笛吹川久渡沢ナメラ沢

日程:2023/08/05-06

概要:奥秩父の癒し渓・ナメラ沢を遡行し、早々に沢中泊。翌日遡行を継続し、二俣の近くから右岸の青笹尾根にエスケープして下山。

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山頂:---

同行:ノリコさん

山行寸描

▲10m滝。ヌメリを避けて水流の右側を登った。(2023/08/05撮影)
▲美しいナメ。しかし、かつてに比べるとスケールが小さくなっている。(2023/08/06撮影)

本稿での地名の同定は、主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2016年)の記述を参照しています。

今年は沢登りに3回行っていますが、泊まり沢は未だゼロなので、昨年奥多摩の入川谷を一緒に遡行したノリコさんに声を掛けて付き合ってもらうことになりました。行き先についてはいくつかのプランがあったのですが、沖縄近辺で迷走している台風6号の影響で各地の天気予報がころころ変わるためになかなか確定できず、最終的に奥秩父のナメラ沢に決めたのは出発前日の夕方のこと。私はこのナメラ沢を2004年に遡行したことがあり、そのときは初日に稜線まで抜けて雁坂小屋に泊まったのですが、今回は沢の途中で泊まる上に稜線まで上がらずに途中から右岸の青笹尾根にエスケープして出発点に戻ってくるというお気楽プランです。

2023/08/05

△10:10 西沢渓谷入口 → △11:10 沓切沢橋 → △13:00 幕営地

待合せはJR中央本線の塩山駅。直前の決定だったために私の方は特急の指定席をとることができず、地道に各駅停車を乗り継いでの現地入りとなりました。

気になっていたのは西沢渓谷行きのバスが混んでいるのではないかということでしたが、意外にもバスは乗客全員が座れておつりがくる程度の乗車率。さらに西沢渓谷入口から雁坂峠に向かう道には我々以外に登山者の姿はなく、ナメラ沢は(日帰り遡行の早立ち組を除けば)貸切になりそうです。

ナメラ沢へのアプローチとして沓切沢橋から唐松尾沢(沓切沢ではないのが不思議)を下るパーティーも少なくないようですが、我々はセオリー通りにさらに雁坂峠方面の登山道を進み、「←ナメラ沢へ」ときれいに書かれた看板から左下へ下りました。

歩きやすい緩斜面を下って峠沢の畔に降り立ち、ここで沢登り装備一式を身に着けて遡行開始。もっとも「遡行」と言っても最初は峠沢を下流に向かい、やがて右岸に出合う沢がナメラ沢ということになります。

ナメラ沢に入ってちょっとしたナメを歩くとすぐに、この沢では唯一登攀的な風貌を持つ5m滝が出てきます。ここはいろいろな越え方があるのですが、ノリコさんは大胆にも正面突破にトライしました。

手がヌメると言ってしばらく逡巡していたノリコさんでしたが、最終的には見事に登り切りました。えらい!ただ、身体が水を浴びてずぶ濡れになり冷えている様子だったので、少し先の日が当たるところで待ってもらうことにして、私の方は右端から巻き気味に越えました。なお、この右端からの滝越えは「簡単」だとしている記録が少なくありませんが、実際には案外バランスが悪く、沢慣れしていない人にとっては必ずしも「簡単」の2文字で片付けられるものではありません。もし初心者をこの沢へ案内するのであれば、ここは上から確保するか、滝の左(右岸)からの巻きを検討すべきだと思います。

ゴロゴロの中ノ沢分岐を左に入って進むとナメが出てくるようになり、その先にナメラ沢の中では最大となる10mナメ滝が現れました。

かつてはここを左寄りの水流内にフットホールドを求めて登りましたが、今回は安全第一で右寄りのヌメリが少なそうなところを選んで登りました。

落ち口近くから見下ろすとそこそこ高度感があって、ここでスリップしたら痛い目に会いそう。それにしても気になるのはこの滝の取付き近くが倒木で覆われていたことで、滝の上のナメも同様に荒れ気味です。

やがて標高1520mあたりに、格好のテン場が現れました。時刻はまだ13時と早すぎるのですが、5m滝での奮闘が祟ったのかノリコさんは足が攣り気味ですし、私の方も久々のテント泊ということで荷物が重く、さらに言えば遡行開始時点から時折聞こえている雷鳴のことが気になって、安全な幕営適地が見つかれば早めにこの日の行動を停止しようと申し合わせていたのでした。

手早く薪を集めて火を熾し、まずは乾杯!この後はお互い持ち寄った食材を振る舞い合い、お酒をちびちび。これこそが今回の沢登りの主目的ですが、それでもさすがに13時行動終了は早すぎで、出発を2時間くらい遅らせればちょうどよかっただろうと思います。そうこうしているうちにも時折雷鳴が響き、空には黒い雲が広がる時間帯もありましたが、どうにか雨に降られることなく日没を迎え、すっかり満腹になって各自のテントに納まりました。

