塾長の山行記録

盆堀川市道沢 / ナメイリ沢 / 棡葉窪

日程:2021/09/26

概要:秋川水系の盆堀川支流をパチンコ遡行。上流から順に市道沢、ナメイリ沢、棡葉窪をワンデイで。

分類:関東周辺 / 沢登り

山頂:---

同行:---

ハイライトシーン

▲市道沢F2。水流の右脇と水流中の細かいホールドをつないで登る。(2021/09/26撮影)
▲ナメイリ沢F2-4あたり。ぐんぐん高度を上げながら楽しくこなしていける。(2021/09/26撮影)
▲棡葉窪4m滝。この沢の中でハイライトになってもおかしくないのにFナンバーを与えられなかったのが不思議。(2021/09/26撮影)

本稿での地名の同定は、主に『奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート』(山と溪谷社 1996年)の記述を参照しています。

シルバーウイーク後半は木土日の飛び石連休で、前々からの計画ではここは金曜日に休暇をとって関西の沢に行く予定でしたが、COVID-19の影響で遠征は中止。さらに先週末の泊まり沢の疲労が抜けきっていないので木曜日は完全レストにし、金曜日は休暇を返上して仕事、土曜日も天気が悪いので引き続き自宅で過ごし、日曜日ワンデイで奥多摩の沢に行くことにしました。

そこでガイドブックを眺めながら行き先を検討した結果、今まで足を踏み入れたことがない日原川小川谷方面と千ヶ沢石津窪を遡行したことがあるだけの盆堀川方面の二択が浮かび、その中からソロでも気軽に遡行できてパチンコもできる後者をチョイスしました。

2021/09/26

△06:35 盆堀林道ゲート △07:10-30 市道沢入渓点 △08:20 市道沢遡行終了点 △08:55 千ヶ沢林道 △09:30 ナメイリ沢入渓点 △10:15-20 ナメイリ沢遡行終了点 △10:55 車道 △11:10-20 清水橋 △11:25 棡葉窪出合 △13:25 グミ尾根 △13:30-45 茱萸御前 △14:05 荷田子峠 △14:35 瀬音の湯

始発電車で渋谷を発って武蔵五日市駅到着が06時14分。バスで行くなら沢戸橋までですが、そこから市道沢の出合までは盆堀林道を1時間半ほども歩かなければならないようなので、タクシーを使うことにしました。「山は金の力で登る」のです。

採石場の少し先にゲートが設置されており、タクシーで入れるのはここまで(2,500円)。それでもずいぶん時間短縮になってくれており、盆堀林道を上流へ進んで途中から千ヶ沢ちがさわ林道に入り市道沢入渓点まで30分の歩きですみました。

ここは千ヶ沢林道の終点ではなく途中に過ぎませんが、ちょっとした広場になっており、私が今回参照した1996年のガイドブックではここまで車で入れるように書かれています。しかし今は上述の通りゲートができている上に千ヶ沢林道自体も荒れているので、車でのアプローチは不可能です。ともあれここで遡行装備を身につけて広場の先の橋の近くから盆堀沢に降りましたが、市道沢はこの広場の下流側で盆堀沢に合流しているので、広場から少し戻ったところから沢に降りた方が簡単だったようです。

貧相な出合を経て市道沢に入ると、最初のうちはひどい荒れよう。最初にこの沢に入った沢ノボラーはよほどの酔狂としか思えません。

しかし市道沢に入って5分余りで、このF1(8m)が出てきました。おっ、ちょっとは見栄えがするじゃないか?と思いながらラインを探りましたが直登は無理で、左に見えている脆そうなルンゼを登って右へトラバースしました。

その後は沢の雰囲気が良くなり、荒れた箇所を挟みつつもナメやら函状やらが出てきて楽しくなってきます。そして出てきたのがこの沢の最後の滝であるF2です。ガイドブックには2段10mと書かれていますが手前の段は倒木に覆われてこれと認識できるような姿をしておらず、釜を持つ本体はF1と同程度の高さだろうと思います。

この滝は水流の右手から近づくと水流の中と右脇とに細かいホールドがつながっており、岩もそこそこしっかりしているので、ぬめりによるスリップだけを注意して丹念に登ればさほど怖くはありませんが、短いながらも体感IV級はありそうでした。

