塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

大滝沢雨棚(敗退)

日程:2021/10/25

概要:丹沢の名瀑のひとつ、大滝沢の雨棚を登るも、2ピッチ目でハングした一枚岩を突破できず敗退。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:セキネくん

山行寸描

▲雨棚50m。2ピッチ目のハングの上をこなすことができず、無念の敗退。(2021/10/25撮影)

丹沢にあって登攀対象として知られる大きな滝としては、西沢本棚、西沢下棚、東沢本棚などがありますが、大滝沢の雨棚も人工登攀必須ながらよく知られた存在です。ここには6月にセキネくんと挑戦する計画があったのですが、諸般の事情から延期になってようやくこの日トライすることになりました。

2021/10/25

△09:10 大滝キャンプ場 → △09:55-10:10 入渓点 → △10:55-13:15 雨棚 → △14:10 入渓点 → △14:35 大滝キャンプ場

小田急線の新松田駅に8時待合せでセキネくんと合流。彼とロープを結ぶのは、1月のアイス以来実に9カ月ぶりです。

車を駐めたのは大滝キャンプ場(1,100円也)。登山道方向に少し進んだ先のゲートの手前にも数台分の駐車スペースがありますが、こちらは関係車両でなければ駐められないようです。

大滝沢沿いの登山道を歩いて、道が左岸→右岸→左岸と渡り返した後にマスキ嵐沢を分ける二俣のところから入渓しました。

1カ所出てくる堰堤は、最初は左から巻き上がろうとしましたが、実は右(左岸)にフィックスロープがあって容易かつ安全に越えられます。この堰堤を越えてしばらく進むと、緩やかなナメ滝の向こうに大きな滝が右岸へ落ちてくるのが見えてきました。

これが2段50mの地獄棚。逆層の険悪な雰囲気ですが、見上げると中間あたりに下降で使用したと思われるスリングとカラビナが残置されているのが見えました。

地獄棚の前を過ぎると、両岸が狭まり、小さな釜を持った滝が連なるようになります。特に前衛の4m滝は一見すると釜に入るしかないか?と思えたのですが、よく見るとホールドがつながっており濡れずにへつることが可能でした。

いよいよ雨棚の前に着きました。確かに大きい!しかし傾斜はさほどきつくなく、想像していたほどの威圧感はありません。これはいけそうだ、とこのときは思ったのですが……。

ロープを結んで、まずテラスまでの最初のピッチはセキネくんのリード。ランナーがとれないこともあって多くのパーティーがフリーで登っているパートですが、その登り口がよくわかりません。左か?右か?はたまた真ん中か?と珍しく迷うセキネくんでしたが、ちょっと強引ながら右寄りの苔まみれの岩の上に足跡を付けつつ登り、左上してテラスに達しました。私も後続してテラスに達し、そこに打たれている残置のハーケンにスリングを掛けてセルフビレイをとってから見上げると、予習しておいた通りに頭上の凹角の先のハングした岩が見えていますが、そこまでの途中にランナーをとれる残置ピンが見当たりません。まさかあそこまでランナウト?と疑心暗鬼に陥りつつ、恐る恐る離陸しました。

この高さ(約10m)に達したところでようやく残置ピンを見つけ、クイックドローを掛けてクリップ。振り返って写真を撮るゆとりもできました。この後、残置ピンにアブミを掛けてワンポイントを稼いで右のカンテに乗り上がったのですが、ここから左上にリングボルトの「跡」があることを後でセキネくんが発見しました。

右のカンテを数m登り、ポイントになるハングした岩の上に並んで打たれた残置ピンに遠く手を伸ばしてアブミを掛け、えいやと乗り移ることに成功しましたが、ここで手詰まりになってしまいました。

残置ピンは写真のようにごついもので、古くはあるもののハーケンに比べれば格段の安心感がありますが、これらにクイックドローを掛けロープを2本ともクリップして安全を確保してからアブミに乗って岩の上に身体をせり上げてみると、ハングの上はのっぺりした一枚岩になっていて次のピンはその上、はるか彼方に見える3m先。しからばこの残置ピンに乗るのだろうか?と思いはしたものの、そこまで身体を引き上げるために使えるホールドは浅い窪みが一つだけで、これを頼りにアブミの最上段に立ち込む勇気は湧いてきません。もしかするとここから左、または左上だろうか?と違うラインの可能性も考えましたが、ハング岩の横は土壁ですし、左上は草に覆われて残置ピンの気配が感じられません。やはり直上して3m先のアレにクリップするしかなさそうですが、そこまでの間にハーケンを打ち足そうにも使えそうなリスもありません。

かなり長い時間をかけて逡巡した後、いったんロワーダウンしてセキネくんと選手交代。しかしセキネくんも、このハング岩のところで私と同じようにあれこれ試した末に「すみません、降ります」。

しつこく私ももう一度上がりましたが、二度目ということに加えトップロープの安心感もあってハング岩の下までスムーズにフリーで登り着けたものの、アブミにぶら下がってみればその先の状況はなんら変わっていませんでした。仕方なく、ロープを掛け替えてクイックドローを回収し、再びロワーダウン。残念ながら敗退です。

ロープを引き抜きながら、うなだれる私……。

テラスから滝の下に懸垂下降で戻るためにスリング1本を残置することになりましたが、前衛の4m滝は左岸に支点が作られてあってありがたくそれを使わせていただき、後はロープを使うことなく往路を引き返しました。

堰堤を左からフィックスロープ頼みに下ればほぼ安全地帯で、小雨がぱらつく中を起点の大滝キャンプ場までとぼとぼと歩くだけでした。

こうして、雨棚登攀は敗退に終わりました。今年の夏に雨棚を登っている記録もあるので、我々が突破できなかったハングの一枚岩の上を解決する何らかの手段があるはずですが、我々にはパズルが解けませんでした。技術的に歯が立たないというのとは少々異なる敗北感があり、心の半分を雨棚に置いてきてしまったような気分です。

信玄館の立派な風呂で心身を温めた後にセキネくんに新松田駅まで送ってもらった私は、駅前の大松園でやけ酒ならぬ焼肉で独り反省会。いずれ捲土重来を期したいと思うものの、そのためには一層の研究が必要であるようです。