南秋川矢沢軍刀利沢

日程:2014/06/14

概要:南郷バス停から矢沢林道を歩いて軍刀利沢に入渓。遡行終了後、三国峠から浅間峠経由上川乗に下山。

山頂:---

同行:よっこさん / トモミさん

山行寸描

▲軍刀利沢の遡行。映像は癒し系だが、倒木があったり滑りやすい土壁の巻きがあって意外に大変だった。(2014/06/14撮影)

◎本稿での地名の同定は主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)の記述を参照しています。

昨年6月に初めての沢登りで逆川に連れて行かれて沢登りに苦手意識を持ってしまったトモミさんに、トラウマ解消のためにもう少し癒し度の高い沢登りを提案した私。最初は水根沢谷を考えていましたが、水量次第で難易度が大きく変わりそうなので、より安定していて2006年に遡行したことがある軍刀利沢をチョイスすることにしました。同行は水量の多い沢を好むらしいよっこさんです。

2014/06/14

△09:30 南郷 → △10:15-30 軍刀利沢出合 → △11:25 CS滝 → △12:00 2段15m滝 → △13:15-30 10m滝の上 → △14:55-15:15 登山道 → △16:25-30 浅間峠 → △17:00 上川乗

数馬行きのバスで南郷バス停に降り、矢沢林道を歩くことしばし。途中の大規模な伐採跡に驚いたり道の上をうねうねと這う蛇にもっと驚いたりしながら進むと、先行パーティーが身支度中の入渓ポイントに到着しました。懐かしい赤テープもそのままの姿であり、地形的にも間違えようがありません。

我々と同じタイミングで沢に入ることになったのは、男子1人+女子3人のうらやましい組合せの若いパーティーとベテランらしい女性2人パーティー。これらの中で我々が最初に沢床に下ることになりました。

矢沢を渡って軍刀利沢に入りすぐに小さなゴルジュ状に入りましたが、この辺りから早くも倒木が目立ちます。ゴルジュ出口の2m幅広滝は左寄りのコーナーを倒木をかき分けながら越えましたが、ここでトモミさんが大きな蛙を倒木でつぶしてしまうというスプラッターな事故発生。南無……。

釜を手前に持つ4mナメ滝と2条4m滝の連瀑は、下段は問題なく左から登り、上段は右側へのちょっとしたへつりを経て凹角から上へ。次に出てきた5m逆くの字滝は以前は簡単に左寄りから登れたのですが、この日の水量ではちょっと厳しそう。そこでいったん戻って泥壁を登って巻きに入ろうとしましたが、これも微妙に悪かったために沢床に戻り、滝の前まで行って釜の手前の右側を微妙にへつり、凹角を登って抜けました。そしてその少し先の狭くなった場所のすぐ先に、この沢の核心部となるCS滝が現れます。

ここはよっこさんが大奮闘しましたが、水勢に足を弾かれて上へ抜けられません。ここだけ越えるのであればチョックストーンの左側のラインを抜ける手もありますが、このCS滝の先にある8mナメ滝も厳しいものになることが予想されたので、2006年と同じく左岸を高巻くことにしました。

ロープを出して私が先行して左岸の斜面を登り、少し上がったところから8m滝の様子を見てみるとやはりかなり厳しそう。このとき我々に追いついていたベテラン女性2人組はロープを出すことなく反対の右岸を高巻いていて、あんなに追い上げられていて沢に戻れるのかな?と心配しながら見ていたら見事なラインどりでナメ滝の上へ降り立っていました。一方こちらは高巻きのラインが水平に移る手前でピッチを切り、後続の2人を迎えてさらにトラバース。ここで2人組の後を追う形になりました。

3m滝を左に登ってすぐに出てくるのが15m大滝です。以前ここに来たときに用いていたガイドブックには「10m」と書かれていて「どこが10mなんだ?」と毒づいたものですが、さすがに皆が同じように思っていたようで、最新のガイドブックではめでたく「15m」に昇格していました。しかし残念ながらここは登れず、右から太いフィックスロープ頼みに上がり落ち口へ向かってトラバースすることになります。

息を継ぐ暇もなく現れた6m滝は以前は問題なく登れましたが、これまた水量の関係で左からパス。その上のチョックウッド滝も、どうみても登れそうにありません。

仕方なくこれまた左の泥壁からロープを使って慎重に巻きました。

立った4m滝は巻こうと思えば右から安全に巻けますが、巻きばかり続いて欲求不満気味のよっこさんが水流の左側から見事に抜けて見せました。トモミさんは右から巻き、最初に取り付いて「あかんがな」と諦めていた私はリベンジするかと見せかけてやはり巻き。

