白老川350m右股
日程:2024/07/21
概要:道道86号の森野トンネル手前(白老市街側)の駐車場から白老川に下り、白老川を少し下って白老滝を上から眺めた後に315m二股から白老川右股を遡行。核心部を過ぎたところで林道に上がり白老岳橋から再入渓。350m二股から右に入り、白老岳とホロホロ峠を結ぶ尾根を乗り越えて三階滝川枝沢を下降。道道86号に出たところで脱渓する。
⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:---
同行:ノダ氏 / ヅカ氏
山行寸描
◎「白老川大星沢右股」からの続き。
◎本稿での地名の同定は主に『北海道沢登りガイド』(北海道新聞社 2015年)の記述を参照しています。このため、通常「俣」と表記するところも同書に従って「股」と表記しています。
2024/07/21
△07:45 駐車場 → △08:00 白老岳橋 → △08:15-20 白老滝 → △09:10 林道 → △09:20-25 白老岳橋 → △09:55 350m二股 → △11:55 稜線 → △12:05 三階滝川枝沢入渓 → △12:30 白越小橋
前日2本の短いコースを遡行した後に我々は徳舜瞥山麓キャンプ場にテントを張って一夜を過ごし、この日再び道道86号の森野トンネル手前の駐車場に戻ってきました。実はキャンプ場でノダ氏が一足先に就寝した後にヅカ氏と私との間で「白老滝の登攀に挑戦できないか」という検討がなされたのですが、他者の記録で白老滝を上から見た写真を見たところ、昨日下から見上げたときの印象以上に難しそう。それにもともとクワウンナイを想定していたために手持ちのギアが十分とは言いがたく、今回はいきなり初見で白老滝に取り付くのではなく上流側からの偵察にとどめようということになりました。
そんなわけで昨日も歩いた白老岳林道を下り、白老岳橋から今度は下流に向かいました。しばらくはナメっぽいところもあって歩きやすい沢でしたが、やがて柱状節理の壁を凹凸をつないで歩くようになり、その先で315m二股から右にぐっと曲がったところが白老滝でした。
このように白老滝は3段になっており、その左岸の踏み跡を辿って落ち口を覗き込むことができるのですが、やはり落ち口から上が厳しそうです。まず昨日下から見上げたときには1段目は左(右岸)側から登れそうだと見当をつけていたのですが、その落ち口から2段目の滝までの間にはどれだけの深さかわからないほど大きな釜があり、仮に左岸から登ろうとすると泳いでリッジに取り付くことになる上に、そのリッジは2段目の滝の落ち口より高い位置に達したところでかぶり気味の壁の中に消えています。ネイリングを想定すればそれもありかもしれませんが、それよりは1段目の落ち口で左岸に渡り、いま自分が滝を見下ろしているテラスを目指して傾斜のきつい(しかし灌木が生えていそうな)斜面を登る方が現実的に思えます。ただ、この滝は全体が柱状節理の中にありますから、左岸側の急斜面も実際には岩がちであることを想定しなければなりません。したがって、もしこの滝を登る機会が得られるとしたら、自分ならドライツーリングの可能性を考慮に入れて、春の宝剣岳の凍った草付でも有効だったペツルの軽量アックス「ガリー」を持参するだろうと思います。
……などと妄想を膨らませるのはこのへんにして白老滝を後にし、315m二股に戻りました。今日目指す350m右股コースは先ほどの白老岳橋から上流に進んだ先にあって、この315m二股から見れば白老川の左股にあたりますが、白老岳の山頂により近いところへ通じる川筋を白老川の本流だと考えればここからの右股の方が本流です。そしてこの右股に入ってすぐのところにはトポによれば「核心部」なるパートがあるそうなので、我々は315m二股からいったん右股に入って「核心部」を抜けた後、白老岳林道を使って白老岳橋へ戻る周回ルートをとることにしていたのでした。
かくして白老川右股に入るとすぐにゴルジュ状になりますが、水深はさほど深くありません。それでも柱状節理の出っ張りのおかげで特に左岸側に凹凸が顕著な滑りやすい壁を際どくへつるのは面白く、この区間ではノダ氏がその見事なトラバース能力を発揮しました。
