尾瀬ヶ原〜尾瀬沼

日程:2019/10/19-20

概要:鳩待峠から尾瀬ヶ原に下り、尾瀬ヶ原を縦断して東電小屋泊。翌日、尾瀬沼に上がり三平峠を越えて大清水へ下山。

山頂:---

同行:ユキ

山行寸描

▲尾瀬ヶ原の景色の数々。人の少なさに驚く。(2019/10/19撮影)
▲尾瀬沼周辺の景色。朝方までの雨がきれいに上がってくれた。(2019/10/20撮影)
▲三平峠から大清水へ下る途中で見掛けた紅黄葉の眺め。例年より2週間遅れているとのこと。(2019/10/20撮影)

2019/10/19

△11:25 鳩待峠 → △12:25-35 山の鼻 → △14:15 竜宮十字路 → △14:40 ヨッピ吊橋 → △14:55 東電小屋

この週末は、見習い山ガールのユキのトレーニングとして尾瀬へ。直前まで雨の予報で決行が危ぶまれたのですが、最終的には「土曜日=雨 / 日曜日=晴」という極端な予報となり、短時間の歩きですむ初日が雨ならそれも練習の内と覚悟を決めて土曜日の早朝に出発しました。

沼田から戸倉までバス、戸倉から鳩待峠までは乗合タクシー。自宅を出るときには土砂降りだったのに、鳩待峠に着いてみると雨はすっかり上がって、レインウェアもいらない状態です。鳩待峠の休憩所の食堂で昼食をとってから、山の鼻へと向かう下り道に入りました。

乗合タクシーの運転手さんの話によれば、今年の紅葉は例年に比べて2週間遅れとのこと。その言葉通り、よく歩かれた登山道の途中には紅葉も目立ちます。やがて山の鼻に下り着いたときには、青空が広がり始めていました。

ユキは尾瀬ヶ原を歩くのは初めてですが、私はこれが4回目。その最初は1989年の残雪期ですから今から30年前のことです。その後、2006年2007年の夏に沢登りの後行程として尾瀬沼から尾瀬ヶ原を通して歩いていますが、今回のように草紅葉の時期に尾瀬ヶ原を歩くのは私も初めてです。一面の湿原が黄色く色づき、池塘に浮かぶヒツジ草の葉もきれいな黄色。

上田代から牛首分岐を経て中田代に入り、大量の水が木道の南側で穴に吸い込まれて北側に湧き出る竜宮現象を興味深く眺めてから、竜宮十字路を左に折れてヨッピ吊橋に向かいます。悲観的な天気予報のおかげか、この間の木道を歩く登山者の数は驚くほど少なく、どこまでも静かな湿原歩きを自分たちの歩調で楽しむことができました。

ヨッピ吊橋を渡ってほんの少し歩いたところにあるのが、この日泊まる東電小屋です。我々が小屋に着いて受付を済ませた直後から雨が降り始め、その強さは徐々に勢いを増していきました。そして通された部屋の窓の外には(一部は内側にも)カメムシがたくさん貼り付いていましたが、これは急速に寒さが募る前兆です。

尾瀬の山小屋は環境負荷をコントロールするために完全予約制にしていて、東電小屋も今シーズン最後の宿泊を受け付けるこの週末の予約はほぼ満員となり、食事も入替制になる予定だったそうですが、やはりキャンセルが相次いだせいで、夕食時の食堂は4分の1ほどの入りとなっていました。おかげで食事の充実ぶりは驚くばかりで、おかずだけでお腹いっぱいです。食後には2階の談話室で希望者を対象に支配人さんによる自然解説が催されましたが、ユーモアに富んだ解説の中からいろいろと新しい知見が得られて、とても有意義でした。特に、鹿の食害がニッコウキスゲやワタスゲ、ザゼンソウなどに及んでいることを示す写真には心が痛みました。

なお周知のように、尾瀬の土地の新潟県側と福島県側は国有地ですが、群馬県側の土地は東京電力の所有です。これは尾瀬の水を集めて流れ下る只見川の水力を発電に利用しようという計画が大正時代からあったからで、東電小屋は元は水量計測のための施設であり、その名に冠されている「東電」は「東京電力」ではなくその前身にあたる「東京電燈」に由来するものだそうです。

2019/10/20

△06:55 東電小屋 → △07:30 見晴 → △09:25-40 沼尻休憩所 → △10:35-11:00 尾瀬沼ビジターセンター → △11:20 三平下 → △11:40 三平峠 → △12:45 一ノ瀬 → △13:30 大清水

朝方まで激しい雨が降っており、今日は雨合羽を着て濡れて歩くことになるかな……と少し暗い気持ちになっていましたが、これまたおかず充実の朝食をとる頃には雨が上がってくれました。

温かいもてなしを受けた東電小屋に別れを告げ、まずは東に向かって歩きます。すぐに橋で渡ったのが只見川で、ここには尾瀬沼から尾瀬ヶ原に至るすべての水流が集まってきたへと向かっています。

ガスに覆われて幻想的な風情を示す燧ヶ岳を見ながら湿原を渡り、東電分岐で南に向かって見晴(下田代十字路)へ。ここまではほぼ平らな道ですが、見晴からは燧ヶ岳の裾野を沼尻川に沿って尾瀬沼へと標高差260mを登ることになります。

明るい湿原の中の木道歩きも楽しいものですが、しっとりした樹林の中の山道を登るのも風情があってよいもの……というのは私の感性で、見習い山ガールにとっては苦行であったらしく、標高が上がるにつれて息が上がり、すっかり無口になってしまいました。

それでも、やっと道が平らになって沼尻に着くとテンション復活。空には青空も広がり始めました。

当初の計画では尾瀬沼の南岸を歩く予定でしたが、今月の台風の影響でそちら側は通行止めになっており、北岸を歩いて尾瀬沼ビジターセンターを目指しました。尾瀬沼の北岸の道は木道が整備されていて歩きやすく、ところどころには尾瀬沼に向かって開けていて気持ちの良いハイクができました。さらに、大江湿原の入り口の3本カラマツを見上げたり湿原の奥の様子を見通すことができたのも、ちょっとしたご褒美でした。

尾瀬沼ビジターセンターでお弁当をつかい、後は三平下から三平峠を越えて大清水へと下るだけ。三平峠への登りはわずか20分ですが、その後の大清水までの2時間の下りは退屈するだろうな……と思っていたら、これが大間違いでした。

三平峠から一ノ瀬までの1時間の下りは最初は面白みのない木道歩きですが、やがて十二曲りと呼ばれる下り道に入ると、目の前にブナを中心とする黄紅葉の光景が広がりました。これは素晴らしい!美しい光景についついカメラを構えて時間を使いたくなりますが、大清水から沼田へ向かうバスは1時間に1本のペースなので、あまり悠長にもしていられません。

最後の最後に予想外の美観に巡り合えた幸運を喜びながら一ノ瀬に到着すれば、そこから先は幅広く歩きやすい車道が大清水まで続いていました。