エルドラド〜世附峠越え
日程:2025/03/25
概要:浅瀬入口から浅瀬橋を経て大又沢林道を法行沢まで進み、エルドラドを経てP838に登り、浅瀬橋近くに降りた後に芦沢橋まで歩いて白旗社に詣でてから新設の登山道を登り、世附峠を越えて駿河小山へ下る。
⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:---
同行:---
山行寸描
先週のミツマタヒルズに続いて、今日は同じく西丹沢のミツマタ群生地であるエルドラドを訪問。エルドラドには2023年と2024年に訪れていますが、いずれも長距離縦走の途中に立ち寄ったかたちの訪問で、エルドラドだけを目的とした山行はこれが初めてです。とは言うものの、起点となる浅瀬入口から単に行って帰ってくるだけでは面白くないので、エルドラド鑑賞後の下山先は今年の2月12日に新ルート(下図)が開通したばかりの世附峠越えの道を使っての駿河小山とすることにしました。
駿河小山から不老山の西に伸びる尾根を越えて世附川に下る道は2021年に歩いていますが、そのときのルートは駿河小山から悪沢峠を越えて芦沢橋に下るものであったのに対し、今回は芦沢橋から世附峠を経由して駿河小山に下るものなので、自分にとってこの世附峠越えの道は新旧共に未踏ルートです。
2025/03/25
△08:25 浅瀬入口 → △09:10 浅瀬橋 → △10:10 ソーラーパネル → △11:05 P838 → △13:10-20 芦沢橋 → △14:10 世附峠 → △14:15-20 サンショウバラの丘 → △14:25 世附峠 → △16:10 駿河小山
新松田駅前のバスは今日も満員。そして私が降りた浅瀬入口バス停で大勢の登山者が下車しました。そのうちのいくたりかはミツバ岳へ向かうようですが、ここから浅瀬ゲートまでの区間のためにマイクロバスをチャーターしている団体がいて、どうやらあちらは私と同じくエルドラドへ向かうようです。
こちらは自分の足にモノを言わせててくてくと浅瀬ゲートに向かい、そこで世附川上流の各沢筋に釣り人が入っていることを確認してからさらに先に進みます。見ればこの車道の周辺にもミツマタの木が植わっていて、いずれも見事に満開の様相でした。
浅瀬橋を渡って大又川沿いに地蔵平方向へ進むと、なぜかところどころにできたてほやほやのアスファルト舗装がありましたが、これはいったい何のため?……などと首をひねりつつ歩いているうちに、浅瀬入口でチャーターバスに乗って先行していた団体に追いつきました。どうやら10人ほどの奥様方を大ベテランの男性ガイドが引率している模様で、彼らを追い越すときにガイド氏に聞いてみたところエルドラドから椿丸まで足を伸ばすのだそう。私の方はエルドラドから世附峠を越えるつもりだと話すと、そのガイド氏は「ほう」と感心したような嬉しそうな顔をしてくれました。
法行橋を渡ってしばらく進んだ先から折り返して法行沢林道に入り、すぐに出てくるソーラーパネルの横を通って法行沢の河原に降りたら飛び石で渡渉。このあたりは一度覚えてしまえば迷いようがありません。
細い尾根をしばらく登ると斜面が開けてきて、すぐにミツマタの黄色い花が一面に広がりだしました。エルドラドの始まりです。
直前の土日が好天かつ高温だったので開花が進んでいるかと思っていましたが、満開と言うにはまだ少し早い感じ。ただ、明後日からしばらくは天気があまり良くない予報なので、これがベストタイミングだったと言えそうです。
大規模な黄砂のせいで霞んで見える空の下、大又沢ダムを遠くに見る定番の構図でミツマタの斜面を見下ろしてからエルドラドを抜け出しましたが、終わってみるとちょっとあっけなかったという感が拭えません。わずか20分でエルドラドを終えてしまった自分の歩き方にも問題はあった(もっとじっくり見て回ろうよ!)のですが、客観的に見ても先日のミツマタヒルズの見事さがエルドラドを明らかに凌駕しています。ミツマタヒルズはまずミツマタの密集度がすごい上に、斜面に沿って標高差200mほどミツマタが連続するためにのぼれども のぼれども猶ミツマタの群は終わらず ぢつと地図を見る
ということになるのに対し、こちらは横幅こそあるものの標高差では100mにも達していないのですから。それでも、このエルドラドを先に見てからミツマタヒルズを見ていたら文句なくどちらも楽しめたでしょうが、ミツマタヒルズの後にエルドラドを見てしまうとどうしても見劣りしてしまいます。物事には適切な順序というものがある、というわけです。
さらに気になったのは、エルドラドの斜面の随所に裸地が広がっていたことです。もしやこれは、オーバーユースの兆候なのでは?
