広河原沢左俣

日程:2021/12/31-2022/01/01

概要:舟山十字路から広河原沢左俣に入り、下の大滝を越えたところから同ルート下降。いったん下山してペンション泊の後、翌日に右俣のクリスマスルンゼを目指したが、深雪のために3ルンゼとの分岐までで行動を終了し舟山十字路に戻った。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:ルーリー / KS氏

山行寸描

▲広河原沢左俣の下の大滝。リードはKS氏、私はセカンドでスクリュー回収係。(2021/12/31撮影)

年末年始の山行は、沢仲間ルーリーと彼女が所属する山岳会のKS氏との3人で八ヶ岳の広河原沢。大晦日に左俣を登り、元日にはクリスマスルンゼという計画です。広河原沢左俣は2014年2018年に登っており、一方クリスマスルンゼも2018年はじめ4回登っているので軽い気持ちで臨んだのですが……。

2021/12/31

△06:50 舟山十字路 → △07:55 二俣 → △11:00-12:20 下の大滝 → △14:30 二俣 → △15:15 舟山十字路

前夜、八王子駅近くで初対面のKS氏とルーリーと合流し、KS氏の車で小淵沢の道の駅まで。翌朝に舟山十字路に入りました。駐車していた車は数台で、この時期としては少ない方かもしれません。

身繕いをしてすぐに出発。途中で分岐する阿弥陀岳南稜方面にも人が入っている様子です。

懐かしい「四区」の赤ペイントを眺めたらやがて二俣(広河原)で、ここは通常ならテント村ができるところですが、我々が着いたときには登山者が1人でごそごそしているだけでテントは1張りもありませんでした。そこから左俣に入ってわずかでF1で、そこでは先行する単独行の男性がアイゼンなどを装着中。言葉を交わしてF1を覗いてみたらまったく凍っておらず、ここは通れそうにありません。

先に行った単独行氏と同様に我々も右岸からF1を巻き、フィックスロープで沢筋に下って彼の後を追いました。

最初に出てくる小滝はよく凍っており、階段状なのでイージー。傾斜はそこそこある上に右下に釜が口を開けて待っているのでルーリーはロープで確保することにし、私とKS氏はフリーです。

その後も小滝がところどころに出てきますが、いずれも簡単に登って先を急ぎます。

途中の難所はちょっと厄介なところ。確か私が以前ここを通過したときは微妙なトラバースで通過していたと思いますが、単独行氏は左下から雪をかき分けながらルンゼを登り、我々はKS氏のリードで直上としました。

それにしても凄い雪。この日までに積もった雪を単独行氏は力強く突破していきますが、その上に今日の雪が降り重なり、広河原沢では経験したことがない程のラッセルになってきました。

途中でロープを出しているために単独行氏になかなか追いつけなかった我々でしたが、下の大滝に通じる急斜面の手前でやっと交代することができ、私が先頭に立って雪をかき分けます。両岸が狭まった谷筋の斜面だけに、ところにより胸近くまでの雪をかき落とし踏み固めてのしっかりしたラッセルを続けて、ようやく前方に下の大滝が見えてきました。見ている間にも右岸の崖の上からひっきりなしにチリ雪崩が落ちてきて、ラッセルの労苦を増やしてくれています。

ここまで頑張ってくれた単独行氏はここから中央稜に出て下山するそうで、下の大滝に取り付くのは我々だけ。あらかじめ「正午を過ぎたら下降を開始しよう」と申し合わせていたこともあり、リュックサックは滝の下に置いて下の大滝を登り、その後は同ルート下降とすることにしました。オーダーはKS氏がリード、私がセカンド、ルーリーがラストです。

アックステンションも交えながら慎重に落ち口の向こうへ消えていったKS氏からのOKのコールを待って私も滝を登り始めましたが、痩せていると見えた割には氷はしっかりとアックスやアイゼンを受け止めてくれて、比較的順調に高さを稼ぐことができました。ただ傾斜はそこそこのものがある上に、登り始める前に単独行氏が測ってくれたところでは気温はマイナス22度。落ち口に出て左岸の懸垂支点にセルフビレイをとったときには両手の薬指と小指の感覚がなくなっており、ただちに口の中で解凍しました。一方、ラストのルーリーは口では「怖い怖い」と言いながらも実際にはスムーズに上まで登ってきて、そのスピードに驚かされたほど。大したものです。ただし、ランヤードでのセルフビレイは安全環付きカラビナを使用した方がいいと思うぞ。

下の大滝の落ち口の上流にももちろんトレースはなく、今後この左俣を上の大滝まで登ろうとする人はラッセルの時間を見込む必要があるでしょう。我々は未練のかけらもなく懸垂下降し、デポしていた荷物を回収して下山開始です。

ラッセルしているときには雪との格闘に夢中で気付いていませんでしたが、下の大滝の手前はそこそこな急斜面でした。よく頑張ったな、自分……と感慨に浸る暇もなく、KS氏とルーリーはとっとと降りていってしまいます。その後は数度の短い懸垂下降を重ねて下り続けましたが、その頃から降雪が収まってきました。

F1の巻き道上流側の段差をフィックスロープのゴボウ登りでこなして、後は歩きやすい道を舟山十字路まで。中央稜でラッセルに励んでいるであろう単独行氏の無事の下山を祈りながら今宵の宿に向かいました。

初日が左俣で2日目がクリスマスルンゼなら「今宵の宿」は広河原になるのではないか?と誰しも思うことでしょうが、諸般の理由からこの日はゴージャスにペンション泊です。

おいしい料理と心のこもったもてなし、そして大分から来たクライマーたちとの交流で楽しく夜がふけ、食堂での宴会が終わったのは21時前でした。一度この味を覚えると、氷点下20度のテント泊なんかできなくなってしまうなぁ。

2022/01/01

△06:40 舟山十字路 → △07:45 二俣 → △08:50-09:10 右俣出合 → △09:40-50 二俣 → △10:30 舟山十字路

昨日の雪の状態からクリスマスルンゼ方向もラッセルが予想されましたが、行くだけ行ってみようとペンションを暗い内に出発し、またしても舟山十字路から歩き出しました。

振り返ると東の空がオレンジ色。今年も一年、よき年になりますように。

しかし二俣から右俣方向へ続いていたトレースは、すぐに薄くなってきます。それでも途切れ途切れに見えているトレースを探しては間を膝ラッセルで繋げる作業を黙々とこなして右俣を目指しましたが……。

最終的に踏み跡は本谷の奥(3ルンゼ等の方向)へと続いており、クリスマスルンゼのある右俣側はトレースなし。時間的には行って行けないこともなさそうですが、ここまでのアルバイトで不思議に満足していた我々は、リュックサックを置いて休憩をとってから帰路に就くことにしました。

こんな具合に「雪山」の満喫に終わった感のある山行でしたが、それでも楽しいものでした。山行に加えていただいたKS氏とルーリーに深く感謝。引き続きよろしくお願いします。

……そういえばあの単独行氏にも左俣でのラッセルを感謝しなければならないけれど、彼は無事に下山できたのだろうか?