中川川ヤビキ沢左俣左沢

日程:2023/10/18

概要:西丹沢中川川水系のヤビキ沢左俣左沢を遡行し、石棚山稜のテシロノ頭に出てから、つつじ新道を起点へと下る。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:檜洞丸 1601m

同行:---

山行寸描

▲二つ目のナメ。最初のナメより長さがあり、途中には段差もあって楽しい。(2023/10/18撮影)
▲たくさんある涸れ滝のひとつ。そのほとんどがぐいぐいと気持ち良く登れる。(2023/10/18撮影)

◎本稿での地名の同定は、主に『丹沢の谷200ルート』(山と溪谷社 2017年)の記述を参照しています。

先週末の沢登りは本来1泊2日で計画していたものを日曜日の天候悪化に伴い日帰りに短縮していたので、あまり間を置かずにもう1本手軽な沢登りに行くことにしました。沢に面白みがあり、かつソロで行っても危険がないところという虫のいい条件を設定してあれこれ見ていたところアンテナにかかったのが丹沢の石棚山稜の北側にあるヤビキ沢。きれいなナメと登りやすい涸れ滝が面白い小粒な沢という評判なので、今回のコンセプトにぴったりです。ただ、ヒルが超苦手な自分にとって「丹沢」は霜月の季語なので少々逡巡したのですが、ブナの色付き具合も気になるところなので、このところの朝晩の冷え込みに期待してフライングすることにしました。

2023/10/18

△08:45 西丹沢ビジターセンター → △09:35-50 ゴーラ沢出合 → △10:25 ヤビキ沢出合 → △11:05 990m三俣 → △11:40 1100m二俣 → △13:05-25 テシロノ頭 → △13:45 つつじ新道分岐 → △15:15 ゴーラ沢出合 → △15:35 西丹沢ビジターセンター

自宅の最寄駅を5時半頃に出発して、小田急線新松田駅に着いたのはほぼ7時。ここに降り立つのは5カ月ぶりです。

相変わらず謎のマニラ食堂の姿になぜか癒されながら7時15分発の西丹沢ビジターセンター行きバスに乗り、途中では新東名高速道路の工事(2027年完成予定)の進捗を見上げつつ、青空の下を西丹沢の奥地へと向かいます。

西丹沢ビジターセンターに降り立った乗客は私を含めて2人だけ。ビジターセンターには車で来ていたらしいご夫婦と遠足っぽい若い人たちの団体がいましたが、ここで足回りをラバーソールの沢靴に履き替えて歩き出し、ビジターセンターからさほど遠くないつつじ新道の入口から山に入った後は、午後に山行を終えてビジターセンターに戻るまで誰にも会うことはありませんでした。

ゴーラ沢出合でヘルメットとハーネスを身につけ、沢モードに変身。朝方は冷え込んでいましたが、この頃になるとぐっと気温が上がってきたので上衣は長袖Tシャツ1枚だけという出立ちです。ヤビキ沢はゴーラ沢の途中から分岐する沢なのでここからゴーラ沢を遡っていけば良さそうですが、それだと出合からも見えている堰堤を越えることが厄介になるので、さらにつつじ新道を50mほど登ったところから右に下って下流側の堰堤をかわすのがセオリーになっているようです。つつじ新道を離れるポイントに目印らしいものはありませんでしたが、明瞭な踏み跡がついていて迷うことはありませんでした。

降り立ったところはゴーラ沢の最後の堰堤の手前で、これを左から巻いて上流に出るとその名の通りゴロゴロの岩が沢筋を埋め尽くした状態になっていました。

やがて左にゴーラ沢、右にヤビキ沢と二分する二俣に着きました。ゴーラ沢の奥を見ると出合からさほど遠くないところに滝が見えていましたが、気の毒なことにゴーラ沢は遡行対象としては認識されていないようです。

一方のヤビキ沢では、先ほどの二俣からわずかの距離で最初のナメが出てきました。なかなかいい感じのナメですが、奥にゴーロが見えているのは若干興醒め。しかし今回の遡行で参照している『丹沢の谷200ルート』には左側ゴーロのナメと書かれているのに見る限りナメは沢幅いっぱいに広がっているので、これでもゴーロが洗い流されてきれいになっているようです。登ってみるとところどころヌメりがあって滑りやすい部分もありはするものの、傾斜は緩く凹凸にも富んでいるので、気持ち良く登ることができました。