2023/08/06

△06:55 幕営地 → △07:45-55 二俣 → △08:55 青笹尾根 → △10:55 西沢渓谷入口

昨夜就寝した頃は気温が高くTシャツ1枚でテントの中に横になっていたのですが、午前2時頃に気温が下がって寒さを感じたので上衣を着込んでシュラフカバーの中に避難。さらに惰眠を貪って、周囲が明るくなってきた5時頃から焚火熾しを始めました。

今日の行程もごく短いものなので、ゆっくり朝食をとってからテントを片付け、装備を身に着けてのんびり出発。起床した頃の空はやや曇りがちでしたが、出発するときには青空が広がり始めていました。

遡行すると確かにところどころにナメ床やナメ滝が出てはくるのですが、ナメの幅も長さもイマイチで、全体的にはガレがまさっている感じです。

それでもこの真っ直ぐに伸びる一枚岩のナメは綺麗で、かろうじてナメラ沢の面目を保ってくれました。

しかし、先ほどのナメから10分も歩くと早くも二俣に着きました。それどころか、幕営地を出発してから1時間もかかっておらず、これで終わり?……と(沢の短さはわかってはいても)愕然としてしまいます。

左俣の入口のボコボコとした滝を簡単に登って、これを登り切るかどうかというところに左(右岸)から合わさる顕著な枝沢が、青笹尾根への登り口になります。念のため左俣の先を覗いてみると、このボコボコ滝に似た姿の滝が連なっていましたが、そちらを越えると青笹尾根への登りが少々厄介になりそうなので、ここはあっさりナメラ沢を離れることにしました。

枝沢は斜度がきつくなく、順調に高度を上げていくと途中に明瞭な踏み跡のようなものが横切っていますが、かまわずどこまでも詰め上がるとやがて水が涸れて笹原の中に沢形が消えていきます。

枝沢の出合から15分ほどで再び踏み跡が現れたところで遡行終了。シューズを履き替え、ヘルメット以外のギアをザックに戻したら、踏み跡を辿って青笹尾根を目指します。あらかじめの地形図の検討ではこの枝沢の右岸の尾根を緩やかに登るのだと思っていたのですが、実際には踏み跡が等高線沿いに続いていて青笹尾根の1800m強の鞍部に苦もなく出ることができました。

青笹尾根の上部は明るい美尾根で、下生えの笹の上に広葉樹林が広がったり唐松林があったりととてもいい雰囲気でした。しかも足元には登山道並に明瞭な踏み跡が続いていて、道に迷う心配はほぼありません。

それだけに、必要性を感じられないピンクテープの多さには閉口しました。その執拗さは、以前批判的に紹介した丹沢界隈の紫のスズランテープを思わせるほど。誰が付けたものかはわかりませんが、この手のものは控えめに、ここぞというところを選んで付けてほしいものです。そして尾根上にはやがて防火帯が現れ、マルバダケブキの花盛りの中、そこそこの急斜面をスリップに気を使いながら下りました。

最後は階段を下って車道に出て、そこから10分余りの歩きで西沢渓谷入口に帰還しました。何はなくともまずかき氷、そして次のバスまで2時間以上も間があるのでタクシーを呼び塩山温泉に送ってもらって宏池荘で入浴。何から何まで着替えてすっきりしたら、塩山駅の近くにある「とん作」で生ビールとトンカツです。なんだか、沢登りそのものよりも下山後のあれこれの方が充実していたような……。

初日3時間・2日目4時間とあまりにコンビニエントな沢登りではあったものの、久しぶりの焚火泊を楽しむことができたので今回の山旅の目的は一応果たせたのですが、それにしてもナメラ沢のナメはこんなものだったっけ?と終始首をひねりながらの遡行になりました。

上の写真は2004年に遡行したときのものですが、このときは雨に降られていたにもかかわらず明るい沢だという印象を持ったのに、今回はガレとその上に繁茂した木のせいでどことなく暗い雰囲気でした。もっとも前回から今までの20年近くの間には関東甲信地方にも大きな台風被害が何度も起きていますから、沢の姿が変わるのも仕方ありません。今回参考にしたトポは2016年版の『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社)ですが、そこに書かれている土石が沢床を埋め、昔のきれいな沢とはほど遠いという記述も納得で、これでは「ナメラ沢」ではなく「たまにナメもある沢」=「タメラ沢」ではないか?とノリコさんと話しながら、塩山駅から特急かいじに乗って帰京しました。

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