吾妻小富士・一切経山

日程:2022/10/10-11

概要:初日は浄土平から吾妻小富士に登ってから吾妻小舎に宿泊。翌日、一切経山に登った後、鎌沼を経て浄土平へ戻る。一切経山での爆風は危険を感じるほどだったが、せっかく登頂しても五色沼(魔女の瞳)はガスのために見られなかった。

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山頂:吾妻小富士 1,707m / 一切経山 1,949m

同行:トモミさん

山行寸描

▲一切経山に登って爆風に吹かれる。思いがけず必死の登山になったが、下ってからの酸ヶ平や鎌沼周辺の穏やかさには癒された。(2022/10/11撮影)

スポーツの日の三連休は「長女」トモミさんと共に混雑回避のため日程を1日後ろにずらし(土日休は10/08-10→我々のプランは10/09-11)た上で黒部川の下の廊下を歩く計画にしていたのですが、9月下旬の阿曽原温泉小屋からの情報では残念ながら開通まで時間がかかりそう。このため行き先をがらっと変更して紅葉目当ての吾妻連峰縦走に切り替えたのですが、これも2日目の天気が悪く断念することになりました。しかし、3日目(10/11)だけはどうにか晴れそう(ただし爆風)な予報でもあったので、起点となる吾妻小舎の予約を1日ずらし1泊2日で登る一切経山メインのお手軽なプランに変更しました。

のんびり11時半頃に福島駅でトモミさんと合流し、ご当地グルメらしい餃子の「照井」に行ってみると既に大勢の待ち行列。浄土平行きのバスが運行していないために予約していたタクシーの時刻を2度も変更して、やっと餃子にありつけたのは12時45分頃のことでした。

2022/10/10

△14:30 浄土平 → △14:50 吾妻小富士 → △15:10 浄土平 → △15:30-16:00 吾妻小舎 → △16:15 桶沼 → △16:30 吾妻小舎

福島駅からタクシーで浄土平に上がると、そこは予想通りガスと強風の世界。お天気次第では吾妻小富士は2日目の最後に回すことになっていましたが、最初からやる気満々のトモミさんはためらうことなく吾妻小富士を目指します。

吾妻小富士は浄土平の下界側に隣接する山腹火口で、わずかの階段登りでその火口の縁まで達することができるので一般観光客も次々に階段を登っています。10分ほどで火口の縁に出ると下の方に火口の底がぼんやり見えていましたが、やはりそこはガスと強風の世界でした。

そこにあった看板の指示に従って時計回りにお鉢巡りを始めましたが、観光客は皆ここで火口の底を見たことに満足して記念写真を撮ったら次々に下っていき、やがて歩き続けているのは我々だけになりました。浄土平から反対側にある最高点が一応の山頂ということになりますが、そこには細かい割れ目に1円玉がたくさん埋め込まれ、かつて標識が立っていただろうと思わせる台座の痕跡が残った岩のかたまりがあるだけ。トモミさんにそのてっぺんに立ってもらって登頂の証拠写真を撮ったら、引き続き時計回りを続けます。

それにしてもこの天気はひどい。予報通りと言えば予報通りなのですが、明日はきれいに晴れてほしいものです。いや、晴れてくれなくてもいいからせめて風はマイルドであってほしい。

無事に浄土平に戻ってほっと一息。階段の途中の紅葉をカメラに収める余裕もできましたが、今年のこのあたりは発色がイマイチであるようです。

火山灰層が風化して水を通さなくなり生まれたという浄土平湿原の中の木道を歩いて車道を渡り、樹林の中の山道を少し歩くとそこに、今宵の宿となる吾妻小舎がありました。

外階段から2階に上がるとそこに広い食堂兼宿泊室があり、調度類は山小屋風でもありペンション風でもあり。すぐにお湯が出されてお茶を勧められると共に、この日ここに泊まる客は我々2人だけだということを告げられました。

お茶を飲みつつ荷物を整理して寛げるようになったものの、夕食の時間まではゆとりがあるので、小屋番のお兄さんの助言に従って近くの桶沼まで散歩に出てみました。

吾妻小舎から徒歩15分ほどの桶沼は「沼」という名前になっていますが実際には火口湖で、浄土平の各施設や吾妻小舎の水源になっているそうです。また、この山体の北西側の森林は大正から昭和初期にかけて浄土平にあった硫黄の製錬所の燃料として伐採されたのに対し、吾妻小舎がある南東側にはコメツガやダケカンバが残されているのだそう。

吾妻小舎の夕食は具沢山のカレー(おかわり可)といろいろのおかずにデザート付き。ビールもお酒も進みましたが、それでも20時すぎには就寝しました。

2022/10/11

△08:05 吾妻小舎 → △09:15 酸ヶ平避難小屋 → △09:45-55 一切経山 → △10:25-35 酸ヶ平避難小屋 → △11:05 姥神石像 → △12:10 浄土平

寝心地のよい一夜を明かして7時からご飯とおでんの朝食をとったら、しっかり雨具を着込んでから小屋番さんにお礼を言って出発です。吾妻小舎はとても気持ちの良い小屋でいつかもう一度泊まってみたいと思わせてくれる宿でしたが、営業期間は磐梯吾妻スカイラインが開通している春から秋にかけての時期に限られるそうですし、浄土平までバスが上がらなくなってしまったこともダメージ。経営という点でも小屋番さんの生活という点でも、なかなか容易ではなさそうです。

起床した頃にはどんよりした空模様でしたが、再び桶沼を覗いて浄土平に向かう道に向かったところ右手の吾妻小富士が青空の下に姿を見せていました。どうやら天気予報は正しかったようですが、ということはやはり風が強いのだろうか?

