鉢伏山

日程:2023/03/05

概要:冬のない国に行く山友よっこさんのためのスノーハイキングとして、信州の鉢伏山に登る。牛伏寺駐車場を起点として往路はフランス式階段工を経由、復路はブナの木権現から尾根筋をまっすぐ下り途中から牛伏寺へ下降。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:鉢伏山 1929m

同行:よっこさん / リントミ夫妻 / ハマちゃん / カンキさん / トモミさん

山行寸描

▲鉢伏山山頂で記念撮影。左からトモミさん・私・ハマちゃん・よっこさん・おトミさん・カンキさん・リンタロウさん。(2023/03/05トモミさん撮影)
▲登頂翌日の帰路に高速道路から見上げた鉢伏山。市内でも開けた場所からなら大きく見え続けていた。(2023/03/06撮影)

転勤した旦那さんの後を追って今年の夏にはフィリピンに渡る予定の山友よっこさん。彼女とは厳しかった赤岳西壁主稜や楽しかった小川山還暦BBQなどいろいろな思い出を皆と一緒に作ってきましたが、今度の旦那さんの転勤は長ければ5年間は戻ってこないのだそうです。常夏の国に赴く彼女に日本の雪山の姿を目に焼き付けてもらおうと、鉢伏山山行を企画しました。

名古屋在住のよっこさんと東京在住のジム仲間がそれぞれの在所から松本に集まり、まずはボルダリングジム「エッジアンドソファ」で3時間ほどセッション。その後松本市内に移動し、それぞれの宿にチェックインしてから居酒屋「薫風」さんに再集結して宴会となりました。ノリにノったよっこさんは日本酒を四合ほども飲んで酒豪ぶりを発揮していましたが、明日の山行は大丈夫?

2023/03/05

△08:50 牛伏寺駐車場 → △09:15 フランス式階段工 → △11:10 ブナの木権現 → △12:25 前鉢伏分岐 → △12:40-13:20 鉢伏山 → △13:30 前鉢伏分岐 → △14:30 ブナの木権現 → △15:25-35 牛伏寺 → △15:40 牛伏寺駐車場

……などと人の心配をしている場合ではなく、目覚めてみたら自分も二日酔い気味ですが、ともあれリントミ号に乗せてもらって起点となる牛伏寺ごふくじ駐車場に移動しました。この牛伏寺は真言宗智山派の寺院で、天平勝宝7年(756年)に唐からもたらされた大般若経600巻を善光寺へ奉納する途中、経典を運んでいた2頭の牛が倒れたことからこの名がついたとされていますが、その真偽はともかく寺には本尊十一面観音をはじめ平安時代末期作の仏像が伝わり、県下有数の名刹なのだそうです。

メンバーの中には雪山登山は久しぶりだという者もいて、準備の間もシューズのソールが剥がれないかと心配したりスパッツを表裏逆に履こうとしたりと大騒ぎでしたが、どうにか形が整い隊列を組んで出発しました。

コースは牛伏寺砂防ダムの横を通って牛伏寺への参道から離れ、連岳橋駐車場から牛伏川沿いの道を進みます。ここから牛伏川の上流にかけての一連の砂防施設は見もので、特に「フランス式階段工」と呼ばれる水路は重要文化財とされています。これらは新潟県下に信濃川の水害をもたらす主たる要因が上流にあたる長野県の水源地帯、とりわけ牛伏川から供給される土砂にあると目されたことに基づき明治18年から大正7年にかけて実施された砂防事業の産物です。

そこまでの詳しい背景を予備知識として持っていたわけではありませんが、「フランス式階段工」やいくつもの石堰堤の美しさは一目見れば誰でも実感できます。しかし、それらの美しさを愛でることよりも目先の問題は凍結した路面で、早い段階からチェーンスパイクを着用することになりました。

道はやがて沢筋を離れて斜面を登るようになり、締まった雪のおかげで歩きやすくなってきました。

リスのお出迎え。至近距離まで近づいてもさして恐れる様子を見せませんが、逃げるとなったらその足の速さは大したものです。

斜面を登り詰めて尾根上に出たところで、下山してくる団体とすれ違いました。この時刻(11時少し前)に下っているということは、昨夜は山頂近くにあってこの冬から試験的に冬季宿泊営業を行っているという鉢伏山荘に泊まったのかな?

