ジョウゴ沢 / 裏同心ルンゼ

日程:2022/12/19-20

概要:初日は美濃戸から赤岳鉱泉を経由してジョウゴ沢でアイスクライミングの後、赤岳鉱泉泊。翌日、裏同心ルンゼを詰めて大同心稜を下り美濃戸口へ下山。

山頂:---

同行:KS氏(12/19のみ) / NK氏(同) / UD氏

山行寸描

▲ジョウゴ沢ナイアガラの滝を登る私。強烈な寒気に負けてTOならず。(2022/12/19撮影)
▲裏同心ルンゼF5。前日とは打って変わって穏やかな気象条件の下でのクライミングを楽しめた。(2022/12/20撮影)

12月2日に水浸しの裏同心ルンゼでご一緒したKS氏・UD氏と、さらにお二人の山岳会の先輩NK氏との4人で八ヶ岳アイスクライミング。初日はこの4人でジョウゴ沢に入り、KS氏とNK氏はこの日のうちに下山して、2日目はUD氏と私が組んでの裏同心ルンゼです。

2022/12/19

△08:55 美濃戸 → △10:40-11:00 赤岳鉱泉 → △13:45-15:10 ジョウゴ沢ナイアガラの滝 → △16:40 赤岳鉱泉

参加者の都合を勘案し、早朝に八王子で合流して中央自動車道を一路八ヶ岳へ。幸いスムーズにアプローチでき、美濃戸口からはチェーンを履いて美濃戸の赤岳山荘の駐車場に入りました。

それにしても天気が悪い。美濃戸を出てしばらくは上空に青空も覗いていたのですが、赤岳鉱泉に着いてみると作りかけのアイスキャンディーの向こうにあるはずの横岳の稜線がまったく見えません。一抹の不安を抱えつつ、身繕いをしてからジョウゴ沢に向かいました。

F1に着いてみると、岩が露出しているものの高さも出ていてちょっとびっくり。アイスクライミングが初めてというNK氏のためにKS氏が練習がてらF1から登ることとし、ここを巻き登ったUD氏と私が組んで先行することになりました。続くF2も雪に半ば覆われることが多いのですが、この日は露出度満点。UD氏がリード(写真に写っているのは後続してきたKS氏)してここを越えました。

これまた埋もれることが多いF3をなんということもなく通過してしばらく新雪が吹き溜まった河原歩きとなりましたが、この気象条件の中、ジョウゴ沢に入っているのは我々だけ。地形の関係でとりわけ暴風が吹きつのるゴルジュを抜けて見上げると正面に乙女の滝が険悪な様相で聳えていましたが、あれは自分には無理だな……と一瞥をくれただけで、左にナイアガラの滝を目指しました。

ナイアガラの滝にはこれまで何度か登っていますが、これだけの高さと斜度が出ている状態を見るのは初めてです。かくして私のリードでナイアガラの滝に取り付いたのですが、何しろ吹き付けてくる寒風がきつい!せめてモノポイントのアイゼンにしていたらまだスピーディーに登れたのかもしれませんが、今回は切れ味いまいちのデュアルのアイゼンにしていたためについつい腕に頼ってのクライミングとなったこともあって、あっという間に指の感覚がなくなってしまいました。あと2m弱でバーティカルから抜け出せるというところで次の1手が出せず、無念のギブアップ。その間に追いついていたKS氏にバトンタッチしましたが、KS氏も私が到達したところから1手伸ばしたもののメガネが凍りついてやはりTOできません。時間が押していることもありここで終了とし、再び私が登ってスクリューを回収(一つ下のスクリューにフィフィを掛けてぶら下がって上のスクリューを回収することの繰返し)して下山にかかりました。

相変わらずの寒風の中の下降も決して楽ではなかったのですが、どうにか赤岳鉱泉に降り着いて、ここで解散。凍傷にかかる者がなかっただけでも幸運でした。

美濃戸へ下るKS氏とNK氏を見送って、私は赤岳鉱泉に投宿、UD氏は(お金を節約するために)テント泊。

実は、茅野市へのふるさと納税の返礼品としてもらった赤岳鉱泉宿泊券が今回の武器です。おかげでただで食べられるステーキほど美味なものはありません。

2022/12/20

△07:15 赤岳鉱泉 → △10:15 裏同心ルンゼF5の上 → △11:55-12:25 赤岳鉱泉 → △14:15 美濃戸口

一夜明けて、7時に赤岳鉱泉の前でUD氏と合流。さすがに昨夜は寒かったらしく、つらい一夜だったようです。

しかし、どうやらこの日はいい天気。風もなく穏やかな気候の下、一番手でF1に取り付きました。ここは志願してのUD氏のリードで、そのやる気に対して「何なら全部リードしてもらってもいいですよ」と誘いをかけましたが、さすがにこれは通りませんでした。

前回薄い氷をこわごわ登ったF2もばっちり凍っています。実はここを登り始めるまでに、F1でアックスが穴にハマってしまったためその上にスクリューを入れてランヤードでぶら下がって掘り出す作業を行ったり、唐突に自然が呼んだために沢筋を横にそれてしゃがみこんだりといったアクシデントを私が重ねていたのですが(スミマセン)、平日ということもあってこの間に抜かしていったのはソロの一人とガイドパーティー二人組だけでした。

前回はまるでシャンパンツリーのようだったF3もしっかり階段状。F2の最上段を私がリードした後に、このF3はUD氏があえて立っている場所を選んで登っていきました。

F3を越えると両側から岩壁が迫った先にF5が見えています。その手前には一応F4とされる斜度の緩いナメ滝がありますが、ここは私がロープを引いて先行し、プロテクションをとることもなくF5の下に達しました。F5は左端の長いものの最上部がつらら状のラインと右端の水氷っぽいラインの選択となり、私は簡便と思われる後者を選択。あらかじめ予想した通り持参したアルミスクリューの入りにくさに辟易しながら、何とか上に抜けてUD氏を迎えました。

F5の上に抜けたところからは、見上げれば大同心の真っ白な姿が聳え、振り返れば信州の山と谷との眺め。真冬ならではの美しい展望にしばし見とれます。

最後の氷のルンゼをUD氏がリードして大同心稜まで達し、ここで登攀終了。下降の途中からは見事に雪をまとった赤岳と阿弥陀岳の姿をある種の感動をもって眺め、赤岳鉱泉の去り際には昨日はガスの中だった横岳の稜線の全貌を見上げて、あらためて八ヶ岳の冬を実感しながら美濃戸口を目指しました。

八ヶ岳の冬と言えば、下山後の「yatsugatake J&N」でのおしゃれなランチもその一部かもしれません。UD氏が入浴している間にこちらはハム・サラミをアテとしてワインで軽く一杯。さらにおいしいカレーをいただいてお腹を満足させてからタクシーを呼びました(平日はバスが運行していないので……)。