御岳山

日程:2022/03/20

概要:御嶽駅からケーブルカー滝本駅を経て御岳山の山上に上がり、いったん大塚山を回ってからロックガーデン経由で鍋割山と奥の院を踏んで武蔵御嶽神社。最後は御嶽駅まで歩いて下る。

⏿ PCやタブレットなど、より広角(横幅768px以上)の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:御岳山(鍋割山)1084m

同行:---

山行寸描

▲ケーブルカーの御岳山駅に隣接する展望台からの眺め。左の方には筑波山、右の方にはスカイツリーが見えていた。(2022/03/20撮影)
▲ロックガーデンのどん詰まりにある綾広の滝。行場らしい厳粛な雰囲気が漂う。(2022/03/20撮影)

春分の日の三連休は1泊2日で奥多摩のロングコースを歩くつもりでしたが、先週の戸倉三山で花粉の猛威に戦慄し、行くならワンデイにしようと計画短縮。すると「なに日帰り?それなら夕方飲もうぜ」という誘いがかかってさらにお手軽なコースにせざるを得なくなるという悪循環(?)に陥ったこの日、向かった先は奥多摩の御岳山です。

……と言っても単にケーブルカーの終点から御岳神社までを往復するのではお手軽過ぎるので、過去に何回か参加したことがある「みたけ山トレイルラン」のコースをなぞることとして、数年ぶりに足回りはトレランシューズ、ワークマンのパンツの下には密かにCW-Xなんぞも履いてみました。

2022/03/20

△08:20 御嶽駅 → △08:55 ケーブルカー滝本駅 → △09:55 ケーブルカー御岳山駅 → △10:15 大塚山 → △10:40 長尾平分岐 → △10:50 天狗岩 → △11:05 綾広の滝 → △11:25 芥場峠 → △11:40 鍋割山 → △11:50-55 奥の院 → △12:15 長尾平分岐 → △12:20-25 武蔵御嶽神社 → △12:30-13:00 千本屋 → △13:35 ケーブルカー滝本駅 → △14:10 御嶽駅

ホリデー快速おくたま1号に乗って御嶽駅下車、駅前でゆっくり身繕いをしてから歩き始めます。

朝方は気持ちよく青空も広がっていますが、ケーブルカーの滝本駅までの緩やかな上り坂は意外にこたえます。それでも過去のトレラン大会ではスタート前に「地獄のエアロビ」があったことを思い出し、今日はそのまま登り始められるのだからまだましだと自分を鼓舞しました。

ケーブルカーに乗れば楽ちんであることはわかっていますが、ここは痩せ我慢のしどころです。

そのご褒美として、参道のところどころにかつての地名とその由来の説明があり、それらを読みながら高さを上げていくと、神域に入っていくという厳かな気持ちになってきます。

山上に上がっていったん右へ水平な道を辿り、ケーブルカー御岳山駅の前に出れば再び下界と同様の人だかり。展望台から関東平野を広く見渡してから、あまり人が足を伸ばさない大塚山を巡る道に入ります。この辺りは登り下りがほとんどなく走りどころですが、御嶽駅からここまでの登りで既に足を使い切ってしまっている私は早歩き程度のスピードしか出せません。

大塚山の山頂を踏んでから山上集落に戻ると、懐かしい神代欅がまだ健在な姿を見せていました。日本武尊が東征時にこの山に登って甲冑を納めたときに既にあった欅だとされているので、話の通りなら樹齢1700年……などと計算している余裕はなく、この欅の前の怒濤の急坂を登って武蔵御嶽神社の手前から長尾平方面に進みました。

天狗岩まで来てみると鎖頼りで岩の上に登っているハイカーの姿もありましたが、ここはパス。岩の右手の石段を下ったところから振り返って見上げると、名前の由来になったと思われる岩塔が屹立しているのが見られます。このようにあれこれ観察したり写真を撮ったりは、トレラン大会に参加して走っているときにはできないことです。

ロックガーデンあたりはハイカーの姿が目立ち、ところどころで抜かさせてもらって先を急ぐと、やがてそのどん詰まりの綾広の滝に行き当たります。ここは両岸が迫った地形の中で一際顕著な段差が滝になっている場所で、滝そのものもさることながらその手前の左岸に迫る大岩が威圧的で、御岳山の「力」のようなものを感じます。

芥場峠から切り返して岩がちの尾根をひとしきり登り、最高点の鍋割山をさくっと通過。

いったん下って長尾平に通じる巻き道を右に分けて奥の院の山頂を目指す道に入ると、すぐに小祠が立つ奥の院に到着しました。ふと思い出すとケーブルカー御岳山駅の展望台からここまで一度も休憩をとっていないのですが、ここまで来れば武蔵御嶽神社まで歩き通そうと考えて先を急ぐことにしました。

