三叉峰ルンゼ・峰ノ松目沢(敗退)

日程:2022/12/30

概要:美濃戸から赤岳鉱泉を経由して三叉峰ルンゼに入ったものの、石尊稜側から大滝の様子を遠望して登攀を断念し、峰ノ松目沢に転進。こちらも日当たりの良さのために滝の状態が好ましくなく、F2の上の小滝を越えたところで登攀を中止し同ルートを下降した。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:KS氏

山行寸描

▲三叉峰ルンゼ全景。中央に見えている大滝の氷結具合は悪くはなさそうだが、自分の力量に見合っているかというと話は別。(2022/12/30撮影)
▲峰ノ松目沢F2。一応ちゃんとした滝の形をしているが、日当たりが良すぎて氷はシャーベット状だったりぼこぼこに穴が開いていたりする。(2022/12/30撮影)

10日ほど前にジョウゴ沢をご一緒したKS氏とUD氏と共に、今度は三叉峰ルンゼへ前夜発日帰りで向かうことになりました。三叉峰ルンゼはまだ登ったことがないので楽しみにしていたところ、出発当日になってUD氏から「コロナ濃厚接触者になってしまい参加できない」との連絡。これは山行中止か?と危ぶんだものの、リーダーKS氏の判断で2名で決行ということになりました。

移動中に三叉峰ルンゼの最新情報を各種SNSで探してみてもひとつもヒットせず、今シーズンはまだ誰も登って(登れて)いないのかもしれないと次にセカンドプランの峰ノ松目沢を見てみると、FacebookのACMLグループでの投稿に12月23日の情報として「ほとんどの滝が半分ほど埋まってました。まともに登れたのはF2とF8位でしょうか」とあって、そのF8も細いつららの集合体。これは前途多難だなと思いながら道の駅に着いて1泊しました。

2022/12/30

△07:20 美濃戸 → △08:15-40 赤岳鉱泉 → △10:05-10 石尊稜末端の尾根上 → △10:50-11:00 赤岳鉱泉 → △11:35-50 峰ノ松目沢F1の下 → △12:30-40 峰ノ松目沢F3の上 → △13:10-25 峰ノ松目沢F1の下 → △14:30 美濃戸

道の駅を5時半に出発。空は満天の星で、寒気は比較的緩めです。

さすが年末とあって赤岳山荘の駐車場は既に満杯で、係の人の誘導で我々の車は路肩に駐めることになりましたが、身繕いをしている間にも次々に車が上がってきます。赤岳鉱泉に向かう途中では昨年末にペンションでご一緒した九州組の方々と行き合い、前日の天気が良くなかったことや前夜の赤岳鉱泉が満員だったこと、今日は大勢のクライマーがジョウゴ沢に入っていることなどを知らされました。

赤岳鉱泉に到着すると、快晴の空の下に横岳の西壁が屏風のように立っています。これから向かう三叉峰ルンゼはその右端に見えている中山尾根の少し左側(石尊稜の左隣の谷筋)になるのですが、さすがに赤岳鉱泉の壁に設置されている「赤岳鉱泉周辺案内図」には記載されていません。

身繕いを終えて行者小屋方面に向かい、橋を渡ったところから左へ。この道筋は石尊稜や日ノ岳稜に通じるルートでもあり、前日の新雪に覆われてはいるものの明瞭な踏み跡が谷の奥へと続いています。

途中の二俣(標高2400m)で一瞬「?」とは思ったものの、そのまま踏み跡を辿ったところ石尊稜の取付の下に出てしまいましたがこれはやはり失敗で、先ほどの二俣が石尊稜の末端だったようです。ここから二俣まで戻るのももったいないので末端尾根を乗り越すことにし、腰までのラッセルを頑張って尾根の上に乗り上がり三叉峰ルンゼを覗き込みました。

三叉峰ルンゼの核心部となる大滝の結氷具合はなかなか微妙。氷柱は下までしっかり繋がっていて『チャレンジ!アルパインクライミング』に掲載されている写真よりはずっと良い状態ですが、それでも足元が細く部分的にかぶり気味に見えます。近くで見上げてみたい気持ちとセカンドプランに転進したい気持ちとが交錯しましたが、先日のジョウゴ沢ナイアガラの滝で敗退している我々は若干弱気になっており、おまけにあの滝までトレースされておらず引き続きのラッセルに時間を要しそうなこともあって、結局三叉峰ルンゼは諦めることにしました。

かくしてせっかくラッセルしてきた斜面をとぼとぼと戻ることになりましたが、その前に右手の石尊稜とその向こうの中山尾根を懐かしく見やりました。両者の間にある日ノ岳稜を登ったのは2020年のことでしたが、中山尾根を最後に登ったのは2014年、石尊稜に至っては2003年2月なのでほぼ20年前になります。

相変わらずこれでもかというくらいの快晴の空の下を赤岳鉱泉に戻り、短く休憩をとって行動食を口にしました。シングルロープを持っていればアイスキャンディーで遊んで帰るという選択肢もあったのですが、あいにく我々が持っているのはダブルロープ2本。仕方なく(?)峰ノ松目沢を目指したものの、どうにも気勢が上がりません。

峰ノ松目沢に入ると、極度に日当たりが良くて暑いくらい。たまらず上衣を1枚減らしてから今度こそアイスクライミング装備を身につけて、まずは傾斜の緩いF1を各自フリーで抜けました。

続くF2は立派に凍っているように見えましたが、KS氏のリードで登ってみるとこちらも暖かさのためにところどころシャーベット状で、穴が開いて下の岩が見えているところもあり、後続した私はピックを研いだばかりのノミックを岩に打ち付けたくなくて妙に緊張しました。そしてF2の上の小滝をこれまたフリーで抜けると、そこには日の光が燦々と降り注ぐ明るい谷筋が続いていました。

我々の前にいた3人パーティーの1人がそこでのんびり休憩中で、言葉を交わしてみると彼女たちもここで登攀を終了することにしたものの、諦めきれない残り2人が先を偵察しに行っているのだそう。その気持ち、よくわかります。とはいえ事前の「雪に埋もれている」という情報や先ほどのF2のシャーベットで意気消沈している上にこの時点で12時半を回っており、それに峰ノ松目沢は2017年に登っていることも考慮して、KS氏と協議の結果我々もここから下ることになりました。

懸垂下降三連発でリュックサックをデポしていたF1下へ戻る途中、南の方には癪に触るくらい見事な赤岳と阿弥陀岳の姿を見上げることになりました。先ほど言葉を交わした女性からの情報では前日の八ヶ岳は荒れ模様でジョウゴ沢に入っていた人たちも追い返されるほどだったということでしたから、この日のこの気象条件を活かせなかったのは残念。KS氏も「もったいないことをした」と悔しそうでしたが、今回はいろいろな巡り合わせがうまくいかなかった感じです。

2022年最後の山行はこんな具合にいささか締まらないかたちで終わってしまいましたが、それでも青い空の下で白い雪にどっぷりつかり、八ヶ岳のアルペン的な雰囲気の中でアックスをほんのわずかではあっても振ることができたので、実はさほど落胆しているわけでもありません。その上で欲を言えば、この日遭遇したあれやこれやを来年のクライミングに生かすことで、今回の山行に投じた時間とお金の元を取りたいものです。