檜洞丸

日程:2024/11/23-24

概要:初日は玄倉から西丹沢県民の森、石棚山稜を経て檜洞丸に登り、青ヶ岳山荘泊。翌日、ツツジ新道を下り西丹沢ビジターセンターに下山。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:石棚山 1351m / 檜洞丸 1601m

同行:---

山行寸描

▲石棚山から見た玄倉方面。中央やや右寄りに丹沢湖の湖面がちらっと見えている。(2024/11/23撮影)
▲ツツジ新道の下部で出会った紅葉。この周辺はまだしばらく紅葉を楽しめそう。(2024/11/24撮影)

11月6日にネパールから戻ってきてからすでに2週間以上がたち、そろそろ冬に向けてスイッチを切り替えなければならない時期になってきましたが、その前に丹沢の紅葉を眺めに行こうと思い立ってなじみの青ヶ岳山荘にショートメッセージで予約の可否を問い合わせたのが木曜日。すると山荘の主の理生さんから間髪入れずに折り返しの電話が入り、予約は可能(その時点での最後の枠だった模様)だが、ツアーの団体が入るために念のためシュラフを持参してほしいとの要請を受けました。もちろんそれくらいならたいした荷物にもならないので、問題なくOK。そこから青ヶ岳山荘宿泊を前提として前後の行程を検討しました。普通は歩きたいコースが先にあって、その上で宿泊場所を手配するものですが、今回はその逆パターンだったというわけです。

2024/11/23

△07:50 玄倉 → △08:20 小川谷出合 → △09:05-15 西丹沢県民の森入口 → △11:10-15 石棚山 → △12:35 檜洞丸 → △12:40 青ヶ岳山荘

檜洞丸にはこれまで10回以上登っていますが、どうせならこれまで登ったことがないコースを使ってみようと西丹沢県民の森から石棚山稜に上がることにしました。そこで地図に掲載されているコースタイムで計算してみるとゆっくり目に出発しても十分明るいうちに青ヶ岳山荘に着けそうでしたが、調整するのも面倒なので始発電車を使って新松田駅経由玄倉まで入り、あとは写真でも撮りながらのんびり登ればいいかと割り切りました。

新松田駅では臨時バスが出るほど賑わった西丹沢VC行きのバスでしたが、玄倉で降車した登山者はごくわずか。それぞれ身繕いをすると三々五々それぞれの目指す方向へ歩き出しました。私はと言えば、バス停近くの自動販売機で買ったホット飲料を一気飲みして身体を温めてから、玄倉林道を上流へと向かいました。この道をずっと奥へ進めば有名なユーシンブルーがありますが、ほんの少し歩いただけでも玄倉川の透明度の高いグリーンの水面を見ることができました。

小川谷出合からは玄倉林道を離れて仲ノ沢林道に入ります。この道(小川谷出合〜穴ノ平橋間)は2008年に小川谷廊下での沢登りの際のアプローチとして歩いていますが、それ以来16年ぶりに足を踏み入れていることになります。するとすぐに道路の全面が流水に覆われて川のようになってしまい、雨も降っていないのにどうしたことか?と不思議に思いつつ水深の浅いところを選んで歩き続けたところ、道の山側の法面下部から豊富な水がこんこんと湧き出ていて、これが林道を川に変じていたものの正体でした。

湧水の場所を過ぎれば歩きやすい道になり、やがて穴ノ平橋に到着しました。この辺りには昭和初期に林業労働者のための中ノ沢休泊所があり、山神峠との間に「御料林径路」と呼ばれる道が通じていたという歴史を持っています(ちなみに山神峠とユウシン休泊所を結ぶ道が「山神径路」)。しかし今はそうした歴史を振り返っている暇はなく、橋を渡った先にある西丹沢県民の森の入口でリュックサックを下ろし、行動食を口に入れました。この入口にある看板には火の用心を促す燃やすまい 山は緑に 萌えるものという五七五の警句があって、なかなか洒落ています。

休憩を終えて西丹沢県民の森に入ると、すっきりまっすぐな植林の中に歩きやすい道があり、東屋や橋(使用中止中)もあってすてきなところでした。ただ、この森の中を気持ちよく歩けるのは初夏から初秋にかけてだろうと思いますが、今ではこのあたりもヒルの生息域になってしまっているのが残念です。

径路にしたがって森の中を右に回り込んだ先で尾根に乗ると、そこには「紅葉の尾根道」と書かれた標識が立っていました。おっ、これは期待できるかも?と思いつつ登っていくと……。

確かにところどころに綺麗な紅葉を目にすることができたのですが、色づいた葉を見せてくれる木はまばらである上に、すでにチリチリに枯れて茶色くなってしまったものも少なくなく、紅葉狩りの場としては十分なものとは言えません。