少し進むと西側が開けた場所に出ました。ここは採石場の跡地のはずですが、そんなことより目の前の北アルプスの展望の見事さに歓声が上がります。

ブナの木権現と名付けられた場所は牛伏寺駐車場から尾根上をまっすぐ登ってくる道との合流点で、そこに立つ石碑には「大山祇命おおやまつみのみこと」と彫られていました。いわゆる山の神ですな。そこから緩やかに尾根を登ると5分ほどで車道に合流し、ここからはジグザグを描く車道とこれをところどころでショートカットする笹がちの道とを歩くことになりました。

それにしても今日はいい天気。ほてった顔を雪に埋めて冷やしてから(顔拓!私はしませんでしたが)彼方に見えてきた鉢伏山を目指します。

お気楽なスノーハイキングのつもりだったのに、歩けども歩けどもなかなか近づかない鉢伏山。その中腹には足元の雪がすけて見えているすっかり葉を落とした樹林が一風変わった景観を作っており、ずいぶん昔に見た加山又造の《冬》を思い出しました。

やっと鉢伏山荘周辺の施設群に到着しました。山荘は既に戸締りがされているように見えましたが、その手前の休憩所の煙突からは煙が上がっていました。

待望の鉢伏山頂到着。あいにく穂高連峰は雲をかぶっていましたが、その代わり後立山の山並みが一望です。また、山頂手前から間近に見える懐かしの美ヶ原の左奥には頚城の山々、右奥には浅間山、さらに雪の少ない蓼科山も見ることができました。

風もなく穏やかな陽気の山頂で行動食をとり一息ついたら、近くにある鉢伏大神祠にお参り。鉢伏山の修験道の歴史に触れてから少し離れたところにある広場に足を伸ばしました。先ほどの山頂よりもこちらの方が低いところにあるのになぜ「鉢伏山頂」の標識がここにあるのか不思議ですが、こちらには壊れかけた階段が少々危なっかしい展望台やベンチが置かれており、北アルプスの眺めもさることながら眼下の松本盆地の予想外に大きな広がりを見渡せる点がポイントです。ちなみに内陸ど真ん中のこの松本盆地もかつては海の底で、松本市ではクジラの化石が発掘されているのだそうです。

見るべきものを見たら、あとは下山あるのみ。

休憩所近くでのトイレ休憩の後、来た道をそのまま下ります。ただし車道を離れてブナの木権現まで降りたら、そのまま往路に入るのではなくまっすぐ牛伏寺駐車場を目指して尾根筋を直進しました。

ところが先に下っていたよっこさん・ハマちゃん・トモミさん・私の4人は途中で計画外の道に入ってしまい、気がついたときには予定のコースから標高差にして50mほども下っていました。しかし、この道も地形図にははっきり破線が記されており、降り着く先は牛伏寺だとわかっているので残る3人にその旨を連絡してそのまま下り続けると、なんの問題もなく牛伏寺の境内に裏手から入ることができました。

無事に山行を終了したことを感謝してお賽銭を納め、立派な境内を見物しながらのんびり歩いて駐車場に戻ると、すぐに残るリントミ夫妻とカンキさんも予定していた通りのルートで降りてきました。しかしそちらは意外に悪路だったようで、おトミさんは駐車場目前でスリップしてズボンのお尻をどろんこにしていましたし、カンキさんは懸念していた通りシューズのソールを剥がしていましたがチェーンスパイクのおかげで歩き通せました。ともあれこれで、よっこさんのための雪山企画は終了です。皆さん、2日間お疲れさまでした。よっこさん、フィリピンに行っても日本の雪景色と一緒に歩いた仲間たちのことをたまには思い出して下さい。

そしてこの後、よっこさんとトモミさんはハマちゃんの車で松本駅に向かい、私は引き続き錫杖岳に向かうためにリントミ号で麓のファミリーレストランに運んでもらいました。