塾長の山行記録

滝子山

日程:2021/04/24

概要:JR笹子駅を起点に寂惝尾根(南稜)を登り、滝子山に登頂。下山はズミ沢ルート。

分類:関東周辺

山頂:滝子山1,610m

同行:トモミさん

ハイライトシーン

▲麓から見上げた滝子山。寂惝尾根は右から中央へ緩やかにせり上がっているように見える尾根。(2021/04/24撮影)
▲寂惝尾根の岩稜帯。久しぶりの岩登りを楽しむ。(2021/04/24撮影)

3月の手術後のリハビリは丹沢を二本(鍋割峠越え / 地蔵平〜水ノ木)歩きましたが、まだ術創が完治しておらずクライミングジムに復帰できない中でも、もう少し岩っぽいルートを登りたいと思って選んだのが前から目をつけていた滝子山の寂惝じゃくしょう尾根。いくつかある滝子山への登路のうちでも岩稜の要素が強い準バリエーションルートですが、その名の通り(?)一人で登るのは寂しいので、例によってトモミさんに付き合ってもらいました。

2021/04/24

△08:05 笹子駅 △08:45 寂惝苑入口 △11:25-55 滝子山 △12:05 鎮西ヶ池 △13:15 モチガ滝 △13:35 三丈の滝 △14:00 道証地蔵 △14:20 寂惝苑入口 △14:45 酒遊館

滝子山は標高1,610mと意外に高い!……のですが、実はJR笹子駅の標高が既に600mなので山頂までの標高差は1,000m強。丹沢の大倉尾根の標高差がほぼ1,200mですから、それよりは楽なはずです。

天気に恵まれたJR笹子駅でトモミさんと合流し、おもむろに車道を東へ。やがて麓の集落の中に入り、稲村神社を目印にルートを辿って山懐へと入っていきます。

大鹿川沿いの車道をしばらく登って途中で出てくるのがこの看板で、寂惝尾根は危険なので身の程をわきまえよと覚悟を迫ります。もちろんこの警告はスルーして、ここからよく踏まれた森の中の道に踏み込んでいきました。

すると見事な八重桜の木の向こうに何やら由緒ありげな廃屋(?)が出てきました。これが尾根の名前の由来となっている寂惝苑で、入口の左右にはアフリカ風の木彫りの面、階段にはシーサー。ランプの絵が彫られた板には「山小屋をつくろう会 / 1982」、その下には「TOMORROWLAND共和国」となんともカオス。現役だった頃はすてきな別荘だっただろうと思いますが、今となってはまったくコンセプトがわかりません。

寂惝苑の横を通って登り続けると、送電鉄塔の下を通って大鹿林道に達しました。我々の前には五人パーティー、さらに単独行の登山者も前後にちらほら。

この林道の山側の壁に斜めに上がる道がついており、出だしはロープも設置された急坂でしたが、すぐに明るく歩きやすい尾根道に変わります。まもなく5月に入ろうという時期ですが、木々はまだ新緑の葉をつけ始めたばかりといった風情で、陽光がそのまま尾根上に降り注いでいる感じです。

ピンクのツツジを愛でたり、背後に徐々に姿を現してくる富士山の白さに歓声を上げながら登り続けるうちに、赤地に白字の鳥獣保護区の看板が出てきました。このあたりから岩尾根っぽくなってきます。

赤ペンキのマーク(控えめにところどころ)や鎖(一カ所だけ)が出てきていよいよという感じ。岩質ははっきりとはわかりませんが、概ねしっかりしておりフリクションも良好です。久しぶりに触る乾いた岩の感触が嬉しく、前を行く私はついスピードアップしてしまってトモミさんからペースダウンを求められました。

岩がちの区間は標高1,280mから標高差約200mの間に断続的に続き、途中「ここは確かに初心者には難しいかも」と思うポイントもありましたが、全体的にはさしたる危険箇所も迷いやすいところもなく、トモミさんと先頭を交代しながらぐいぐいと高度を上げました。

途中からはところどころで、南アルプスの展望が開けだしました。写真ではわかりにくいですが、ここから眺めると北岳・間ノ岳と少し離れて悪沢岳・赤石岳・聖岳が姿を見せています。

ちょっとしたギャップのある岩を慎重に越してひと登りすれば岩場は終わりで、そこから100mも登らないうちに浜立山との分岐の標識があるポイントに登り着きました。これで寂惝尾根は事実上終了です。