それよりもこの尾根道の傾斜のきつさにはまいりました。しかも、あまり人を迎えていないせいか道型が不鮮明な箇所もところどころにあって軽い緊張を強いられます。自分の丹沢歩きはいわゆるバリエーションを含むことが多く、そういうときはヘルメット・ハーネス・チェーンスパイク・ストックの四種の神器が欠かせなかったのに対し、今回はこれらを封印していずれも持ってきていなかったのですが、せめてチェーンスパイクとストックのいずれかは持ってくればよかったと後悔しました。しかし、我慢の登りを続けること1時間ほどでようやく傾斜が緩み、それと共に植生が変わって見通しがよくなってきます。

箒沢の方から上がってくる登山道と合流したらもう石棚山稜の上で、そこからほんのわずかで石棚山の山頂に着きました。そこは「何をもってここを山頂と言うのか?」と毎度不思議に思うほどピークらしからぬ平坦地ですが、一応三角点もあるのでここでリュックサックを下ろし、再び行動食でカロリーを補給しました。三角点があるくらいですから展望はよく、正面には雨山峠を鞍部とする檜岳山稜が見えているほか、起点となった玄倉方面を眺めると丹沢湖の湖面もちらっと見下ろすことができました。

さらに檜洞丸方向へ少し進んで高さを上げると、背後には富士山がきれいに白くなった姿を見せてくれました。いつ見ても・何度見ても、富士山を目にするとテンションが上がるのは日本人の性さがというものでしょうか。しかし、石棚山稜上のブナを中心とする木々はほとんど葉を落としてしまっており、紅葉や黄葉を眺めるというこの山行の主目的に照らすともはや適期を逸していることは明らかでした。

そうこうしているうちに登山者で賑わっている檜洞丸に到着し、そこからわずかに下ったところに建つ青ヶ岳山荘に着いてしまいました。時刻は12時40分、いくらなんでも早すぎです。ヘタをすると理生さんも到着していないのではないかと心配しましたが、幸い前日にも宿泊客があったのと今日の大人数への準備のために昨日から山荘に入っていたそうで、つつがなく受付を済ませることができました。しかし、チェックインしたとは言っても他にすることもないので、とりあえずビールを1本買い求めて13時からちびちび飲みつつ、徐々に宿泊客が増えていく様子を眺めていました。

夕方になったところで檜洞丸に登り返し、富士山あたりに沈む夕日を眺めようとしましたが、あいにくそちらの方を雲が覆ってしまっています。まぁここからはダイヤモンド富士を前に見ているし、この空の様子もこれはこれで風情があると考えることにして、適当なところで夕日見物を切り上げて山荘に戻りました。

17時から始まった夕食時の山荘の中は、なかなか大変でした。10数名からなるツアーの一行にそれぞれ量(大盛りとか普通盛りとか)を聞きながらカレーとスープを出し、器を引き上げ、ついでその他の宿泊客に同じことをして……といった具合に30数名の対応を行って、1時間ほど戦場のような忙しさが続いた後に一段落したときには理生さんはへとへとといった様子で一息ついていましたが、さすがに自分の夕食を柿の種とみかんだけで済ませていたのでは疲れるのも当然ではありませんか?

ツアー客が2階の寝室に引き上げた19時半すぎに夜景を見に外に出てから、残りの宿泊客も1階で就寝です。その多くは布団を使うことができましたが、私ともう一人の宿泊客(女性)、それに山荘のサポートスタッフ(男性)の3人は掘り炬燵の周りで各自のシュラフにくるまりました。幸い山荘の中は夜を通してさほど気温が下がらず、寒さを感じることはなかったのですが、旅行期間の中で悪化していた首から肩にかけての神経痛がこの夜も寝る姿勢によって強く出てしまい、そのたびに身体の向きを変えなければならず寝苦しい一夜を過ごすことになりました。

2024/11/24

△06:40 青ヶ岳山荘 → △06:45-50 檜洞丸 → △07:00 ツツジ新道分岐 → △08:35 ゴーラ沢出合 → △09:20 西丹沢ビジターセンター

朝5時前から朝食が始まり、昨日の夕食と同様のバタバタが繰り返された後に、ツアーの一行は日の出を待つことなく蛭ヶ岳を目指して出発していきました。ところが彼らは出発に際して山荘スタッフにこれといった挨拶もなく出て行ってしまったため、事前準備も含めてその受入れに苦労していた理生さんは呆然。もともとこのツアーは大倉から塔ノ岳に登って尊仏山荘に泊まり、次の日に丹沢山・蛭ヶ岳・檜洞丸を回って西丹沢VCへ下るプランだったのが、何らかのミスによって尊仏山荘に泊まれなくなったために逆コースにすることになり、青ヶ岳山荘にヘルプを求めてきたという経緯があったのだそうです。それなのに!ということでハートブレイク状態の理生さんに山荘に残っていた一般客も同情しきりでしたが、ここでフェアを期するために私見を書いておくと、ツアー参加者の皆さんは山荘側の各種指示に従順でしたし、北アルプスの巨大山小屋と比べれば恵まれているとは言えない山荘の設備や食事内容に不平を漏らすこともなく、さらに退去時には個々に「お世話になりました」と口にしながら外に出ていた人もいて、全体としては良識ある団体だったと思います。ただ、引率していたガイドが山荘の主に対してきちんと挨拶をしなかったのは(丹沢の山小屋の常識に照らすと)いただけなかったですね。

