白山の岩場

日程:2024/05/21

概要:甲府近郊にある白山の岩場で、マルチピッチ登攀における各種手順の再確認。

山頂:白山 630m

同行:セキネくん

2024/05/21

△09:45 千代田湖畔 → △09:55-14:00 白山の岩場 → △14:15-20 白山 → △14:30 千代田湖畔

今日は甲府近郊にある白山の岩場でロープワークの練習。先日の天狗山ダイレクトで感じた課題意識を元に、地元民であるセキネくんに付き合ってもらって以下の三点についてメソッドの再確認を行おうというものです。

  • ロープコイルの効率的な巻き方←長い歩きのパートのために。
  • 引上げシステム←難しいピッチでフォローが進退極まったときのために。
  • アンカーポイントからメインロープを使ってマスターポイントを伸ばす方法。

甲府市の裏庭と言っても良さそうな位置にある千代田湖畔に車を駐めて、八王子山・天狗山・湯村山への登山口であることを示す道標を横目に山道に入ると……。

10分も登らないうちに白山の岩場に通じる入口に着きました。そこからフィックスロープも張られた踏み跡を斜めに下っていくと……。

すぐに「白山の岩場」のエリアAに到着しました。この「白山の岩場」はAからDまでの四つのエリアが山腹に並んでおり、硬軟取り混ぜて30本ほどのルートが開拓されていますが、それらの一番手前にあるこのエリアを使って上記の課題(とりわけ引上げシステム)の練習をしようというのがセキネくんの目論見です。

まずは取付きで1/3引上げシステムを組んでみる練習。理屈は理解していたつもりでしたが、いざ実際に構築しようとすると「あれ?こうだっけ」となって若干の試行錯誤が発生しました。まあクライミングにまつわる各種手順というのはどれをとっても、こうして実地に身体を動かしてみないと身につかないものです。

一応これでよかろうという確信を得たところでスラブの5.7を登り、斜度があるところで引上げの実践に取り組んでみました。セカンドに何らかの支障が生じATCガイドなどのビレイデバイスのブロック機能が働いている状態からタイブロックとスリングを使って荷重を支点に移し、1/3引上げシステムを構築して引き上げていくというのがおおまかな流れです。引き上げられる者は上からの補助があれば前進できる状態であるという想定なのでなんとか引っ張り上げることができましたが、予習してあった技術書などに明記されている通り、折返しのカラビナの摩擦があるために重さは1/3にはまったくならず、腕力は使うわ腰は痛くなるわ。せめてタイブロックやフリクションヒッチの位置を補助者が動かしてくれれば効率アップしそうですが、上にいるビレイヤー一人で何から何までやらなければならないとなるとかなり大変だ(そういう場合の方がむしろ普通でしょうが)ということを実感しました。

次に立木などにとったアンカーポイントからメインロープを使ってマスターポイントを伸ばす方法は、ロープアップをした後に確保器をどこにどうやって設置するのかということがわかっていなかったためにここでも試行錯誤することになりましたが、クライマー側のメインロープにバタフライノットを作って確保器をセットすればビレイ操作はできました。手元の技術書の小さい写真も目をこらして見ればどうやら同様の方法でビレイを行っている様子ですが、しかしこれでセカンドがフォールしたら確保器が引き下げられてしまい難儀しそうな気もするので、いまひとつ確信が持てません。

ロープコイルの巻き方は、セキネくんがガイド研修で伝授された方法を披露してくれて簡単に習得することができました。ありがたいことです。

ついでに立木にロープをフィックスする方法をおさらいしましたが、これは沢登ラーの必須科目なので私の方に一日の長がありました。

一通り勉強をし終えたら、せっかくなので岩に触ります。コーナーの立体的な形状が楽しい5.8をセキネくんが登り、ついで私はTR。さらにそのTRを左に回してセキネくんが5.12aの課題に触ってみましたが……。

これまで酷使されてきたセキネくんのシューズのソールがずるりと剥けてしまい、あっさりギブアップ。ちょうど地元の方々らしい3人組がこの岩場に姿を現したこともあり、ここでお開きとしました。

岩場から登山道に戻り、せっかくなので白山の頂上を目指すことにしました。その手前には見事な展望台があり、セキネくんはそこからの眺めを県外者である私に見せたかったようですが、これは確かに感動モノでした。

すごい!甲府盆地が一望でき、雲が多いものの右奥には鳳凰三山や櫛形山、正面には御坂の山々が聳えています。この絶景が登山口から徒歩わずかで手に入るとは驚きです。

山頂には白山八王子神社の石祠ややんごとなき身分の方々の来訪を記念する石碑があり、ゆっくり寛げる広場もあってこれまたいいところ。しかも白山単体だけでなく隣り合わせるいくつものピークを繋いだプチ縦走も可能だそうですから、こんないい山を裏山に持つ甲府市民は本当に幸せです。

最後にもう一度展望台から甲府盆地を見下ろした後、千代田湖畔に戻ってこの日のプログラムは終了です。短時間ではありましたが、密度濃く練習することができて有意義な半日でした。なお、地形図上で見るエリアAと白山山頂の位置は上の図の通りで、注目すべきポイントは最低高度と最高高度の差が80mしかないことです。

なお、アンカーポイントからメインロープを使ってマスターポイントを伸ばす方法は、手元の技術書の中では次の二つに記述がありました。

  • 保科雅則『ヤマケイ登山学校アルパインクライミング』(山と溪谷社 2021年)p.53
  • 阿部亮樹『イラストクライミング増補改訂新版』(東京新聞 2012年)p.155

上左の写真は『アルパインクライミング』に掲載されている写真で、今回我々が試したやり方はこれに準拠していますが、セカンドが墜落したときにどうなるのだろうという疑問を持ったというのは上記の通り。上右の写真は『イラストクライミング』のもので、こちらはビレイループに確保器をセットするようにと書かれていますが、この図の通りだとセカンドが墜落すればビレイヤーが前向きに引き込まれて身動きがとれなくなりそうです。