塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

聖峰

日程:2023/03/21

概要:Facebookグループ「丹沢ハイキング」の皆さんと共に、鶴巻温泉駅から吾妻山・善波峠を経て高取山に登り、聖峰へ下って大休止後、鶴巻温泉駅へ戻る。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:高取山 556m

同行:Facebookグループ「丹沢ハイキング」の皆さん(約20名)

山行寸描

▲聖峰不動尊の境内からの広角150°の大展望。海が近いのが大山・表丹沢の山岳展望の特徴。(2023/03/21撮影)

自分も参加しているFacebookグループ「丹沢ハイキング」のメンバーの一人・相模太郎さんからお声掛けいただいたのは、同グループの有志で行う聖峰山行。そのときの第一印象は「聖峰って、どこ?」というものでしたが、これは大山南山稜の高取山の少し南から東へと派生する尾根上の小ピークで、展望に恵まれた聖峰不動尊がある場所でした。

このあたりは2021年11月に大山を南から北へ縦走したときに歩いたことがあるだけで土地勘が薄いためもう一度しっかり歩いてみたかったのと、2日前の唐松岳山行のアクティブレストとしても好適だろうということ、そしてオンライン上でしか面識(?)がない「丹沢ハイキング」の皆さんと一度じかに会ってみたいという動機が重なってこの山行に参加することにしました。

2023/03/21

△07:40 鶴巻温泉駅 → △08:05-10 吾妻山 → △09:00-05 善波峠 → △10:45-55 高取山 → △11:35-13:10 聖峰不動尊 → △14:55 鶴巻温泉駅

集合は7時半に小田急線の鶴巻温泉駅。私の最寄り駅である井の頭線の神泉駅からは6時過ぎに乗れば間に合う時刻なので余裕ですが、これでも14時頃に下山できる予定というゆったりプランです。

まずは全員で自己紹介タイム。どうやら当たり前ですが皆さん神奈川県民で、東京都民は私だけの模様です。そしてFacebookやヤマレコで交流している何人かの方の顔と名前を一致させたところで、総勢20名ほどの大部隊の出発となりました。

最初に登り着くポイントは広場と東屋を持つ吾妻山で、その一角にある解説板によればここは、日本武尊が三浦半島から房総へ渡る途中で遭遇した水難に際し海神を鎮めるために海に身を投じた弟橘比売おとたちばなひめを偲んで「あずま・はや」と尊が詠んだ場所だということでした。

標高150mにも満たず「山」とも言えない単なる尾根上のポイントなのに、この展望は見事すぎ。江ノ島や三浦半島もしっかり見えています(が、さすがに弟橘比売が入水した浦賀水道は見えません)。

善波峠までの道すがらにもいろいろな見どころがありました。道端に咲く紫の金瘡小草きらんそう(別名「地獄の釜の蓋」)、繊細な姿の春蘭しゅんらん、地面には東丹沢でよく見られるタマネギ石、見上げれば春らしさを演出してくれる桜の花など。

善波峠に到着して、ここで久しぶりの大山南山稜に合流しました。

一昨年ここに来たときはまだ夜明け前の暗い時刻でしたが、今回は明るい日の光の下で石仏や御夜燈を見ることができました。ただ、明るいとは言いつつも予報通り徐々に雲が広がり始めて少し沈んだ雰囲気が漂っており、どことなく「何かいる」感じがしてきます。

大山方向を目指して坂道をしばらく登ったところでちょっと脇道にそれると、そこには名古木浅間山(善波山)の三角点と手製山頂標識がありました。ここは以前大山南北縦走をしたときには気が付かなかったなぁと思いつつ縦走路に戻ってみると……。

そこには木の幹にマジックで書かれた道案内。なるほど、これでは見落とすはずだ。

鮮やかな椿の花輪を横目に、高取山を目指して怒濤の急坂を登る区間が今回の山行では最もハードなパートで、体温も息も上がってくるところです。

聖峰分岐に登り着いたら傾斜が緩み、そこからしばしの登りで高取山に到着しました。標高556mのここが今回の山行での最高地点ということになります。

北に聳えているのは綺麗なピラミッド形をした大山。前回ここからあのピークまで歩いたときは2時間15分かかりましたが、今日はここから下り一方なので気が楽です。

しかし「気が楽」と言いきるのは実は早計で、聖峰分岐から聖峰までの間はかなりシビアな急下降になっていました。こうした道を下るときには足回りの良し悪しがモノを言うものですが、中に正真正銘ベアフットの方がいてちょっとびっくり。実は日本ベアフット・ランニング協会という団体も存在するくらいなので裸足でのランや山歩きは異常なことではないのですが、すれ違う登山者の何人かはこれを見てぎょっとした表情を浮かべていたのが笑えます。

