金峰山

日程:2018/07/08

概要:大弛峠から金峰山の山頂まで歩き、金峰山小屋に立ち寄ってから瑞牆山荘まで下山。金峰山に登ったのは30年ぶり。

山頂:朝日岳 2579m / 金峰山 2599m

同行:トモミさん

山行寸描

▲金峰山頂。ちょうどよいタイミングでガスがとれてくれた。(2018/07/08撮影)
▲定番の構図だが、千代の吹上から振り返った金峰山。名峰だ。(2018/07/08撮影)

ここ数年、夏になると登山ガイドの沙織さんのツアーで日本アルプスに出向いていたトモミさんですが、今年は沙織さんがヒマラヤ登山に注力しているためノープラン。そこで私がガイド代理の役目を買って出て、この七夕の週末にトモミさんと共に西穂高岳へ向かうことにしていました。その前にトレーニングしておこうかと6月にも二子山日帰り登山の計画を組んだのですが、こちらは雨に次ぐ雨でトレーニング山行はお流れになってしまい、そしてこの週末もまさかの豪雨予報(雨男ですみません!)。しかし日曜日は昼から天候が好転しそうとの予報に一縷の望みを託し、日帰りでアルペン的な景色を楽しめる奥秩父の金峰山に向かうことになりました。

2018/07/08

△09:45 大弛峠 → △10:45-50 朝日岳 → △11:45-12:00 金峰山 → △12:20-45 金峰山小屋 → △13:55 大日岩 → △14:15-20 大日小屋 → △14:55-15:05 富士見平小屋 → △15:35 瑞牆山荘

塩山駅を8時半に出発する栄和交通の乗合バス(車はバンタイプ)に乗って、大弛峠に着いたのは9時半頃。このバスは1人1,800円で事前予約制。塩山発7時半・8時半・9時半の1日3便出ています。こんな便利なバスがあるとは知りませんでしたが、トモミさんがどこからともなく見つけてくれて助かりました。

大弛峠は山梨側がきれいに舗装されており、たくさんの車が駐車していましたが、冷たい風と霧のせいで7月だというのに強烈に寒い!ここまでTシャツ1枚で余裕をかましていた私は、あわてて長袖のミッドレイヤーの上に、さらに雨具の上衣を羽織りました。

霧に包まれたコメツガやシラビソ、豊かな苔といった植生は、北八ヶ岳を連想させます。

やがて少しずつ植生が高山のものになってきて、きれいなシャクナゲの花を愛でる機会もありました。

朝日岳を越えて道はいったん大きく下り、再び緩やかな登りになってきます。先ほど「少しずつ植生が高山のものになって」きたと書きましたが、実は大弛峠の標高は2360mもあり、標高2579mの朝日岳までわずか200m強の登りしかなく、ここまでも、またここからも、ほとんど「登っている」という実感がない歩きに終始します。しかし、それにしてもトモミさんの歩きが以前ご一緒したときに比べて格段に力強く、足が速くなっていることに感心しました。モチベーション高く登山を続けている成果が如実に現れている感じです。

出発してから2時間近く、ほぼずっと霧に包まれた樹林の中の道を歩き続けていましたが、さして標高は上がっていなくても道の両脇の樹木が背の低いシャクナゲになり、さらにハイマツになって露出感が高くなったとき、まったくタイミングよく雲が切れて周囲の展望が目に入ってきました。南側には、切れ切れの雲の向こうに富士山。前方には特徴的な形の五丈岩とそれより少し高い岩の積み重なりである金峰山頂。上の写真には写っていませんが、北側には瑞牆山を見下ろすこともできました。

しかし相変わらず冷たい風が南側から強く吹き付けており、山頂に立ったトモミさんや私の帽子を吹き飛ばそうとしてきます。このまま長時間山頂に留まるのは難しそうなので、そそくさと五丈岩の下まで行って記念写真。他のパーティーも風避けの岩陰に隠れて休憩中です。五丈岩に登ろうとする人も見掛けましたが、ご覧の通り鳥居に守られているということはこの岩は御神体ですから、そういう不心得なことはできません。

