城山南壁西南カンテ

日程:2019/10/26

概要:易しいマルチピッチを登ろうということで伊豆・城山の南壁西南カンテへ。前日の大雨のせいで染み出しがひどく、奮闘的なクライミングに。

山頂:---

同行:ヨーコさん / レナさん

山行寸描

▲西南カンテ1ピッチ目と2ピッチ目。染み出しがひどく、特に1ピッチ目は心臓に悪いクライミングになった。(2019/10/26撮影)
▲西南カンテ3ピッチ目。かつては途中から直上したが、今回はそのまま二間バンド方向へトラバース。(2019/10/26撮影)

この日は前々からアイスクライミング仲間のヨーコさんと二子山中央稜を登ろうという話にしており、そこに私のジム仲間のレナさんも加わって3人でのクライミングを予定していたのですが、前日に台風の影響で大雨が降ったために石灰岩の二子山はNG。それなら三ツ峠でマルチの練習でもしようか、と計画を変更したところ、今度は都岳連やら何やらの団体様が三ツ峠に大挙押し寄せてくるらしいという情報が入り、これもアウト。結局、ヨーコさんの提案で伊豆の城山に行くことになりました。2人とも城山のマルチピッチは未経験とのことなので、最も易しい(はずの)西南カンテを目指したのですが……。

2019/10/26

△09:50 城山登山口 → △10:05 南壁基部 → △10:20-45 西南カンテ取付 → △13:20-30 西南カンテ3ピッチ目終了点 → △15:00-40 南壁基部 → △16:00 城山登山口

登山口近くの駐車スペースには車が数台。見上げれば秋らしい青空の下に懐かしい城山がそびえています。

登山口には城山の形成についての解説板が設置されていました。この辺りの山は100万年前に活動していた海底火山の名残りで、フィリピン海プレートが本州に衝突・隆起したもの。中でも城山は、火山の直下で冷え固まったマグマが侵食により露出した火山の根(火山岩頸)なのだそうです。

登山口からしばらく歩いて、ハイキングルートとロッククライミングルートの分岐を示す標識を右に入ると、目の前に黒光りする南壁が広がっています。案の定、染み出しがひどくコンディションは最悪ですが、それでも数人のクライマーが準備中でした。その中の1人から「塾長さんじゃないですか」と声を掛けられ、顔を見たら谷川岳などでお目にかかっているYZ氏でした。世間は狭い。

南壁の裾を左上に歩いて若干の藪漕ぎをした先に、西南カンテの取付がありました。西南カンテには2007年にも登っていますが、この日はしっとり濡れた状態で剣呑な雰囲気です。ここでオーダーを確認し、状態は悪いもののグレードは低い1-2ピッチ目を私がリードし、上部で乾いていることが期待される3ピッチ目はレナさん、私も未体験の4ピッチ目はヨーコさんがロープを引っ張ることになりました。

1ピッチ目:5.7から5.8くらいですが、痺れました。触ってみると岩のフリクションは明らかに弱く、手も足も信用できません。途中2カ所ほどムーブを起こしては元に戻るポイントがあってビレイしてくれているヨーコさんをハラハラさせましたが、どうにかノーテンで登りきることができて安堵のため息をつきました(チキンハートですみません……)。後続したレナさんもヨーコさんもこのピッチのリードは嫌だと言っていて、この時点で早くも完登の見通しに暗雲が立ち込め始めました。

2ピッチ目:出だしのちょっとしたハングから疎らな樹木に囲まれた岩のカンテを登り、いったん平坦な歩きになってから右寄りのスラブを登ってどん詰まりの岩壁まで。ここも出だしが濡れていましたが、そこを越えると岩が乾いていて特に問題はありませんでした。

3ピッチ目:レナさんに「どうします?」と聞いてみると、少々の逡巡の後に「行きます」。ここはかつては膨らんだ岩の横断の後にカンテ状を直上したものですが、慎重に、しかし確実な動きでトラバースしていったレナさんは直上のラインに嫌なものを感じたらしく、そのままトラバースを続けて二間バンド手前の懸垂支点の少し先の灌木でピッチを切りました。

二間バンド大ハングを見上げる位置に後続してみると、先に着いていたヨーコさんとレナさんとの間で、4ピッチ目の凹角も濡れていそうだしここから下りましょうという話合いが行われていました。ちょっと残念ですが、確かに妥当な判断です。そして濡れた岩に辟易したレナさんは「沢登りなんて絶対やらない!」とここで高らかに宣言していました。

50mロープを2本結んでの懸垂下降3回で南壁の左上バンドの上に降り立ち、そこでショートルートを登ってくるクライマーを待ってから地面に降り立ちました。

ロープを畳んで南壁の麓を移動すると「とんとん拍子」を登っている小柄な女性クライマーの姿に見覚えあり。もしや……と思ってビレイヤーを見るとやはりそれは現場監督氏で、登っている方は彼とともに近年意欲的な登攀を繰り広げているヒロイさんでした。久しぶりに再会した現場監督氏に声を掛け、降りてきたヒロイさんとも初対面の挨拶を交わしましたが、ヒロイさんも私の顔は認識していたようで、はきはきした口調と笑顔で名乗ってくださいました。本当に世間は狭い。

せっかくなので彼らが掛けているクイックドローをお借りしてレナさんが「とんとん拍子」をハングの下まで登ったところで、この日のクライミングは終了です。現場監督さん・ヒロイさん、ありがとうございました。またどこかでお目にかかりましょう!

登山口に戻ったのは16時。コンディションの悪さのせいで十分に登ることはできなかったものの、それでも楽しかったので、次は岩が乾いているときに西南カンテや他のルートに再トライしようと意見が一致しました。

帰路、東の空には大きな虹がかかっていましたが、やがて西の空がピンク色に染まり、熱海峠近辺を通る頃には地平線が黄金色に輝いていました。