二つに分かれたゴルジュを終えて平らになってから、GPSを頼りに林道の終点への上がり口を探していると赤テープあり。そこから簡単に林道に上がって歩きやすい道を10分ほど歩けば白老岳橋に帰り着くことができました。橋の下での小休止の後にここから再入渓しましたが、先ほど見た白老滝のすぐ上の二股から右を「白老川右股」と呼ぶのであれば、これから遡行するルートはトポに書かれている「白老川350m右股」ではなく、シンプルに「白老川左股」と呼べば足りるような気もします。
最初に出てくる釜は、昨日は右から微妙なバランスでへつりましたが、今日は試みに左(右岸)の斜上バンドをトラバースしてみました。こちらは出だしはしっかりしたフットホールドに恵まれて歩きやすいものでしたが、途中にやや脆く足元も定かではないブランクセクションがあり、歩き通してみた感じとしては必ずしも初心者向けとは言い難い感じ。経験の浅い者を連れてくるのなら、あっさり泳がせた方が良さそうだと思いました。
350m二股を直進すれば昨日遡行した大星沢ですが、今日は右に曲がって、ここから未体験ゾーンです。しばらくは平坦な地形の中を穏やかに川が流れていましたが、やがてその先にトポの写真で見ていた50mナメ滝が現れました。
なるほど、確かにこれは素晴らしい。ラバーソールのシューズを優しく受け止めてくれる緩い傾斜と、その上をひたひたと流れ落ちる透明な水。トポが50mの滑り台にはお口あんぐりだ
と書くのもあながち誇大広告とは言えません。昨日から思っていたことではありますが、ここに至って今回GoProを持参しなかったことを心の底から後悔しました。せめてと思いiPhoneを手に持って動画を撮ってはみたものの不本意な出来になってしまいましたが、これは視点をもっと高い位置に維持してナメ滝を常に見通す構図にした方が良かったようです。
ナメ滝の先で沢筋が大きく左に曲がり、いくつかの釜を越えた先には何とも形容が難しいすてきな区間がありました。行手の青空、両岸の植生、美しいナメと穏やかな水流を分割する岩が全体として日本庭園のような風情を醸し出していて、つい足を止めて見入ってしまいます。
しかしこの沢のいいところはここまでで、ここから先はただの苦行……というのは言い過ぎにしても、単なる消化試合になってしまいます。ヅカ氏は「初心者を連れてくるなら50mナメ滝までの往復でいいのではないか」と言っていましたが、もう少し足を伸ばしてもらってこの日本庭園の終点までは連れて来るにしても、やはりそこから往路を下降した方がいいという意見に賛成です。また、この沢をここまでの往復と割り切るなら、むしろ昨日遡行した大星沢とセットにする方がすっきりしているかもしれません。
我々はと言えば初志貫徹、徐々に狭まる沢筋をどこまでも詰めていって白老岳からホロホロ峠へ向かう尾根筋を目指します。途中にはいくつかの二股がありますが、本流はだいたい見ればわかり、さらに500m二股にはピンクテープもあって、そこからは尾根を見上げることもできました。後は笹薮を漕いだりちょっとした滝を登ったりしながら効率よく高度を稼いでいきましたが、我々にとっての一番の懸念事項はマダニの存在でした。
それでもとうとう稜線直下の草原に出て、この先の短い笹薮漕ぎで尾根上に出たらただちに反対側に下りました。
こちら側の藪漕ぎもさしたることはなく、わずかの下降で三階滝川の枝沢に降り着いて、そこから歩きやすい沢の中を淡々と下っていくと道道86号にかかる白越小橋に達することができました。そこからわずかにホロホロ峠に向かって歩いて右の右側に開けたところを見つけリュックサックを下ろすと、メンバー中で一番若いヅカ氏が車を駐めた場所までひとっ走りしてくれました。
こうして今回の北海道沢登りツアーは終了しました。白老川上流域の沢はそれぞれに魅力的で、充実した2日間を過ごすことができたのですが、そうは言っても北海道ならではの地形の雄大さを味わうことができなかったのはやはり残念。それに今年クワウンナイから地獄谷への継続を完遂できていれば、来年は日高の沢から山(たとえばカムエクやペテガリ)へ登る山旅も実現できるかもしれないと期待していたのですが、これも先送りになりそうです。
そんなこんなはあるものの、この2日間を含む北海道への山旅をフルアテンドしてくださったノダ氏にはただただ感謝あるのみです。ノダさん、可能であれば来年もまたよろしくお願いします。夏の沢登りもいいですが、その前に冬のアイスクライミングの方でぜひ。
◎一連の沢登りを含む北海道旅行全体の記録は〔こちら〕。