの最初に登る滝がこれというのはちょっと厳しいかも。(2013/06/02撮影)
▲水流の強い3段10m滝の3段目。つっぱりで抜ける。(2013/06/02撮影)
▲ハイライトの10m滝。出だしのヌメヌメには緊張させられる。(2013/06/02撮影)

奥多摩駅からバスに乗って川乗橋で降りたボル友のチオちゃん、スミヨさん、トモミさん、それに私の4人組が装備を整えながらぼんやりと待つことしばし。やがて、我々一般ピープルの前に乗り付けたタクシーから悠然と下り立ったさとし&よっこ夫妻は、開口一番「いや諸君、待たせたね」。

……というのは嘘で、8時半に奥多摩駅集合という約束だったのになぜか8時半に御嶽駅に着く列車を検索してしまったさとし&よっこ夫妻(どれだけボルダリングが好きなのか)は、後からタクシーを飛ばして必死に追いついてきたというわけでした。

そんなアクシデントで始まったこの日は、私とチオちゃん以外の4人にとっては初めての沢登り。当初はお手軽な丹沢の勘七ノ沢を計画していたのですが、今やそこは「ヒルのマンション」と呼ばれる状態になっているらしいのでパスすることになり、セカンドプランとして出したのが以前遡行して感触が良かったこの逆川です。

2013/06/02

△09:05 川乗橋 → △10:00 入渓 → △10:30 聖滝 → △10:50 カーブミラー → △11:00 逆川出合 → △11:15 2段10m滝 → △13:00-35 ゴルジュ → △14:45-15:15 3段10m滝+4m滝 → △15:30-16:10 ウスバ林道下の10m滝 → △16:15-30 ウスバ林道横断地点 → △16:50 大ダワ → △18:05 鳩ノ巣駅

賑やかだった一般登山者はとうの昔にいなくなり、沢の音しかしない川乗林道を淡々と奥へ進んで行きましたが、6年前の記憶はほとんど残っておらず、どこから沢へ下ったらいいのかわかりません。手元にある『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)のトポによれば林道に入って30分歩いたところの林道が左に曲がるところにあるカーブミラーが目印ということなのですが、「左に曲がるところにあるカーブミラー」が次々に出てくるためにだんだん不安になり、30分ほど歩いたところで「もうここでいいや」と適当に下ってしまいました。

ちょっと悪い斜面を下って沢べりに達し、装備を身につけて遡行開始。それなりに楽しく上流へと沢の中を歩いていったのですが、キャンプ地らしい平地を過ぎた先に石灰岩がきれいに抉られてできたゴルジュが現れました。どうやらこれが聖滝で、その眺めは素晴らしいもののとても突破できそうにありません。

仕方なくいったん川乗林道に登り返して再び上流方向に歩いて行くと、先ほど見送った聖滝をはるか下方に眺めた先で林道がほぼ直角に左に曲がっているところのカーブミラーの足元に、顕著な踏み跡の入口がありました。やれやれ、完全に1時間のタイムロスです。

登山道並みに安定した踏み跡を辿って再び沢に下り着き遡行再開。すぐに右から合わさる沢があって、その合流点ではどこかのスクールらしい一団が川苔谷を下ってきているのとすれ違いましたが、我々が目指すのは右の逆川です。

すぐに最初のポイントとなる2段10m滝が現れました。下段はボルダーっぽく登り、高さのある上段はロープを出すことにします。今回、6人パーティーを2人3組ととらえて、チオちゃんとさとし&よっこ夫妻にそれぞれリードしてもらうことにしていましたが、斬込み隊長はやはり沢の経験者、チオちゃん。水流の右側のやや脆そうな壁をぐるっと巻き上るように登って問題なく上へ抜けて行きました。以下、チオちゃんとトモミさん、よっこさんとスミヨさん、さとし氏と私という組合せで順次、滝の上へ出ました。

細長い小滝ではわざと水に浸かったりして先に進みましたが、数日前までの天気予報では考えられなかったほど天気が良くなったとはいえ、まだ6月に入ったばかり。日陰では身体が冷えてきてしまうので、日差しが暖かい広場のような場所を見つけて昼食休憩としました。