なんでもない樹林の中に「聖峰山頂」の手書き山名表示を見たら、その先に少し下ったところが今回のメインの目的地である聖峰不動尊です。

標高375m、お不動様の祠の前に広がる芝の広場の前はとてもいい感じ。ここで大休止となり、思い思いにシートを広げての昼食タイムとなりました。

持参した食事は大サイズのカップヌードルだけでしたが、まさかのビールの配給があったりおかずやおやつのお裾分けがあったりで、思いがけず豊かな食卓になりました。皆さん、ありがとうございました!

さらにラッキーなことに、折よく地元の聖峰世話人会の方が不動堂のメンテのために上がってこられて、興味津々の我々の前で不動堂を開き、その由来を滔々と説明した上に白蛇の作り物をわざわざ表に出して下さいました。そのお話によれば、この地は飯能の子ノ権現で有名な子ノ聖が一時修行を積んだところ(したがって足腰に御利益あり)で、もとは洞窟の中に不動尊が祀られていたのが関東大震災で潰れてしまい、世話人さんの数世代前の頃に石像などを掘り出して手作りのお堂に納めたものだそう。かつてはお堂の前の広場の一角に橋のかかった池もあり、蛇もよく出たそうですが、今では蛇の数は減って代わりにヒルが出没することがあるそうです()。

世話人さんが軽トラックに乗って颯爽と帰っていった後に、この山行に参加しておられた元蛭ヶ岳山荘管理人の東城さんたちによるオカリナとウクレレの演奏があり、さらにこの日誕生日を迎えた東城さんのためにサプライズのバースデーケーキも登場しました。東城さん、おめでとうございます。ちなみに私自身は蛭ヶ岳山荘にはこれまであまりご縁がないのですが、2017年の西丹沢周回の途中で立ち寄ったときに東城さんと少し言葉を交わさせていただいた(ここから山市場まで歩くとは大変だな、的な)ことを覚えています。

どんより曇った空の下に広がる相模平野とその向こうの相模湾の素晴らしい眺めを堪能し尽くしたところで楽しかった大休止は終了となり、リュックサックを背負って下山にかかります。

下山ルートは軽トラックが下って行った左手へ進む広い道と大展望に向かってまっすぐ下る狭い道があり、我々がとった後者のルートはそこそこの急斜面によくもこれだけジグザグをつけたものだと呆れるほど細かい九十九曲りの道でした。

先ほどの世話人さんの話では、聖峰不動尊の前の広場は元旦には御来光見物で、また5月には「ひじり峰祭り」でそれぞれ賑わうそうですが、先ほどの九十九曲りの道を看板に書いてあるように7〜15分で登り切る自信はどうやら持てそうにないな……と思いながら山神社を横目に穏やかな山道を下ると、さしたる時間もかからずに市街地に降り立ちました。

最後に県立いせはら塔の山緑地公園でトイレ休憩をとった後、地元の地理に明るいメンバーの先導により「山と高原地図」に頼っていたのでは見出せない山道を使った歩きやすいショートカットを経由して、無事に起点である鶴巻温泉駅に着地しました。ここで山行終了=グループ解散となり何人かは帰宅の途につきましたが、大半のメンバーは(もちろん私も)そのまま打上げの飲み会になだれこみました。

参加する前は自分が場違いになってしまうのではないかと少々心配していたのですが、参加者の中にはバリエーション専業と思っていた方もいればランニング・音楽・美術・山野草など多方面の才人もいてそこに思いがけない出会いがあり、それに聖峰自体の魅力を存分に味わうことができて、下山後のお酒も含めてとにもかくにも楽しい山行でした。すべての参加者の皆さんに、そしてとりわけお声掛けをいただいた相模太郎さんと大部隊を引率して下さったタニレイコさんに、心より感謝です。ありがとうございました。