エルドラドを終えたらとっとと尾根を登ってP838に上がり、その少し先(椿丸寄り)から南へ派生する尾根を下ります。この尾根は昨年3月のミツマタ巡りのときにも下っていて、実はその際に椿丸まで足を伸ばしていたので今回は未練を感じることなく椿丸を割愛することができたというわけです。
ところどころにミツマタが控えめに咲いている明るい尾根を辿り、世附川沿いの道に降り立ったところでヘルメットとチェーンスパイクは御役御免。ここからは普通の車道・登山道歩きになります。
芦沢橋を渡るとすぐそこに、新品そのものの道標が立っていました。ここからまずはロープ沿いに進んで行けば世附峠に向かうことになるのですが、その前に水ノ木方面の道がどうなっているか偵察をしてみることにしました。
案の定、あの大崩壊地は相変わらず崩壊したままで、水ノ木幹線林道は黄色いテープで閉鎖されていました。あえて上流へ行こうとするなら世附川の河原に降りれば簡単とはいえ、大棚沢林道も水ノ木幹線も公式に通行止めとされているので、まっとうな方法で水ノ木を訪れることは当分難しそうです。
ついで向かったのは、芦沢橋の近くにある白旗社です。これは2021年の世附山神峠越えの際に訪問した祠で、対岸にある天獏魔王社と対になって世附山神峠道を見守っており、この機会に再度の対面を果たしたいと思っていたものです。そしてこれに手を合わせながらふと思ったのは、この世附山神峠越えや2022年の東丹沢周回のときには事前に歴史的モニュメントの位置や由緒を徹底的にリサーチして緻密にコース設定をしていたのに、近頃そうした「まじめな」山行の仕方をしていないなぁという反省でした。
さて、お参りを終えたら律儀に芦沢橋のたもとまで戻って、ここから世附峠に向かって真新しい登山道に入ります。
登山道はいったん浅瀬方向へ戻って沢を渡り、そこから右手(南)の斜面に取り付くかたちにつけられています。植林の中の道は土がふかふかで歩きやすく、ところどころに真新しい標識が立てられていて道に迷う心配もありません。至れり尽くせりとはこのことです。
やがてこの新道はかつて浅瀬橋の近くから世附川を渡って斜面を斜めに上がってきていた旧道(廃道)に合流し、ここから昔の道を使って世附峠を目指すようになります。
こうして芦沢橋から1時間もかからずに世附峠に到着しましたが、そこで再会するつもりだったもう一つのもの、すなわち岩田㵎泉翁の道標が見当たりません。岩田翁が作るユニークな手製道標の中でも世附峠の道標はとりわけ力の入ったものだったので楽しみにしていたのですが、最後にその姿を見た2017年から今までの間に撤去されてしまっていたようです。
ところが後日ヤマレコで世附峠の記録を渉猟していたら、なんと世附峠の岩田道標は今年の2月23日までは健在だったことがわかりました。その日からこの日までのわずか1ヶ月の間のどこかで、道標の撤去が行われたようです。
世附峠で岩田翁の道標を見ることができなかったことに割り切れない思いを抱いた私は、近くにあるサンショウバラの丘に立ち寄ることにしました。今年5月のサンショウバラの季節には篭坂峠からここまで歩いてみようと思っているからですが、やはり、かつて見た樹下の二人の道標は影も形もありませんでした。
サンショウバラの丘から北に菰釣山とその手前の入り組んだ地形を眺めたら、世附峠に戻って下山するばかり。世附峠から下界に向かう道は林道のかたちをしてはいますが、途中には流水にえぐられた箇所もあって車が通れる状態ではありません。そんな歩きにくい道をだらだらと下るのはちょっとした苦行で、途中にある不老ノ滝が想像以上に立派だったことを除けば、なんとも潤いの乏しい山下りでした。
やがて山ノ神に向かう細い道に面した懐かしい馬頭観音像が現れればそこが山口橋で、ここから人家が続くようになるのですが、おや?ここが山口橋であることを示す道標のうち左の手書きの方は、その字体といい色使いといい、岩田㵎泉翁のものに違いありません。しかし、道標の柱の形からすると何か気合いの入った説明書きの板があったと思われる箇所が虚ろになってしまっていて、どうやら往時の姿はとどめていない模様。ここまでくると諸行無常というよりも、岩田道標を徹底して排除しようとする強い意思(あたかも廃仏毀釈のような)を感じます。ともあれ、ここからはよく整備された舗装路をひたすら歩いて駿河小山駅を目指しました。
ゴールインした駿河小山駅から御殿場線で松田に移動して、昨年末にも訪れた「とんかつ零」で一人打上げ。エルドラドは見られたし白旗社に詣でたし世附峠も越えられたしで計画に対する実践という点では文句なしだったのですが、いかんせん世附峠から駿河小山駅までの区間が退屈だったのは計画自体に問題があったかもしれません。また、世附峠や樹下の二人の道標がなくなっていたのも残念なことで、こうしてみると2014年に不老山に登ったときに撮りためた岩田道標の写真たちが、図らずも今では貴重な記録になってしまったようです。
参考
- 世附峠越えの道に関して
- 神奈川県「T27_世附不老山線」『丹沢大山エリアの登山道通行情報』(2025/03/25閲覧)
- こんチャン「2流山屋」さん「西丹沢 不老山 芦沢橋からの新ルート」(2025/03/25閲覧)