塾長の山行記録

日原川大雲取谷

日程:2021/09/19-20

概要:東日原から日原林道を歩いて大ダワ林道に入り、二軒小屋尾根を乗り越した先から大雲取谷に入渓。4時間ほどの遡行で六間谷出合で幕営。翌日、沢筋を詰めて大ダワ経由で雲取山に登頂し、鴨沢へ下山。

分類:関東周辺 / 沢登り

山頂:雲取山2,017m

同行:エリー

ハイライトシーン

▲大雲取谷から雲取山へ。同行してくれたエリーの活躍にフォーカス。(2021/09/19-20撮影)

本稿での地名の同定は、主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)の記述を参照しています。

今年最初の泊まり沢は、エリーと共に10月に計画している山行の予行演習として奥多摩の大雲取谷へ。奥多摩で泊まれる沢としては他に、倉沢谷本谷を遡行して魚留滝あたりで幕営し2日目に長尾谷へつなげるプランも検討しましたが、倉沢谷本谷は泳ぎが多いらしくこのところの気温の低さから却下。かたや大雲取谷はちょうど10年前に遡行済ではありますが、今回はあくまでトレーニングと割り切りました。

2021/09/19

△08:00 東日原 △10:25-35 大ダワ林道入り口 △10:55 二軒小屋尾根 △11:05-35 大雲取谷入渓 △13:40-55 小雲取谷出合 △15:55 六間谷出合

台風一過の日曜日、真っ青な空の下を東日原から歩き出します。台風の動きが遅くてやきもきしましたが、ベストタイミングで晴れてくれました。

日にあぶられながら日原林道を歩くこと2時間余り、10年前に大雲取谷に入ったときは富田新道に入って長沢谷に下りましたが、水量が多いことを懸念して、昨年の小雲取谷と同様に大雲取谷の下流を一部ショートカットすべく大ダワ林道に入りました。

二軒小屋尾根をまたぎ越して桟道を渡り、左下に大雲取谷が近くなったところで緩やかな斜面を下降。そこの河原も泊まりには良さそうな場所で焚火の跡もありましたが、我々はそそくさと遡行準備を行って入渓しました。

入渓して最初に出てくる緊張ポイントはこの小滝です。増水がひどければ左(右岸)を小さく高巻くこともできますが、見たところそれほどでもないので正面突破することにしました。ラインは右のつるつるの壁を外傾したバンドを使ってトラバースし、水流が落ち込んでいるところをまたいでおむすび形の岩に乗り移るというものです。ただ、ここは上から確保したのではセカンドがスリップして釜に引き込まれたときに助けようがないので、エリーに先にロープを引いてもらい、万一のときは後ろから引き戻す作戦としました。この手のつるつる壁にはあまり慣れていないエリーはずいぶん慎重になりながらもトラバースを続け、最後のまたぎ越しは両手両足突っ張りを駆使してなんとか上流へ抜けてくれました。

続いてこの二条6m滝もポイント。右から越えている記録もありますが、一見したところ安全に越えられるラインが見えてきません。このためこれまで通り左から回り込むことにしましたが、ここはセオリー通り私が先行して上から後続を確保です。自分的な課題としては、これまで腰まで水に浸かって左に回り込んでいたのを水に入らずに垂壁のトラバースでクリアできるかという点にありましたが、実際に取り組んでみると手足共にうまい具合にホールドがつながっていて問題なし。続くエリーにはホールドの間隔が遠い箇所があると思われたので水に入ってもらい、最後は倒木も使って上がってきてもらいました。

小雲取谷出合で休憩をとって行動食を補給すると、かつてS字峡と呼ばれていた(らしい)ゴルジュ帯に入ります。と言っても難しいところはないのですが、釜に入らなければならないところもあって身体が冷えてきます。

釜を持つ小滝。右から回り込んで落ち口に達し、ここをよいしょと跨いで解決ですが、濡れずにトラバースできるはずなのになぜかエリーは水に浸かってアプローチ。そんなに水が好きなのか?泳げないはずなのに?

