荒川大沢川(敗退)

日程:2023/05/27

概要:飯豊連峰と朝日連峰を分ける荒川の支流のうち、羽越国境近くで荒川に北から合流する大沢川を遡行したが、残雪に行く手を阻まれて敗退。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:ヅカ氏

山行寸描

▲荒川大沢川(敗退)。山形県の残雪を甘く見ていた(申し訳ございません……)。(2023/05/27撮影)

雪山の季節は先日の龍王岳東尾根で終わり、いよいよ沢登りシーズンイン。久しぶりにヅカ氏とタイミングを合わせて向かうことにした先は、飯豊連峰と朝日連峰とを分けて山形県から新潟県へ流れる荒川の小さな支流である大沢川です。ネット上の記録でこの沢が短い流程の中に楽しく登れる滝を連続させているという情報を得てのセレクトですが、当然気になるのは雪の残り具合。大丈夫かな?という疑問は湧いたものの、ヅカ氏が以前5月に羽越国境の沢を遡行できた経験があること、大沢川の出合周辺の赤芝峡あたりの標高の低さ、そして何より写真で見る大沢川の素晴らしさを材料として突っ込むことになりました。

前日夕方に車で移動し、山形県内某所にて雨中の前夜泊。先日とあることから頂戴した「大信州」を持参したところ左党のヅカ氏も大喜びで、うまいうまいと言いながら二人であっという間に飲み干してしまいました。

2023/05/27

△08:05 赤芝峡駐車場 → △09:25-10:45 2段滝手前 → △12:10 赤芝峡駐車場

夜が明けると雨も上がっており、まだいくぶん雲は低いものの遡行には支障なさそうな天気です。泊まった某所からまずは遡行終了点となる沖庭神社の下の林道に向い、適当な場所にミニ自転車を1台デポ。帰りはこれでヅカ氏が遡行開始点の近くに駐めた車まで下り、とって返して残っている私をピックアップする作戦です。

赤芝峡の近くにある駐車スペースはJR米坂線の鉄橋のすぐ横ですが、この路線は昨年8月の豪雨災害のために運行が止まっています。駐車した場所の近く建つ殉難碑が1940年の雪崩災害を記念したものであることを考え合わせてもこのあたりは厳しい自然環境の中にあることが理解されますが、さすがに今日はここに車を置いても大丈夫だろうとタカをくくり、沢装備を身につけて意気揚々と出発しました。入渓点は駐車スペースから車道に出てすぐの大沢橋の下流側右岸。車道と米坂線の二つの橋をくぐって上流に向います。

すぐに腰近くまでの淵を渡り取水施設を越えていきますが、水は想像以上に冷たく、これでは泳ぎは無理だなとすぐに気付きます。

大きなスリットを持つ大沢堰堤は真ん中を簡単に通り抜けることができ、そこから10分もたたずに両岸が迫る地形になったのですが……。

いきなり沢筋を埋める残雪にびっくり、というより「やはり」というのが正直な感想です。先行記録を見るとこのあたりにチョックストーン滝があるはずですが、それはどうやらこの雪の下になっている模様。

幸い左岸にトラロープが下がっているのでこれのお世話になって巻き上がり、しばらく薮を漕いで残雪が落ち着いた場所に降り立ちましたが、これは先ほどの残雪ではなく二つ目の残雪です。

しかし、そこから先はしばらく楽しい滝越えが続きました。この滝は右から近づいて水流のすぐ脇を簡単に登ることができ、鬱陶しかった藪漕ぎの鬱憤を晴らすことができました。

易しく楽しい2条滝もあれば……。

左岸の緩やかな壁を歩いて登れる見栄えのする滝も。

しかし、あれは何だ?ここで一気に悪い予感が広がります。この時点で入渓してから1時間あまりしかたっておらず、標高はまだ250mを越えてもいないというのに……。

ここまでは残雪が枝沢から雪崩れ込んで本流を埋めていましたが、これは本流そのものに堆積した雪が残したスノーブリッジです。そしてその向こうには多くのパーティーがロープを出している2段滝が見えていて登攀意欲をそそりますが、その上流側にも大量の雪が見えています。これはダメだ。

スノーブリッジには顕著な割れ目が入っていますが、奥行きはさしてないので駆け抜けることはできなくもありません。しかし前方の2段滝を登ったとしてもその先で再び残雪に行く手を阻まれることは必定で、そうなった場合には退却自体がややこしいことになってしまいそう。適当な懸垂支点が得られるかどうかという問題もありますが、それよりも先ほどから大雨のように雪解け水を天井から降らせているスノーブリッジの下を2度もくぐる気にはなれません。やむなくここで遡行打切りを決定し、大休止をとることにして焚火を熾してから行動食を口に入れて寛ぎました。

1時間以上もまったりしてから下降開始。すっかり晴れて絶好の沢日和の中を撤退するのは何とも悲しいものがあります。

2番目(上流側)の残雪は左岸の斜面との境目を歩き下ることができましたが、最初(下流側)の残雪はとてもその上に乗ることなどできそうにない危うさ。トラロープで巻かずに色気を出して残雪の上に乗っていたら、大惨事になっていたかもしれません。

よって左岸の斜面をよじ登って尾根に上がり、下流側の垂直に近い急斜面を懸垂下降しました。ヅカ氏の30mロープ1本では微妙に足りない高距でしたが、そんなこともあろうかと持参した5mm30mスリングが役に立ちました。

巨大スリット堰堤に帰り着き、その間を抜けてから下流側に隣接している堰堤施設の左岸側のラダーを登って斜面に出ると、そこには薄い跡ながら踏まれたルートが残されています。

法令に照らして若干微妙(?)なルートどりで駐車スペースに戻り、最後にデポしてあった自転車を回収したら今回の山行は終了です。お疲れさまでした。

まあ残念ながらと言うか案の定と言うか、山形県の雪の力を侮った報いを受けてしまいました。遡行先の選定にあたり大沢川を推していたヅカ氏はこの結果に恐縮していましたが、GOサインはヅカ氏と私の合意の上で出しているので連帯責任です。それに予定していた行程の2割程度にとどまったにせよ、大沢川の遡行感度の良さの一端に触れることができたのは収穫でした。ヅカさん、この沢は季節を変えて必ず再び足を運びましょう。

田植えの最中の田んぼの中を走り抜け、道の駅をハシゴして玉こん(こんにゃく)とどんどん焼き(粉もん)を食し、赤湯温泉で湯につかり(たった300円!)、近くの「龍上海」で赤湯からみそラーメン。本当は大量に売られている山菜も買い求めたかったのですが、量が多くて食べきれないだろうと断念したのは後から思えば惜しいことをしました。ともあれ、このように山形県に些少ながら落とせるお金を落としてから、ロングドライブの帰路に就きました。

◎再訪問して遡行を実現した山行の記録は〔こちら〕。