塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

裏同心ルンゼ〜小同心クラック

日程:2021/12/06

概要:美濃戸から赤岳鉱泉を経由して裏同心ルンゼを登り、引き続き小同心クラックを登ってから、大同心ルンゼ経由大同心稜を下り下山。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:横岳 2830m

同行:セキネくん

山行寸描

▲裏同心ルンゼF5を登るセキネくん。氷の状態はまあまあ。(2021/12/06撮影)
▲小同心クラック1ピッチ目を登るセキネくん。この日は目まぐるしく天気が変わった。(2021/12/06撮影)

1月の尾白川以来時計の針がぐるっと回って久々のアイゼンは、定番の裏同心ルンゼからセキネくんのリクエストで小同心クラックを継続。セキネくんとは2018年に裏同心ルンゼから大同心正面壁雲稜ルートへと繋げていますし、小同心クラックへの継続はその翌年にアユミさんと行っています。ただ、どちらも私は赤岳鉱泉からのスタートだったのに対し、今回は直前まで行き先を決めきれていなかったので美濃戸からの往復。これもトレーニングの内です。

新宿から茅野までの車中ではチキン弁当クリスマスバージョンを食し、八ヶ岳山荘では夕食に山賊焼定食をいただいて、18時には仮眠室に入りました。セキネくんの仕事の都合でこの日は日曜日=登攀日は月曜日というタイミングなので、仮眠室を使ったのは私だけでした。

2021/12/06

△05:45 美濃戸 → △07:35-08:05 赤岳鉱泉 → △08:40 裏同心ルンゼF1 → △10:00 裏同心ルンゼF5の上 → △10:50-11:00 大同心基部 → △11:25-30 小同心クラック取付 → △13:00-15 横岳 → △14:00 大同心基部 → △14:50-15:10 赤岳鉱泉 → △16:30 美濃戸

5時過ぎに車を飛ばしてやってきたセキネくんと八ヶ岳山荘の1階で合流し、美濃戸まで入ります。事前の情報では途中の道が凍っていて危険とのことだったのですが、実際にはそうした区間はほとんどなく、問題なく赤岳山荘の駐車場に入ることができました。

登山道の方もまだ冬景色にはなっておらず、堰堤広場の少し先から徐々に道が凍り始めていましたが、チェーンスパイクがあれば問題なし。セキネくんはそれすらも使いませんでした。やがてアイスキャンディ製作途上の赤岳鉱泉に到着し、ここで身繕いをして出発です。さて、今回はこれまで何度も記録を書いているルートなので、以下のレポートはごく簡単なものにとどめます。

まずF1の氷は十分発達していましたが、直前の2日間に大勢の人が登っているためか階段状で、ロープを結ぶことなくフリーで抜けました。

F2もまた階段状。ここからロープを結び私が先行しました。ここまで前後して登っていた4人パーティーは大同心北西稜へ繋げるという話。豪毅ですなぁ。

ロープの長さの都合でF2の突き当たりのパートとF3はセキネくんが担当。これらもアックスの跡でぼこぼこでしたが、F3の抜け口は氷が薄く、打ち込んだアックスが岩に当たる金属音に我々も悲鳴を上げることになりました。

F3の上からF5の手前までは私がずるずるとロープを引いて、F5はセキネくん。ラインはいくつかとれそうでしたが、先行パーティーにならって右端を登りました。氷がちょっと薄くスクリューを完全には入れられなかったものの、おおむねしっかり凍った状態でした。

F5の上から大同心の基部に向かう氷のルンゼは私が担当。抜け出たところではスクリューが使えないので、アックス2本で支点を構築しました。

大同心稜までの広い斜面の登りは、地味に疲れるところ。先行パーティーの後ろの2人が北西稜の1ピッチ目を辿っているのを横目に見ながら息を荒げて登ります。やがて頭上には大同心正面壁が広がり、雲稜ルートのラインも一目瞭然でした。

大同心稜に登り着いて行動食を口に入れ、余分のアックスとスクリューをデポ。この日は八ヶ岳周辺に雲が押し寄せており、青空が見えたかと思えばガスに小同心が隠されるといったことの繰り返しです。

それでも徐々に青空が優勢となっていき、小同心クラックに取り付く頃には陽光のおかげで背中がぽかぽかするくらいになりました。1ピッチ目はセキネくんが担当。ここは凹角に入ると頭上を塞がれて、まるでクライミングジムで登っているような大胆な動きを求められます。

2ピッチ目は私の担当。ホールドは豊富なので難しくはないのですが、そもそもそのホールドが全面的に信用できるものではない上に、久しぶりに登ると傾斜のきつさとランナウトに緊張します。そして3ピッチ目はセキネくんのリード。出だしの突き出した岩を越えれば後はなんということもないピッチですが、小同心の頭に出る直前に謎のオレンジロープの残置あり。

小同心の頭からは指呼の間に横岳の山頂があって、世が世であれば山頂の登山者から歓声が上がったり手を振られたりするのですが、さすがにこの季節の月曜日とあっては横岳上に人影なし。硫黄岳や阿弥陀岳の上には登山者の姿も見えたのですが……。

意外にもセキネくんは冬の小同心クラックを登ったことがなく、それがこの継続登攀をリクエストした動機だったので、横岳に登り着く易しい最終ピッチもセキネくんにリードしてもらいました。

横岳山頂からの大展望。山登りはやはりこうでなくては。

下りは大同心方向にとり、大同心ルンゼ源頭部から大同心稜へ。昨日チキンばかり食べていたせいもあってか、相変わらずのクライムダウン時のチキンハートを遺憾無く発揮してセキネくんに呆れられながら、それでも無事に赤岳鉱泉に降り着いて装備を解除し、美濃戸へと下りました。

ところで、この構図は何に見えるでしょうか?以前かっきーは大同心をキングコングの背中と形容しましたが、セキネくんは大同心が小同心に向かって合掌しているように見えると言いました。なるほど!してみると大同心は僧侶ないしは修行者で、小同心が如来、周辺の岩峰は脇侍ということになるのかな?

裏同心ルンゼと小同心クラック。どちらも勝手のわかっているルートなので冒険の要素はありませんでしたが、フロントポイントで氷に立ち込んだときのふくらはぎの痛み、ヘッドを遠くへ投げ込むようなクォークの扱い、信用しきれないホールドに命を預けてじわじわと重心を移動する動き、そしてTOした稜線での展望と無事に出発点に戻ってきたときの胸が熱くなる感覚をいっぺんに思い出しました。

コロナ禍のために昨シーズンの冬季クライミングを中途半端なところで強制終了させられてから11カ月。やっとここに帰ってきた、という気持ちです。