生川小持沢

日程:2024/07/28

概要:秩父の生川小持沢をウォーターウォーキング。小持山まで詰めずに持山寺跡へエスケープする短縮バージョン。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:ノリコさん / エリー

山行寸描

▲ナメ滝。フリクションは意外に良かったが、後続には念のためロープを出した。(2024/07/28撮影)
▲突破しようとすれば核心部となる三段滝。ここはおとなしく右から巻いた。(2024/07/28撮影)

この週末は、先日大菩薩の沢でご一緒したノリコさんと沢登りは久しぶりのエリーとの三人で尾瀬方面へのんびり泊まり沢に行く予定だったのですが、どうやらかの地の天気は良くなさそう。このため近場のワンデイにプランを縮小することにし、2021年に遡行して好印象だった武甲山近くの生川大持沢の隣にある小持沢へ向かうことにしました。

2024/07/28

△08:50 一の鳥居 → △09:00-20 入渓点 → △11:20 標高810m三俣 → △11:50 標高900m二俣 → △12:25-30 持山寺跡 → △13:35-40 一の鳥居 → △14:55 横瀬駅

西武秩父駅で待ち合わせてお風呂セットをコインロッカーに預けてから、駅前で待っていたタクシーをつかまえて一の鳥居へGO。このあたりのルーチンは大持沢のときと同じです。

一の鳥居をいったん出て車道を少し上がったところが入渓点になっており、沢装備を身につけて橋の下から入渓です。すぐに堰堤が二つ現れ、我々は一つ目を右(左岸)、二つ目を左(右岸)から越えましたが、二つとも左から越えた方が手っ取り早かったかもしれません。

堰堤を越えるとのっけから岩がごろごろと積み重なって立体的な小滝登りになり、ところどころにある小さい釜も意外に深いものがあって楽しめます。実はいずれも逃げようと思えば容易に逃げられるのですが、ここはなるべく弱点ではなく強点を狙って遡行を続けたいところです。

大岩が沢を塞いでいるところは直登もできそうでしたが、左にうまい具合に穴が空いていてこれを潜ると岩の上に抜け出ることができました。

10mほどの赤いナメ滝は想像していたよりは傾斜が緩く、まずは私がフリーで登ってみました。今回はノリコさんとエリーがフェルトソール、私がラバーソールで、事前の情報によるとラバーではフリクションを失う場面もあるということだったのですが、少なくとも今回登った限りでは不安はほとんどありません。ただ、落ち口近くの1-2mほどが若干滑りやすい状態だったので念のため後続の二人には上からロープを垂らしましたが、二人とも危なげなく後続してくれました。

続いて、この沢では唯一(?)登攀的になるという三段滝が現れました(もしこの写真に写っている滝を二段目とカウントするのであれば、一段目にあたるパートはほとんど滝の体裁を整えていないので「二段滝」と呼んでもいいかもしれません)。できることなら登りたいと思い近づいてホールドを探ってみたものの、今回のパーティー構成(装備も含めて)では厳しそう。よって右から巻き上がることにしました。

最上段の落ち口から覗き込んでみるとなかなかの斜度で、これはきちんと確保し、ランナーもとりながらでなければ取り付けそうにありません。まあ、こうして宿題を残しておけば次にまたこの沢を登る名目が立つというものです。

三段の滝をスルーした代わりに、すぐ上の大きめなポットホールらしき釜を持つ小滝は正面突破。ここも存外深さがあり身長が低いエリーは腰上まで水につかりましたが、おかげで落ちたときの不安を消してくれてもいます。

その後も小さい滝がいくつか現れますが、あたりの苔の美しさには目を見張ります。また、先ほどの10mナメ滝をはじめ随所に深赤色の岩壁や煉瓦色の岩塊(エリー曰く「鮭の切り身」)が目立ちましたが、これは南アルプスで顕著に見られる赤色チャート(ラジオラリア)と同種のものなのでしょうか?そして、これら苔の緑と岩の赤に何か白いものが加われば「大三元」ということになるのですが……。

標高810m三俣は、右俣が涸れ沢になっているので見た目には二俣です。ここはすんなり真ん中の沢筋に入りました。

その後も水垢離の小滝やら赤色チャートの滝やらが続き、ぐんぐん高さを上げていきます。下界は猛暑のはずですが、沢の中は快適そのもの。それだけに沢を詰め切り稜線に出て日に炙られる気持ちはだんだん失せてきます。

標高900m二俣に着いたところで、この後の行程を協議。ここに着いたらさらに遡行を続けて小持山のピークを目指すか持山寺跡へエスケープするかをその場の雰囲気で判断しようと申し合わせてあったのでこれは予定の行動ですが、二人の顔には明らかに「もういいでしょう」という表情が浮かんでいます。一応「この先に『緑一色リューイーソー』と呼ばれる綺麗な苔の壁があるみたいだよ」と水を向けてみても「苔より泡でしょう。アルコホールでしょう」とにべもありません。ノリコさん、私の心の声を代弁してくれてありがとう!

しかし左俣を覗いてみるとすぐそこに面白げな小滝が見えていたので、せめてそこまでは行ってみることにしました。ところが近づいてみるとこの小滝は案外ホールドが細かかったので直登は避けて滝の上に出ると、その先には幅の狭い苔と岩の回廊が高みを目指して続いていました。これはこれで良さげな雰囲気でしたが、これも三段滝と同様に宿題です。

左俣の小滝の下から右俣へと横断しようとしたところ、そこは広場状になっていて石祠の跡らしきものがありました。これは予想していなかったので些か驚きましたが、もしかするとここはこの後に訪れる持山寺の奥の院なのかもしれません。

ともあれ標高900m二俣の少し上で沢を離脱して斜面を右上気味にトラバースしていくと、少し高いところにあるピンクテープが持山寺と先ほどの奥の院(仮)とを結ぶ道になっていることがわかり、部分的に斜面が崩れている箇所も難なく横断してあっけなく持山寺跡に到着しました。沢登りとしてはこれで終了で、あとは一般登山道を下るばかりです。

よく整備されて歩きやすい登山道をぐんぐん下って車道に出て、近くの小沢で沢靴を洗い、のんびり歩いて出発点の一の鳥居。ここで山行終了となればめでたしなのですが、車で来ていない我々はここからさらに横瀬駅まで歩かなければなりません。

一の鳥居から横瀬駅までは普通に歩いて1時間半。埼玉名物だというゲリラ豪雨に遭わずにすんだのは幸いでしたが、かんかん照りの下の車道歩きのつらさをこらえさせてくれたのは振り返り見る武甲山の立派さと、西武秩父駅内のフードコートでの「泡」への期待でした。

横瀬駅から一駅乗って西武秩父駅に戻り、コインロッカーに預けていたお風呂セットを回収してまずは「祭の湯」でさっぱり。そして待望のビールで乾杯し、秩父名物わらじカツ(カレー)で〆。

こんな具合にアフターも含めると充実した一日でしたが、皆が望んでいるのはやはり焚火を囲んでの泊まり沢です。下山の途中、ノリコさんとエリーとはテンカラ談義で盛り上がっていましたから、次は二人が釣り上げる魚を食料計画に組み込んでの飽食遡行を企画したいものです。