水無川沖ノ源次郎沢

日程:2023/11/15

概要:丹沢の水無川本谷F5の上まで書策新道を使い、その上流で右岸から合流する沖ノ源次郎沢を登り、花立から大倉へ下山。2023年のわらじ納めのつもりだが、沢靴は使っていない。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:相模太郎氏

山行寸描

▲書策新道から沖ノ源次郎沢へ。(2023/11/15撮影)

Facebookの丹沢関連グループで知り合った相模太郎氏とは、リアルでは正統派ハイキングの聖峰となぜか大山火祭薪能とでご一緒していましたが、ちょっと踏み込んでわらじ納めに付き合ってほしいと声掛けをして実現した今回の山行の行き先は、表丹沢の沖ノ源次郎沢。ここは20年以上前に私がクライミングを習い始めた頃に岩登りのトレーニングで登ったことがある沢で、一応「沢登り」に分類しているものの水歩きの要素は皆無です。

2023/11/15

△08:00 大倉 → △09:35 戸沢 → △10:25 水無川本谷書策新道横断点 → △10:35 沖ノ源次郎沢出合 → △13:25-40 花立 → △15:50 大倉

2週間前のブナ巡りのときは夏かと思うほど暑かったのに、この日は冬かと思うほどの寒さ。着るものも晩秋仕様の厚着をして、渋沢駅前で相模太郎氏と合流し大倉に向かいました。

大倉から戸沢へ向かう林道は先月下旬にも歩いていますが、真っ暗な中を足早に大倉目指して飛ばしていたので林道沿いの景観は皆目見えていませんでしたから、なんとなく新鮮な気持ちで歩きました。途中の龍神の泉で水を飲み、作治小屋前で小休止して行動食を口にし、そしてこの光景を眺めます。

これがかつて「丹沢の上高地」と呼ばれ善男善女で賑わったであろう戸沢の今の様子です。気候のせいばかりでなく、どこか寒々しいものを感じます。

冒頭に記したようにこのあたりは20年前に何度も通っているのですが、当時はなかった建物ができていたり、その頃からあったであろう堰堤の階段をすっかり忘れていたり。要するに初めて訪れるのと同様の状態なので一人で来ていたら道に迷ったかもしれませんが、丹沢に精通している相模太郎氏が先導してくれたおかげでスムーズに書策新道に入ることができました。

かつて戸沢と表尾根の書策小屋とを結んでいた書策新道も今はその用途を終えて廃道となっており、おおむね道形が残っているものの水無川本谷に降りる手前で斜面が崩れていて、フィックスされたロープにつかまって崩壊地を横断することになります。

慎重に降り立ったところが水無川本谷のF5の上で、道は対岸に続いていますが我々はここから少しの間、本谷を上流に向かいます。幸い、岩の上を飛び飛びに歩いていけばシューズを濡らすことはなく、やがて本谷が右に曲がるところで左(右岸)に黒っぽい岩壁が出てきたら、それが沖ノ源次郎沢です。

少し離れたところから見上げるとF1-20mとF2-20mをいっぺんに眺められて、こうして見るとなかなかの威圧感です。この沢は過去に3回登っていますが、最初の2回はガイド講習でロープに確保された状態でF2の上まででしたし、最後の2003年は私のリードだったもののF1だけ。つまりここから見えている範囲内しか登っておらず、そしてすべて登攀を終えたら懸垂下降して書策新道を下っていましたから、今回のように沖ノ源次郎沢全体を遡行対象として取り組むのは初めてのことです。

本谷の下流に広がる紅葉を愛でながらギアを身につけ、ロープを結んで、まずF1は相模太郎氏のリード。ラインは左寄りの途中にある凹角状のテラスをまず目指し、そこからやや中央に寄って直上ですが、相模太郎氏が登る様子を見ているとホールド上の枯葉の掃除が大変で、しかも枯葉を取り除いたらそこが湿っているために滑りやすそう。ホールドは外傾していて細かく、おまけに相模太郎氏は途中の残置ピンをいくつか見逃してしまったためにランナウトしていて、ビレイするこちらも緊張しました。

F1の上に出たら少し奥に進んでF2に取り付くことになりますが、右端・中央・左から右上と3種類あるラインのうち私が採用したのは最も簡単そうな右上ルートです。

左下から一段上がってからバンドを右に向かってわずかに上がっていくと途中には残置ピンも見つかりますが、足元は草や土に覆われている部分もある上に壁が立っていて圧迫される感じで、けっこうバランシー。それらをこなして右のクラックに達したらカムが使えるようになり、さらに残置ピンも使え、しっかりしたホールドを信じて大きなムーブで身体を引き上げ続けて落ち口の上に抜けることができました。体感としては右上部がIII級+、直上部がIV級くらいですが、これらよりもF1の方がフォローでも難しく感じました。もともとの目論見としては易しいF1を相模太郎氏、それよりグレードが高いF2を私という分担のつもりだったのですが、結果として厳しい方を相模太郎氏に担当してもらってしまい申し訳なし。

F2の上は未体験ゾーンですが、なんでこんなところに?と思うような石積み堰堤が何カ所か出てくるほか、ところどころに小難しい滝を擁していて意外に変化があり面白い遡行になりました。こうしてみると沖ノ源次郎沢はF1とF2だけで終えるのはもったいなく、出合から最後まで詰め上がる価値がある沢だということがわかります。

最後はガレ沢を詰めていって、GPSで花立山荘の標高を睨みながら適当なところで左に上がるとスズタケの斜面になり、すぐに源次郎尾根の踏み跡に達します。そこから花立山荘まではほんの一投足で、本日休業中の山荘の前で相模太郎氏と握手を交わしてからギアをしまいました。

あとは見慣れた大倉尾根の山小屋群を横目に見ながら下るだけ。相模太郎氏はこれらの小屋の経営事情についても詳しく、初めて聞く話ばかりを次々に聞かせてもらいながら下ったので飽きることがありません。

そして最後に昨春整備された大倉高原テントサイトを見物し、その一段下にある大倉高原山の家跡地からの大観望を堪能してから大倉へと下りました。これで今年の沢登りは終わり、同時に丹沢も年内はこれで打止めの予定。雪と氷の便りを楽しみにしつつ、しばらくはのんびり過ごします。そして今回初めてロープを結んだ相模太郎氏とは、来年どこかで丹沢の沢をご一緒することになるでしょう。