さて、こちらは当初の計画では犬越路から大室山に登り返し、加入道山を経て白石峠から西丹沢VCに下るつもりだったのですが、神経痛に悩まされた一夜の後でモチベーションが上がらず、あっさりツツジ新道を下ることにしてしまいました。そんなわけでゆっくり目の6時40分に山荘を辞し、塔ノ岳の向こうの空と海とをオレンジ色に染める朝日を眺めてから檜洞丸に登り返しました。

すっかり枯れた木々の足元に霜柱が目立つ寒々しい雰囲気の中、石棚山稜をわずかに下って分岐からツツジ新道に入ります。

ツツジ新道の下りの途中にもところどころに紅葉は見られましたが、疎らでもあり、色が鮮やかなものも少なく、率直に言って低調でした。

う〜ん、今回の山行はハズレだったかなと思いながらゴーラ沢出合に下り着いたのですが……。

東沢右岸の高い所をトラバースする日当たりの良い区間には明るい広葉樹の林が広がっていていい感じ。

そして尾根の上端が近づいてくるとそちらの紅葉が進んでおり、これなら十分鑑賞に耐えられます。しかも登山道より下の斜面の林はこれから色づく気配ですから、この区間に限ればまだしばらくは紅葉を楽しめそうです。

最後に美しい林の中を歩けたことに気を良くして歩き続け、車道に降りたらそこからは徒歩10分で西丹沢VC。その建物の前では、陽光をいっぱいに受け止めている大きな木がおまけの紅葉を見せてくれていました。

この日は丹沢湖マラソン大会が開催されていたため、西丹沢VCを出発したバスは20分ほど遅延しましたが、自分としてはノープロブレム。というのも①紅葉鑑賞、②青ヶ岳山荘宿泊と並んで今回の山行の目的の一つに位置付けていたのが新松田駅から徒歩5分ほどの位置にある「とんかつ零[1]」初訪問であり、ちょうど開店時刻からしばらくたった頃合いに新松田駅に到着できたからです。この「とんかつ零」は東京・門前仲町の著名店「とんかつ 丸七」の支店だったのが今年の6月に独立したもの(ただしメニューはそのまま)だそうですが、そうしたバックグラウンドを抜きにして、焼肉「大松園」喪失の悲劇後に新松田界隈でこれはという店を探していた自分のアンテナに引っかかっていたのでした。

ところが「とんかつ零」に着いてみると、店が開いている様子がありません。おかしいなと思いながらも諦めきれずに店内を覗き込んでいるとどこからともなく現れた若い女性(実は店員さん)が声を掛けてきて、店長が交通事故に伴う道路規制のために来られていないので、申し訳ないが開店は1時間ほど後になりそうだという説明をしてくれました。マジか!とは思ったものの、これが楽しみで新松田に戻ってきた以上1時間くらいなら待つしかあるまいと覚悟を決めて、駅近くの喫茶店「モンペリエ」に入りコーヒー+αをいただきつつ時間をつぶしました。

1時間後に「とんかつ零」の前に戻ってみると開店待ちの小さな行列ができていましたが、すぐに恐縮しきった店長さんが出てきて我々を店内に入れてくれて一安心。記念すべき初注文はオーソドックスに「焼きカツ丼[2]」の「上[3]」としました。しばらく待ったところで出てきた焼きカツ丼のボリュームはご覧の通り。卵でとじていないので「焼き」カツ丼なのだそうですが、極薄の衣に包まれたカツは火の通し加減が絶妙で、噛むとすっと切れてくれて食べやすく、しかもジューシーです。実は私は豚の脂身が苦手で、そのために他店でとんかつを注文するときは必ずと言っていいほどロースではなくヒレにするのですが、このカツはそんな自分にもおいしくいただける品の良さとボリュームを両立させていました。その下の薄い卵とご飯も甘めのタレが加わって相性が良く、これはリピート必至です。ただ、やはりこの大きさだと最後には満腹感が勝ってしまい、食べ切るのに少々苦労しました。この点に関する自分の反省は次の通りです。

カツ丼を食する直前に喫茶店で抹茶チーズケーキセットをいただくのは、今後は控えよう。

脚注

  1. ^「零」と書いて「しずく」と読む。しかしこれはかなり無理があるような……。「しずく」であれば正しくは「雫」(雨かんむりに下)なので、最初にこの店名を見たときは「『とんかつゼロ』か、なんだかかっこいい名前だな」と思ってしまった。
  2. ^メニュー裏面の「商品説明」によれば、焼きカツ丼とは卵焼きを炊き立てご飯の上に乗せ、その上から揚げたてのとんかつとたっぷりのたれをかけたカツ丼とのこと。
  3. ^同じく「商品説明」によれば、並・上はロースの部位を使用しており脂身は少なめで、上は厚さ約3センチ280g、並は薄めの約180g。一方、特上・特上ハーフはロースより脂のサシが入り食感が良いリブロースの部位を使用しており、特上は厚さ3センチ約300g、特上ハーフは厚さ約1センチ200gとのこと。