しばしのゴーロ歩きの後に出てきた二つ目のナメは最初のナメよりずっと大きく、また途中で段差をもっていて変化があり、これまた楽しいものでした。

標高990mの三俣の左俣には10m滝が掛かっており、一見登れそうに思えるものの近づいてみるとあまりお近づきにはなりたくない感じ。右(左岸)のリッジからでも越えられそうでしたが、ここはトポの記述に従って左のボロいルンゼから巻き上がりました。

巻き終えてヤビキ沢左俣に回帰するとすぐに出てきたのがこの3条8m滝。右の水流から左上する感じで越えましたが、外傾しているホールドがヌメっているので神経を使います。

その先の壁状3m滝を左から問題なく越えると、標高1100mの二俣の手前でまだ豊富な水量があるのに唐突に伏流になり、そこから先は涸れ棚の連続になります。

先ほどのナメは茶色でしたが、ここから先は西丹沢に特徴的なトーナル岩の白さが目立つようになってきます。このトーナル岩は神奈川県の「県の石」で、以前は1000万年前に海底で作られたものと考えられていましたが、近年の年代測定により500~400万年前にできたことが判明したため、今では丹沢が本州に衝突してからできた岩体と解釈されているのだそうです。

それはさておき、水涸れ直後の1100m二俣の左沢入口にあるこの涸れ棚は簡単ではありませんでした。ホールドは豊富であるものの、試みにテストすると岩が動いたのでムーブが制約され、III級には収まらない悪さを感じながら慎重に乗り越えました。

とは言っても難しさを感じたのは最初の涸れ棚だけで、あとはいずれの涸れ棚も容易です。トポには細かく滝記号が書かれていますが、そのいずれも「III-」とされているので一つ一つ同定する必要はないでしょう。

ただし不用意に取り付くと丸みを帯びた岩の形状のために良いホールドが得られず冷や汗をかく可能性があるので、ルートファインディングは慎重に。わざわざ強点を攻めて勇気を誇示するよりも、スピーディーに弱点を見出す能力を試す沢だと思った方が健全です。

沢形は石棚山稜の稜線直下まで続いており、最後に植生保護柵の間を抜けて登山道に達すると、そこはテシロノ頭の少し下。ここから檜洞丸方向へ少し移動して安定してから、ヘルメットとハーネスを外しました。

当初の計画では檜洞丸をピストンしてつつじ新道を下ることにしていましたが、遡行だけで十分満足したのと近々のうちに檜洞丸を訪ねる計画があるのとでこれはパス。西丹沢のおおらかな眺めを堪能しながらつつじ新道分岐まで歩いたらただちに下降に入りました。

石棚山稜上やつつじ新道上部では、ブナの黄葉はまだまだですがその代わりに赤く色づいている木が目立ち、雲が流れて日ざしが変化する中、光線の具合が良くなるのを待ちながら写真を撮りつつのんびりと下りました。

ところが展望園地に着いたところで電波が入っているのを幸い、西丹沢ビジターセンターからのバスの時刻を確認してみたところ、次の便はそこから50分後で、これを逃すと1時間半近く無為に待たなければならないことが判明しました。『山と高原地図』のコースタイムは80分ですが、30分の短縮ならできるだろうと覚悟を決めて駆け下り、ビジターセンターに到着したのはバスの発車時刻の5分前。そして幸いなことに、ヒルの被害にも遭わずにすみました。日中は暑いほどだったものの、朝夕の冷え込みは都内に住んでいたら想像がつかないほどだったので、奴らはもう店じまいしたのに違いありません。

【悲報】「大松園」閉店!

帰りのバスの中でTシャツの下の汗をタオルで拭き、シューズも履き替えて下界モードに戻ったら、1時間後に新松田駅前の焼肉店「大松園」でありつけるはずの焼肉ばかりを心に思い描いていたのですが、なんたることか、いつの間にか「大松園」は閉店していました。西丹沢に行ったときはかなりの確率でこの店のお世話になっていたのに、これからは何を楽しみに西丹沢に足を運べばいいのでしょうか……。