温かい飲み物を求めて、北側の金峰山小屋に下ることにしました。前方の瑞牆山が特徴的ですが、金峰山小屋の右奥にも顕著な岩が見えています。「あれは何だ?」と間抜けな疑問を最初は持ったのですが、すぐにそれが廻り目平から見上げられる小川山の屋根岩であることに気が付きました。

山頂から20分の下りで、金峰山小屋に到着しました。私はこれまで金峰山に二度登っていますが、それは1987年1988年のことで、今回は実に30年ぶりの金峰山登山でした。山の様子はまったく変わっていませんでしたが、小屋の様子はすっかり様変わりしており、かつては右の写真のようにカマボコ型の質実剛健な山小屋だったものが、今ではずいぶんとおしゃれなロッジ風になっていて驚きました。

……いや、30年もたっていれば様変わりしていて当たり前。驚く方が間違っています。

小屋の中に入って、トモミさんはココア、私はお汁粉を注文しました。先に出てきたココアには火で炙ったマシュマロが載せられていてトモミさんはご満悦だったのですが、後から出てきた私のお汁粉もおいしそうに見えたらしく、横目で眺めながら「お汁粉……ふーん」となにやら納得がいかない様子(?)です。それはさておき、ここからは瑞牆山荘へと下るのですが、最終バスの時刻を考えるとあまりのんびりもしていられません。

千代の吹上に向かうトラバース道を辿り、尾根上に乗ってからはアルペン的な岩がちの道を、小さいアップダウンを交えつつ下ります。

千代の吹上から甲府盆地方向を見渡すと、左端には富士山の三角錐、右には南アルプスのスカイラインを隠すように一直線に連なる雲の線。よい展望というわけではありませんが、これもまた趣があってよい眺めです。

おっと、先を急がねば。そして大日岩に達する頃には青空が頭上にも広がり始めていました。

大日岩の基部を回って主稜線を離れ、少し下ったところにあるのが無人の大日小屋。中はやや荒れ気味で、避難小屋としても泊まろうという気にはなれません。しかし、この近くにあるテントサイトは最近使われたかのように整地されていて不思議だったのですが、富士見平小屋まで下りてみると看板に大日小屋で素泊り・テント泊の方は富士見平小屋へお申し込みを!!とありましたので、この周辺に(もしかすると小屋にも?)泊まる人はいるようです。

その富士見平小屋に下りついて小休止。この小屋は過去の不祥事から一時休業していたと聞いていますが、今は通常営業しています。外に貼り出されたメニューを見て、私は「瑞牆ビール」に、トモミさんは「天然きのこうどん」に目が釘付けでしたが、ここはガマン。

瑞牆山の全景を見通せるポイントからの眺め。きれいに晴れてきた空の下に聳える山頂の左手の突起は大ヤスリ岩、左端はカンマンボロン、その右は大面岩でしょう。

後は明るい広葉樹林の中の緩やかな道を下るだけ。バスの時刻まで十分な時間があったので、瑞牆山荘のテラスでビールとラムネで乾杯して山行の締めくくりとしました。

このコースの総距離は10.0km、高低差は1067mですが、累積での登りはわずかに421mで下りが1256m(iPhone上のYAMAPアプリによる計測に基づく)ですので、「山登り」と呼んでよいかどうかは若干疑問。ファンクライムとは言えるかもしれませんが、これで展望に恵まれていなかったら何しに行ったのかわからなくなるところでした。トモミさんの晴れ女パワーに感謝です。

こうして日帰りながら展望に恵まれた山行を楽しんだ我々でしたが、西日本では金曜日からこの日にかけての雨が各地に甚大な被害をもたらす「平成30年7月豪雨」となり、200人をはるかに超える死者を出す事態となってしまいました。

《気象庁》

被災された方々に、謹んでお悔やみを申し上げます。