F2を登ったらもうおしまい。ここから同ルートを下降してもよいのですが、それもつまらないので左岸の尾根を越えて千ヶ沢林道に降りることにしました。斜面の登りは少々足元が滑るもののさしたる困難はなく、また下りの沢筋も滝はなく緩やかに下って千ヶ沢林道までつながっていました。


千ヶ沢林道を下り、さらに盆堀林道を歩いて次はナメイリ沢です。

盆堀林道の途中から分岐して伝名沢を目指す林道の途中の奥まったところがナメイリ沢の入渓点ですが、そこには古びた缶ビール他の缶入り飲料と花束の残骸が供えられていました。この沢で事故でもあったのでしょうか?

そうした不吉な印は見なかったことにして、軽く行動食を口にしてからナメイリ沢に入りました。市道沢も荒れていましたが、荒れ具合という点ではこちらも負けていません。ガイドブックに書かれている3mや2mの小滝はほとんどガレの下に埋もれてしまっているのではないかと思いますが、その先に大きめな滝が見えてきてこちらも元気を取り戻しました。

F1は2段10mとガイドブックに書かれていますが、これもそんなに高さがあるかなぁ?という感じ。傾斜は寝ているしガッチリつかめるホールドが随所にあるのでまったく容易です。

上の滝の落ち口のすぐ上に小さい釜を持つ小滝があり、これを合わせて2段10mとしているのならまあそういうカウントの仕方もあるかなという感じ。その後短いガレ区間の先にナメ滝やトイ状の滝が断続的に出てくるようになり、この辺りは歩いていて楽しいところ。

3mの小滝を簡単に越えるとまたガレが沢筋を覆いますが、おそらくその辺りはかつて綺麗なナメ床が続いていたのではないかと思います。

滝の同定が難しいのですが、これはたぶん二俣の右俣出だしにあるナメ状小滝。水流の中に積極的に足を入れていけば簡単。

沢が斜度を上げてF2(6m)?これまた同定に自信がありませんが、登ること自体は容易です。

そして現れたのがF3トイ状(11m)。遠目にはF2上段と対して違わない印象ですが、近づいてみると意外に足の置き場がないことがわかります。

右手側のホールドを頼りにレイバック気味に足裏を押し付けつつ滝の中を登ってゆくと、途中にひん曲がったRCCボルト。そして上に抜けたところにもがっちり打ち込まれたピトンに比較的新しい6mmスリングが残置されていました。これらはこの沢で目にした唯一(唯二?)の人工物です。

F3のすぐ上にはF4(5m)がありますが、これまたホールドをしっかり探せばOK。上の方で少々ホールドが乏しくなるのがよいスパイスになっていました。

ガイドブックではF4の先で遡行を終えて右岸の尾根に乗るようにと書かれています。それでも先にはまだ少し滝が残っている様子なのでさらに遡行を続けましたが、ヌメって少々悪い小滝(タワシ出動)を一つ越えると伏流になってきたのでおとなしく遡行終了としました。

右岸の尾根にはほぼ水平に踏み跡が続いており、無理に高度を上げなくてもこれを辿れば自然に高萱尾根に乗ることができます。その後、植林地らしき斜面に出てフェンス沿いに下降を続けましたが、これが驚くほどの急降下。幸いチェーンスパイクを持参していたので安定して下ることができましたが、この沢の核心部はむしろ下降にあると言っても過言ではなさそうです。


盆堀林道を下って採石場の目の前にある清水橋へ。最後の遡行対象である棡葉窪ゆずりはくぼを目指します。

清水橋から盆堀川の上流側を覗くと意外に高さを感じますが、この右(左岸)側から踏み跡を辿って容易に川に降りることができます。そこから50mほど上流へ歩くと石積み堰堤の手前に右から入ってくるのが棡葉窪です。

棡葉窪は出合から小さい釜と小滝を連ねており、これは素晴らしい!……と言いたいところですが、実は太い取水パイプやトラロープやらが垂れていて興醒めです。この取水パイプは綺麗な円を描くポットホールから水を取るためのもので、したがってこのポットホールの上では人工物から解放されることになります。

