塾長の山行記録

只見川霧来沢鞍掛沢

日程:2021/10/09

概要:会津側の御神楽岳登山口から霧来沢沿いの登山道を使ってアプローチし、鞍掛沢出合にベースを設営してから鞍掛沢を遡行。稜線に抜けて本名御神楽のピークを踏み、ベースに帰還。

分類:東北 / 沢登り

山頂:本名御神楽1,266m

同行:ヅカ氏

ハイライトシーン

▲この沢最大の30m大滝。上の画像をクリックすると、鞍掛沢の遡行の概要が見られます。(2021/10/09撮影)

この週末はヅカ氏とチャレンジングな課題に挑む計画にしていたのですが、9月後半からの一連の山行を通じて、この夏の山行自粛による技術・体力両面のトレーニング不足を痛感したため、計画はキャンセル。それならばとヅカ氏が提案してくれた複数の行き先候補の中から、天候が最も安定していそうだった会津の日帰り沢2本をチョイスすることになりました。

2021/10/09

△07:40 御神楽岳登山口 △08:25-45 鞍掛沢出合 △09:50 左俣出合 △10:55-11:35 30m大滝 △13:35 稜線 △13:45-50 本名御神楽 △14:05 御神楽岳管理舎 △15:35 鞍掛沢出合

夕方に私の自宅近くまでヅカ氏に来ていただいて、東北自動車道を一路北へ。福島県に入ってから下道に降りて会津を目指し「道の駅 奥会津かねやま」で仮眠の後、御神楽岳登山口を目指しました。

越後山脈の名峰・御神楽岳のピークは県境上ではなく新潟県の中にありますが、歴史的には会津側との宗教的な関わりが深い様子。現在の登山口は只見川から分かれた霧来沢沿いの三条林道を奥深く詰めた終点にあり、標高は450m。ここで一番乗りの我々が支度をしているときに間をおかずにやってきた車から降りた女性2人・男性一人の3人組はぶなの会のメンバーで、この日の行き先は我々と同じく鞍掛沢、明日は我々が目指すV字スラブの2本上流側の三本スラブとのことでした。

出だしから沢靴を履いて先に出発した我々は霧来沢左岸のよく整備された登山道を辿り、見栄えのする八乙女滝を右から越えて平坦な草地を抜けた先から川に入りました。その目的は八丁洗板と呼ばれる茶色のナメ床を歩くことにあり、確かに一見の価値ありのナメの広がりの上を面白く歩くことができたのですが、この沢の岩は尋常ではなくヌメって滑りやすく、今回採用したラバーソールの沢靴ではすたすた歩くことができません。慎重に歩いて到着した鞍掛沢出合に宿泊装備をデポし、登攀具の類を身につけてから、いよいよ遡行開始です。

鞍掛沢も出合からしばらくは岩が滑りやすく、ナメ滝などでは少々緊張しながら細かいホールドを拾って登ることになります。釜を持つ斜滝は左から、2段滝は右→左と越えて行ったものの、なんでもなさそうな緩傾斜の滝が滑りすぎて越えられず右の草付きに逃げるといったことも起こりました。しかし、やがて沢筋が狭まり滝の形が立体的になってくるとフリクションが効きだし、滝登りが楽しくなってきます。

二俣に達したところ、沢筋は右俣の方へ直行しており、左俣は横から滝を掛けるかたちで合流しています。ヅカ氏はこの滝を登りたそうでしたが、黒光りする逆層の岩を嫌った私の主張を受け入れてくれて右の急な草付き斜面から巻き上がりました。

左俣出合の滝の落ち口近くへ最短ラインで登り着くと、そこからは小滝が連続し始めます。どの滝も高さはさほどなく技術的にも問題のないものですが、ひとつだけ高さのある滝は左(右岸)の脆い凹部から流心方向へ乗り上がるところが脆く、若干神経を使います。

いよいよこの沢のハイライトとなる30m大滝が登場。直登は困難で、右の岩壁のさらに右にあるルンゼを登ることになりますが、ここは慎重を期して持参した50mロープを結び、私がリードしました。

取り付いてみるとルンゼの中は傾斜が比較的緩く難しさを感じませんが、ルンゼ内の斜度が変わるあたりにあった残置ピンにこのピッチ唯一のランナーをとってから左の岩壁に出るところが若干バランシー。さらに岩壁を登り草付きに入って草の根元をつかんでのランナウトの末に行き着いたところは大滝の落ち口の真上くらいで、そこの岩壁には残置ピンが2本残されていました。

後続のヅカ氏を迎え、ここで上から確保した状態でヅカ氏に落ち口の上を目指して下ってもらうと、3mほどの落差を灌木をつかみながら無理なく滑り降りられることがわかりひと安心。降り立ったヅカ氏はそのまま上流に移動してから私を確保してくれて、私も落ち口に降り立って下を見ると、ちょうどぶなの会の3人が大滝の下に到着したところでした。

予習の段階では大滝登攀はあまり心配していなかったのですが、続く立ったヌメり滝はコンディション次第で厄介になるかも知れない……と予測していたところ、案の定、先行したヅカ氏が上から三分の一くらいのところで行き詰まってしまいます。いろいろムーヴを試した末にひとまずピトンを打って安全を確保したヅカ氏の横へ私も登ってみると、確かにホールドが細かく難しい。しかも手元で最も頼りになりそうなホールドは、いま打たれたばかりのピトンで使えない状態。しからばとヅカ氏の知恵出しでショルダーで突破することにし、窮屈な体勢からどうにか私がヅカ氏の肩に乗ってこのワンポイントを抜けました。

ただちに接続する滝(先ほどの滝と合わせて2段滝と認識することもできそう)は右壁との接点近くのホールドを拾い、フリクションも信じてえいやと登るとこれでおおむね難所は終了ですが、滝自体はこの後も次々に現れます。そのいちいちについては〔こちら〕に紹介することとして説明は省きますが、もうお腹いっぱいだと思った頃にやっと滝から解放され、沢形の中を草をかき分けながらの登りになりました。ショートカットしようと思えば途中の分岐で左に迎えばよいのですが、我々は本名御神楽のピークを踏みたかったので直登コースを辿ります。幸い稜線近くまで続く沢形の中をどんどん詰めてゆくと、ぽんと登山道に飛び出しました。

ガスの中、登山道を10分間歩いて本名御神楽のピークに到着。展望はまったくありませんが、それでも山頂に立つというのは気分の良いものです。

鞍掛沢出合への下降の途中で御神楽岳管理舎(避難小屋)に立ち寄ってみたところ、立派な小屋ながら屋根が壊れてブルーシートに覆われている状態で、入り口に貼られた案内には「宿泊はお勧めできません」と書かれていました。

さらに少し下るとガスの下に抜けられて、右後ろには明日登る前ヶ岳南壁のスラブ群が姿を現しました。こうして見ると斜度があって威圧的ですが、まぁあれならなんとかなるでしょう。

無事に鞍掛沢出合に帰還し、藪の中の平坦地にテントを立てたら焚火&お酒タイム。今日の奮闘を振り返りながらまったりとした時間を過ごしました。

→「前ヶ岳南壁V字第二スラブ」へ続く。