その後の小滝は左側にガバホールドがあって比較的容易。落ちても致命的ではなさそうなところはエリーにフリーソロで先行してもらいます。

この辺りの岩は、表丹沢の岩に比べるとしっかりしていて安心して荷重を掛けられる印象。もっとも表丹沢がヒルの巣窟と化してからはそちらの沢には足を運んでいませんが……。

大雲取谷のラスボスがこの8m滝ですが、これも左側から容易に越えられます。ちょっと高さがあるのでエリーは一瞬躊躇していましたが、意を決して取り付いてしまえば淀みなく登っていきました。

この日の泊り場は前回も泊まった六間谷出合で、10年前は小雲取谷出合からここまで1時間で到達しているのに今回はその倍の2時間もかかってしまいました。単独と2人パーティーの違いというのが一番大きな要因ですが、食材などで荷物が重くなり私自身の足も捗らなかったことは否定できません。

それはさておき、前回は左岸の高台にテントを張ったのに対し今回は右岸に上がってみると、そこにはまるでキャンプサイトとして整地したかのように絶好の小平地がありました。大喜びでピンチシートを設営したら早速火熾しです。昨日までの連日の雨に濡れた薪ばかりで思うようなビッグファイアには育ちませんでしたが、それでも煮炊きをするには十分な火力を得られ、私が持参したアスパラベーコンとエリーが持ってきたお揚げピザをアテに日本酒で乾杯しました。もちろん焼きマシュマロも忘れてはおらず、2人で一袋をあっという間に平らげました。

2021/09/20

△08:35 六間谷出合 △10:15-40 大ダワ △11:05-35 雲取山荘 △12:10-15 雲取山 △12:40 小雲取山 △13:45-50 ブナ坂 △16:10 鴨沢

夜間は多少冷え込み、マットが薄かったエリーは寒い思いをしたようでしたが私の方は快眠。おかげで4時起床のはずだったのに気がつけば5時近くになっていました。昨夜の熾火を掘り起こして小枝を乗せて息を吹きかけてやれば火が復活。もう大きな炎はいらないのでじわじわと湯を沸かしましたが、そうしている間にもエリーはレディーなので朝からパック星人に変身です。

マカロニとソーセージの朝食を済ませ、デザートにオレンジをいただいたら撤収にかかりましたが、時間にゆとりがあるからとのんびりしている内に時刻は8時を回ってしまっていました。

遡行再開。六間谷出合からの本流筋は「平凡」と言われており、そのため以前ここに来たときは幕営地点から大ダワ林道に上がったのですが、この日は沢筋を詰めてみることにしています。ただ、確かにこれと言った滝はない上に倒木が多く、沢登りの対象としては労多くして益少なしといった感じ。それでも最後は開けた斜面を気持ちよく登って大ダワに到着し、これで遡行は終了です。

大ダワで大休止とし、沢装備を解除してトレッキングスタイルに変身。見上げると近くのナナカマドには赤い実がたわわになっており、秋の訪れを感じさせました。ここからは緩やかな登り道を辿って雲取山を目指します。

雲取山荘でコーラを補給して生き返り、さらに登り続けてこの日の最高地点となる雲取山に到着です。山頂からは大菩薩嶺と富士山がきれいに見えているほか、甲武信ヶ岳とその向こうの国師ヶ岳も見え、1988年に行った奥秩父主脈縦走を懐かしく思い出しました。

南側の展望台からは奥多摩の山々の向こうに丹沢全山もくっきりと見えました。奥多摩の大縦走と言えばハセツネ、丹沢なら丹沢全山縦走西丹沢周回。それぞれに思い出深い山域です。

展望を楽しんだら後は山道を下るだけですが、ここから下界まで重荷を背負って4時間も歩き続けなければならないのが辛いところ。楽しい沢登りの後にはどうして、下山という余計な苦行がもれなくついてくるのか……。


大雲取谷は久しぶりでしたが、コンパクトなルート上に気分よく登れる滝を連ねて、改めていい沢だなと思いました。台風の接近と秋雨前線の活性化で直前まで雨が降り続いていたのにさほどの増水が見られなかったのは、雲取山の豊かな森林による保水力のおかげでしょうか。軽装早出なら日帰りも可能な沢ですが、ここはやはり1泊2日にして沢の中での夜を楽しみたいところですし、我々も存分に楽しみました。エリーもお疲れさま。