ちょっと大きめな釜を左から回り込んでクリアして先に進むとその先にも釜と小滝が連なり、そして……。

F1(6m)。下半分は簡単ですが、上半分のトイ状のところはホールドが乏しくちょっと頭を使います。しかし1段上がれば水流の中にも足を置く場所が見つかるので、出だしは背中を左壁に押し付けてバックアンドフット風に足を上げて解決。落ち口は、下から見たときは水流の落ちているチョックストーンの左側かと思いましたが、実際のホールドの具合から軌道修正してチョックストーンの右に抜けました。このように水流の中を正面突破できたのは水量がそれほど多くなかったからで、雨後などの水量の多いときには右から巻くことも可能であるようです。なお、ここには左岸からお助け用と思われる残置ロープが垂れていましたが、さすがにこういうのはやめてほしいものです。

その後も小滝が続いて「棡葉窪、いいじゃないか」と思えるようになってきました。返す返すも出だしの人工物が残念ですが、そこを我慢して通過すればなかなか楽しい遡行体験が得られます。

そんなことを考えながら足を運んでいると、この日初めて先行パーティーに遭遇しました。前方にはガイドブックに言うところの4m滝があり、4人パーティーのうちの一人がロープを引いて右端の水流沿いを登っているところでした。挨拶を交わして釜の手前に残っている3人の前にこの滝を登らせてもらいましたが、一見立っているように見えるものの右壁に使いやすい大きなホールドが続き、大胆に身体を引き上げて落ち口を越えることができました。この滝も左壁に残置スリングが数本あり、これをつかんで左から登ることもできるよう(ガイドブックでもA0扱い)ですが、少なくともこの日の水量ではそうしたものの必要性を感じませんでした。それよりも、この4m滝はこの沢の中でハイライトになってもおかしくない見栄えと面白さを持っているのにガイドブックの著者がFナンバーを与えなかったのが不思議です。

4mのすぐ先にF3(5m)。これも水流通しで簡単です。

お先に失礼します。

さて、F3を過ぎたら左岸の斜面を登って作業道から清水橋の近くへ降りるのが一般的らしいのですが、「瀬音の湯」で温泉につかりたいので、さらに上流に進んでグミ尾根に登り着き、荷田子峠から北へ下ることにしています。

グミ尾根に乗るためには上流の二俣から青線を辿ればおそらく平和ですが、ゲジゲジっぽいマークが気にはなるものの赤線のラインもそれほど等高線が詰まっているようには見えないので、こちらを目指すことにしました。しかし、結論から先に書くとこれは失敗でした。

上図の赤線のルンゼの入り口には黒光りする滝がありますが、傾斜は寝ており難しくはありません。ただ左の本流筋の方にそれまで見なかったピンクテープが設置されており、あたかも「右に入るな」と言っているようです。この時点で計画を変更すればよかったのですが、吸い込まれるように右のルンゼに入ってみると、高度を上げるにつれて斜面は脆く、そして傾斜はきつくなってきました。

この程度の悪場はこれまで何度も経験しているので不安は感じませんが、それにしてもスピードが上がりません。これは困ったなと思いながら徐々に方向を左へ修正してゆくと、幸いに植林帯に入ることができて作業用の踏み跡が使えるようになりました。やれやれ、助かった。

グミ尾根に登り着いて少し歩いたところから北に開けたところで馬頭刈尾根の展望を眺めてほっと一息、そして茱萸御前のベンチで沢装備を解除してから、荷田子峠経由で「瀬音の湯」に下りました。


今回遡行した市道沢・ナメイリ沢・棡葉窪はそれぞれに個性のある滝を持つ沢ですが、単体で取り組むといずれも1時間程度で終わってしまうので、中途半端に時間が余ったときか、今回の私のようにパチンコにするのが良さそうです。ただ、それでも13時半には沢装備を解除することになったので、トレーニングとして見ると物足りなさも。もう1本どこか加えられたかな?いや、タクシーを使わずに沢戸橋のバス停から歩くべきだったか。

なお、棡葉窪の4m滝で追いついたパーティーの先頭の方と言葉を交わした際に、グミ尾根にどのラインで登るかということについてのやりとりがあり、上述の赤線ラインを登るつもりだと話してしまったことを後悔しています。自分たちもグミ尾根を目指すと言っていた彼らが、分岐でピンクテープを見つけて安全な青線ラインを目指してくれていることを願ってやみません。