残置ピンのある6m滝は、以前はダイレクトに登りましたが今回は残置ロープ頼りで右から巻き。なにしろ今日のテーマは「癒し」ですから。その先の細長い淵は左からへつり。沢登りの楽しさは、滝登りよりへつりにあるのかも。

……などと言いつつ、4m滝は右側を楽しく登れて「ああ、良かった」と思うのだから人間なんていい加減なものです。最後の10m滝は右からあっさり巻いて、これで滝場は終わり。平坦なところで昼食休憩をとり、詰めに備えました。

前回もそうでしたが滝場の終わりから稜線までは案外長く、おまけに今回は怒濤の倒木またぎが続きます。あまりにはかどらないので開き直って途中でハーケン打ちの練習までしてしまいましたが、そんなことをしても稜線が近づくわけではありません。

ひたすら我慢の谷筋登りを続け、滑りやすい土の斜面に悲鳴も上げながらどうにか飛び出した登山道はトポに記載された終了点よりずいぶん左で、正藤山と茅ノ丸の間でした。

ここから下界へは石楯尾神社から上野原へ出るのが一番短時間なのですが、沢帰りには風呂に入りたい我々は、秋川側へ下ることに決めていました。尾根道を西へ進み、三国峠のベンチで休憩中だったベテラン女性2人組(石楯尾神社へ下るとのこと)と言葉を交わし、軍刀利神社元社で遡行の無事終了の御礼を言って、アップダウンのきつさにぼやきながら1時間ほど頑張って浅間峠に到着。昨年2月に野宿したときに世話になった東屋は健在でした。ここからバス停のある上川乗までは緩やかな下り道で、これがトレイルランなら全力疾走するところです。さすがにそこまではいきませんでしたが、そこそこのスピードで下ったのが功を奏して停留所に着いたのはバス到着の10分前でした。

十里木で途中下車してとてもモダンな施設に目を見張る「瀬音の湯」でさっぱりした後、武蔵五日市から拝島に出て串焼き屋さんで打上げとしました。2人とも最後の歩きには辟易としていたようですが、軍刀利沢自体は楽しめたのではないでしょうか?トモミさんも今回は問題なく登れていて、沢登りへの苦手意識は解消できたようです。

無事に終わった今回の沢登りでしたが、ちょっとしたアクシデントがあって、自分自身反省させられました。

アクシデントその1
CS滝から右へ巻き上がった中間支点で、トモミさんに「セルフビレイをとって」と指示したのですが、マルチピッチの経験がないトモミさんはその意味がわからずメインロープをハーネスから外してしまいました。これに気付いた私はびっくり仰天!すぐにロープを結び直してもらったのですが、これは明らかに私が悪い。トモミさんの経験度はよくわかっているのですから、私がトモミさんの確保にしっかり気を配るべきでした。トモミさん、つい大きな声を出してしまってごめんね。
アクシデントその2
上記の中間支点から私がさらにロープを伸ばしてトラバースし、沢筋に戻って遡行を続けましたが、連続する滝場を終えて休憩したところでよっこさんに「ところで(中間支点で使った)スリングは?」と言ったところ、よっこさんの顔が真っ青に。たぶんフリークライミングの感覚がなじんでいたよっこさんは、残置支点だと思い込んでスリングとカラビナをそのまま置いてきたのでした。よっこさんはすっかり落ち込んでしまいましたが、これも私が悪い。スタートするときに「スリングとカラビナは回収してください」と一言言えば済む話ですから。そんなわけで、軍刀利沢のCS滝の右壁を上がったところにある太い木の幹にブルーとオレンジの幅広スリングとカラビナ2枚が残置されていますので、次にそこを巻く方は回収してそのままお使いください。
アクシデントその3
そんなこんなのアクシデントを乗り越えて無事に下山し、拝島の串焼き屋さんに入った我々。安くておいしい串焼きでしたが、それを目当てにどうやら地元の青年たちの同窓会が開かれていたらしく、特に女子ばかり10数人のパーティー(?)が発する騒音は凄まじいものがありました。沢の中で滝音のために声が通らないというのは何度も経験していますが、串焼き屋の中でテーブルをはさんでいる私とよっこさんやトモミさんが意思疎通に支障をきたすというのは、予想を超える事態でした。この店にしようと言ったのは、やはり私。でもこれは、私が悪いのか?