トポに書いてあるとおりに巨岩のゴーロを過ぎ、杉の植林を左に見て単調な遡行を続けると、やがてゴルジュが現れました。最初の小さい釜を持つ2m滝は、チオちゃんは左から、私は右からのへつりにトライしましたがうまくいかず次々にドボン。このプチDeep Water Solo感覚も沢登りの楽しみではあるのですが、それでも悔しい。

くねくね廊下のような地形の先の釜は右から越えて、ゴルジュ出口の釜を持つ4m滝は腰まで浸かって滝の下に達し、滝に打たれたハーケンから下がっているスリングをつかんで強引に抜けることになりますが、身体が冷えてしまってパワーが出ないトモミさんだけはロープで引き上げました。

さらに小ゴルジュを抜け、仕事道の橋をくぐり、小滝をいくつか越えて大ダワ沢の滝を右から合わせれば、ゴールが見えてきます。ここまで一貫して先頭を切ってくれていたチオちゃんに代わって、ここからはよっこさんが先陣を勤めることにしました。

ワサビ田跡を右岸に見て、さらに滑り台のような滝を越えると、3段10m滝と釜を持つ4m滝。3段10m滝の下2段はなんということもなく登れますが、3段目は樋状になっていて少々威圧感あり。しかしここは左右の壁に手頃な凹凸があり、両手両足突っ張りで登れます。まずよっこさん、スミヨさん、次いでチオちゃんが登って、その後のトモミさんは上からロープで確保してもらってトライしたのですが、出だしの2mが少々気合のいるところで既に消耗してきているトモミさんには厳しく、ショルダーの出番となりました。

続く4m滝はトポでは右岸を巻くとありますが、この記述通りに巻いてしまったのではもったいない!ここは右側のかぶった壁をイナバウアー(死語?)の態勢でへつるのが楽しいところで、皆でわいわい言いながらトライしましたが、よっこさんとスミヨさんは期待を裏切らず見事にドボンしてくれました。

最後の10m滝はこれまでにない大きさがあり、皆、どこを登るのだろう?という顔で見上げましたが、鮮やかなオレンジ色のスリングが右壁の途中に残置してあり、ルートファインディングの楽しみを奪ってしまっていました。この滝は、中段のテラスまでが傾斜は緩やかながらヌメって少々怖く、テラスから上は傾斜が強くなるもののガバに恵まれて難なく登れます。したがってテラスでランナーを1本とりたくなるのですが、残置ピンがほしいなら自分で探す、探して見つからなければ自分でハーケンを打つ、というのが本筋のはず(なのでチオちゃんには、ハーケンとハンマーを携行してもらっていました)。ともあれ、ここは経験者のチオちゃんに先頭を登ってもらい、安定した登りで滝上へ抜けたところで支点を作ってもらいました。セカンドのトモミさんは大奮闘。よっこさんはヌメった下部に心臓バクバクのリード、スミヨさんはガッツ石松登り、さとし氏は右手の苔の中に巧みにホールドを見出して余裕のリード。最後に私がランナーを回収して、全員が無事にウスバ林道に到達しました。

時間の都合もあって、この日はここで終了です。前回もさらに上流にある25m大滝を登り損ねていたので今度こそと思っていたのですが、出だしの1時間のタイムロスが響いてしまいました。すみません……。

前回は百尋ノ滝を見に行きましたが、今回は反対方向へ向かいます。ウスバ林道は大ダワまでの間に何カ所か斜面のザレが覆っていて緊張するところがあり、一度はチオちゃんが危うく滑落しかけましたが、途中からは安定した登山道に戻って、我々を大ダワへ、そして鳩ノ巣駅へと導いてくれました。

以前、鷹ノ巣谷を遡行したときにチオちゃんが見つけてくれた河辺駅至近の「梅の湯」で熱いお風呂に浸かってから、待望の生ビールで乾杯。やっぱり沢登りの後は、生ビールぐびぐびにがっつりお肉です。ほぼ全行程にわたって先頭を切ってくれたチオちゃんや、初めての沢登りでも安定したリードを見せたさとし&よっこ夫妻はさすが。現場力を遺憾なく発揮したスミヨさんもすごかったですが、一番の頑張りは、へこたれそうになりながらも泣き言を言わずに最後まで歩き通したトモミさんだったと思います。山でのつらかった記憶は、さほどかからずに楽しかった思い出に変わるもの。ぜひまた、癒し渓の沢旅にご一緒しましょう。