浄土平の木道を歩く頃には再び雲が空を覆うようになりましたが、高空は晴れていて山体に雲がかかっている状態である様子なので、少なくとも雨に降られる心配はなさそうです。

それにしても一切経山の活動は活発で、今は大穴火口に常に噴気が見えているためにその近くを通る登山道が閉鎖されているほか、浄土平の北側にはキツネ地獄と呼ばれる火山性ガスの溜まり場もあるそうです。

高さを上げるにつれて背後の吾妻小富士がはっきりと火口の中を見せるようになり、やがて酸ヶ平の一角に登り着いたところで一切経山に向けて道を右に折れました。

がっしりした造りの酸ヶ平避難小屋の中は意外に広いのですが、土間が中心で大勢を泊まらせることは想定していない構造になっています。そうした様子をざっと見ただけでただちに登高を続けると、やがて雲の下に福島盆地の眺めも得られるようになり、それと共に風が(危惧していた通り)強くなってきました。

一切経山の山頂近くは横殴りの強烈な風。たびたび身体を持っていかれそうになりながら、なんとか着いたのは「空気大感謝塔」という奇妙な名前のモニュメントでした。ここで風を避けてかがみこんで一息つきましたが、山頂標識はそこから20mほど向こうです。

決死の記念撮影!私もそれなりに長いこと登山をやっていますが、これほどの爆風の中での登頂というのは記憶にありません。そして、晴れていればこの山頂の一角から「魔女の瞳」と呼ばれる五色沼を見下ろすことができるはずですが、この天候ではもちろん何も見えず、さっさと下山にかかろうと爆風の中を戻り始めました。

▲ちなみにこれは1995年5月4日に見た五色沼。ブルーキュラソーのフローズンカクテルのようだと洒落たことをそのときは思ったのですが、一体いつ・どこから「魔女の瞳」というネーミングが生まれたのか?

戻りかけてふと見ると、岩陰から我々を手招きする登山者がいます。何事かと思ってそちらに行ってみると「魔女の瞳」と書かれた真新しい看板がありましたが、まあそれだけのことです。それでも彼の親切に感謝して再び爆風の中に乗り出し、奮闘20分で爆風地帯を抜け出すと酸ヶ平や鎌沼を見下ろせるようになりました。やれやれ、助かった。五色沼を見下ろすことができなかったのは残念でしたが、この天候の中で一切経山の山頂に立てたことに満足して、あとはのんびりと酸ヶ平から鎌沼を巡り歩くことにしました。

酸ヶ平は草紅葉の中にいくつかの池塘を配し、その端をかすめるように付けられた木道歩きが楽しいところ。

湿原が笹原になった先に、強風に煽られて海のように波立っている鎌沼がありました。その名の通り鎌のような形をしたこの沼も桶沼と同様に火口湖で、水は透明度が高く波が落ち着いているところでは底を見通すことができました。

鎌沼を半周ぐるりと回ればそのまま浄土平へ下る道に向かうことができますが、急ぐこともないので姥ヶ原を歩いてみることにし、鎌沼沿いの道の途中から南へ分かれる道に入りました。わずかに高さを上げたところから振り返ると、そこには鎌沼越しに一切経山の姿も見られましたが、相変わらず山頂は雲と強風に覆われている様子でした。

鎌沼から谷地平方向へ少し進んだところに立っているのが、姥ヶ原の名前の元となった姥神の石像です。その由来はこのときはわかりませんでしたが、下山後に浄土平ビジターセンターで学習したところによれば、中吾妻山の西側中腹の吾妻山神社に通じる駆け道の一つが安達太良山(鉄山)から桶沼・姥ヶ原を経て谷地平に向かっていたそうなので、そうした修験と関わりがあるものなのかもしれません。

ともあれ、姥神石像に挨拶をしたら潤いの少ない姥ヶ原を通り抜け、あとは浄土平を目指すだけです。

下るにつれて吾妻小富士と桶沼が仲良く並んでいる姿が目に入り、それらの高さが目線よりも上になったらそこはもう浄土平の一角。こうして正午頃に山行を終了しました。


下山の途中でタクシーを呼び、待ち時間の間に浄土平ビジターセンターに入ってみました。

そこには浄土平周辺の地形や火山活動の様子、鉱物や動植物、モデルコース等が手際よく紹介されていて、もちろん五色沼の姿もジオラマの中にありました。これはこれでうれしかったのですが、トモミさんに本物の五色沼を見せてあげられなかったのはやはり残念です。ちなみにトモミさんはビジターセンターに入らなかったので、この五色沼すら目にしていません。

ビジターセンターの外に出て寒風吹き荒ぶ駐車場前でタクシーを迎え、福島駅までは行かずに途中の高湯温泉で下ろしてもらいました。ここにある「あったか湯」は公共施設なので料金は250円と超廉価。源泉から距離がないために硫化ガスを抜ききることができないことから露天風呂のみ、洗い場なし(ただし掛け湯のための蛇口あり)という制約はありますが、その名の通りジャスト適温の湯に身体を沈めて芯から温まることができました(トモミさん、ナイスセレクト!)。

高湯温泉からは福島駅行きのバスが出ており、これに乗って駅前に戻ったら2層スープで有名らしい「丸信ラーメン」でWチャーシューメンをいただきました。これはあっさり系のスープと上品な自家製チャーシューをいただくために手打ち麺があるという感じで、飽きのこない美味しいラーメンでした(トモミさん、再びナイスセレクト!)。ごちそうさまでした。

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