この標識の近くはよい展望台になっており、背後には富士山が裾野を優美に広げている姿を眺められました。

ここから滝子山山頂(最高点)までの間には二つピークを越さなければなりません。アップダウンはそれぞれ小さいのですが、ちょっとしたアルバイトは必要です。

しかし、その途中にも西が開けたところがあり、南アルプス・八ヶ岳・奥秩父と見渡すことができました。昨年11月にトモミさんたちに付き合ってもらった甲州高尾山もよく見えていますが、あちらは今いるところより標高が500mほど低いので、はっきりと見下ろす感じになっていました。やはり山というのは、高ければ高いほど気分がいいものです。

最後の登り返しをこなして滝子山山頂に到着。細長い頂稜の上はそこそこの賑わいでした。

北の方、左の近いピークが大谷ヶ丸。その奥は右へ順に破魔射場丸、黒岳、大峠を挟んで雁ヶ腹摺山。あのあたりもいずれ季節を選んで歩いてみたい。

11時を過ぎて気温も上がっていたので遠くは霞んでしまうだろうと思っていましたが、山頂からでも富士山の姿は立派でした。やはり山というのは、高ければ高いほど気高く見えるものです。

昼食休憩を終えたら笹子駅に向けて下山開始。山頂から少し下ったところにはこんな祠がありました。

祠の近くには井戸の遺構らしき遺構と湧水がたまった小さい池(?)。鎮西ヶ池というその名前は、鎮西八郎と呼ばれた源為朝がこの山で自害したという伝説にちなむもののようです。なかなか趣のある場所ではありましたが、水が流れておらず淀んでいたのが少々残念で、煮沸しなければとても飲めそうにはありません。

鎮西ヶ池からの下り道はとても穏やかで、ふかふかの感触が足に優しく気持ちの良いものでした。この道なら何時間でも歩いていられるな、と思いながら下ってゆくうちに道は小さい沢に絡むようになり、川底の白ザレの砂の中には砂金のように金色にきらきら光るものがたくさん散りばめられています。これと同じものを、近くの大谷ヶ丸から南西に伸びる尾根の反対側にある日川曲り沢でも見掛けたことを思い出しました。

しばらく下り続けたところで道は難路と迂回路に分かれます。難路は沢沿いにダイレクトに下ってゆく道で、以前トモミさんはそこを登りに使ったことがあるそうですが、確かにあまりよろしくない道であるとのこと。よって無難に迂回路を使うことにしたのですが、こちらもしばらく水平に進んだ後にジグザグの急降下となり、その途中にはザレて滑りやすいところや落ち葉が道を隠しているところがあって簡単ではありません。ことにザレの下りが超苦手な私は、あまりのへっぴり腰をトモミさんに笑われてしまいました。

難路と迂回路が合流するところまで下れば道は安定してきます。ここでちょっと難路の方に入ってモチガ滝を見物したのですが、道からかなり離れた下の方にあるために迫力はいま一つでした。

植林の中の道をどんどん下って、三丈の滝を見たら左岸に渡ります。

あとはしっかりした道を辿って30分もかからずに車道に出ると、そこに道証みちあかし地蔵が待ってくれていました。


笹子駅に戻る途中にある笹一酒造の「酒遊館」がこの日の山行のゴールです。まずはおしゃれなSasaichi Krand Cafeで、他の客が注文したふわとろ酒粕かき氷の殺人的なまでの大きさに瞠目しながらこちらは甘酒アイスパフェに舌鼓。ついで直売所に移って有料試飲をした上で「笹一 純米大吟醸甲州夢山水」をお買い上げ。しかしトモミさんが「大吟醸粕てら」を買い求めていたのにつられて自分も同じものを買い足しました(帰宅してから食したら超美味でした)。

ヘルメットもロープも使わない一般ルートとはいえ、久しぶりに味わった乾いた岩の感触は楽しく、また岩登りの動作をしてみても術創に響くことはなかったので、リハビリとしては実に有意義でした。滝子山には過去に二度も登ったことがあるにもかかわらずつきあってくれたトモミさんには本当に感謝です。この恩返しは、いずれ岩登りか沢登りで。

とは言うものの、明日(4月25日)から東京都には緊急事態宣言が発令されるので、都内在住の私はまたしても当分の間、登山を控えることになります。医療機関の負荷をこれ以上上げないために各自が自分のできることをしようという命題に賛同する以上、移動手段に公共交通機関を使いバリエーションルートを主体とする自分のスタイルでは、山行そのものを控える必要があるからです。まぁ正直に言えば、ある特定の日からは登山を控えなければならなくてそれまでは登ってもかまわないというのは自分でも理にかなっていないと思うのですが、ともすれば易きに流される性格(お恥ずかしい)の自分が自らに制約を課すためには、いつからいつまでという目安はほしいところ。無事に緊急事態宣言が解除された暁には、東京近郊の軽い沢登りから活動を再開するつもりでいます。

それまで、なんとかして脚力を維持しないと……。