奥の院からの下りは急で悪く、思ったほどスピードが上がりません。確かトレランのコースは奥の院の手前から滑りやすい斜面を急降下していたはずで、そのときは「なぜこんなに危ない道を下らせるのか」と不思議に思った(実際に滑落して怪我をするランナーも出ていた)ものですが、こちらの道を実際に歩いてみると確かにこの道をトレランのコースにするのは無理だと納得しました。

長尾平分岐の手前でやっと穏やかな道に戻ると、そこから一応のゴールである武蔵御嶽神社まではほんのわずかです。無事にここまで来られたことを神様に感謝し、今年一年の安全を願って御守りを購入しました。

門前の千本屋さんでこの店の名物らしいディアーカレー(鹿肉がごろごろ……とまではいかず「ころころ」くらい)を食して落ち着いたところで、せっかくなのでこのまま御嶽駅まで歩いて下ることにしました。

歩き出す前は、トレランシューズやCW-Xにモノを言わせて多少なりとも頑張って走ろうと思っていたのですが、実際には雨の翌日でぬかるんでいるところもあるし、一般ハイカーがいれば徐行しなければならないし、写真もばしばし撮るし(←はい、ここまですべて言い訳です)、そもそも走る練習はほとんどしていないしで大半は早歩き程度に終始。その結果、最速時には2時間6分で走り通していたレース区間をこの日はなんと3時間30分もかかってしまいました。これにはさすがにがっくりですが、それでも行きと帰りのバス区間(御嶽駅〜ケーブルカー下)も歩いて歩行距離を付け加えたことによって、それなりに充実したハイキングになったと考えることにしました。

さて、新型コロナウイルス対策としてのまん延防止措置期間は明日(3月21日)で終了となり、その後は都県境を越えることが可能。1月下旬からじっと我慢で東京都内の山歩きやボルダリングに終始していた私も、やっとこの軛から解き放たれるわけです。既に冬は終わってしまっていますが、それでも次の週末こそは雪や氷を求めて遠出をしたいと思っているところです。

参道に見られた古い地名とその由来は次の通り。

滝本の大スギ
樹勢は旺盛で、幹回り約6.3メートル、樹高は約43メートルもあり、都内では有数の巨木である。幹や枝が天に向かって伸び、荘厳さを感じさせる。ケーブルカーが開通するまで、徒歩で御嶽神社に向う参拝者は禊橋を渡ったこの場所で休息し、気持ちを新たにしてから、御嶽神社に向かったと伝えられる。
ろくろっ首
「ろくろ」は、細長い首が、左右に曲がっている、若い女性のお化けである。この付近の坂道は急で、左右に蛇行している。まるでお化けの「ろくろ」の首のように、曲がりくねっていることから、いつしか付近を「ろくろっ首」と呼ぶようになったと伝えられる。
うまたてば
「たてば」は休息所である。参道は坂道が続くため、かつては数か所で、馬や駕籠を休ませながら、山上へ進んでいた。「ろくろっ首」付近は、特に急な坂道である。上がり終わった「たてば」で、人はもちろんのこと、馬も思い荷物を下ろして一休みし、元気を取り戻してから、山上へ向かっていた。
おおまがり
「うまたてば」を過ぎ、この付近まで来ると、参道は緩やかな勾配となるため、坂道の曲がり具合も、大らかな曲がりとなる。急な坂道を進んでいると、先を歩いている人が「おおまがりに着いたヨ」と言えば、後ろからついて来る人たちは、「楽になれる」と安堵感を持ったと伝えられる。
なかみせ
参道入口の禊橋と山上にある御師集落との、ほぼ中間の場所である。禊橋から約30分の距離で、付近は緩やかな坂道であることから、一休みをするには、都合が良い場所であった。かつては、小さな茶店も建っていたため、いつしか付近は「仲見世」と呼ばれるようになった。
だんごどう
かつて団子堂と言う御堂があり、地蔵様(八大地蔵)が祀られていたと伝えられる。地蔵様が困らないよう、地蔵様の膝下には、参拝する人たちが、団子をお供えしたことから、いつしか団子堂と称されるようになったと伝えられる。現在も祠があり、新しい地蔵様が道中の安全を願っている。
じゅうやっくぼ
「じゅうやく」は漢字で書くと「十薬」「重薬」で、薬草のドクダミの別名である。「くぼ」は窪地である。この谷間には、薬として利用できるドクダミが、たくさん自生している場所であったことから、いつしか「十薬窪」と呼ばれるようになったと伝えられる。
だいこくのお
漢字では「大黒の尾」と書く。禊橋を渡った場所からここまで、急な坂道が多かった。ここでは尾根を横切り、ここから先は勾配が緩やかな参道となることから、気を楽にして歩けるようになったのは、「大黒様のおかげ」と感謝の意を込め、大黒様の尾根と称されるようになったと伝えられる。
あんまがえし
「あんま」さんは、現在の整体師である。かつては視力が弱い人たちの多くが就業していた。視力に恵まれなかったため、ほとんど平坦なこの付近を、御嶽神社の境内と間違え、付近で参拝してから引き返した「あんまさん」がいたとも伝えられる。このことから、いつしか付近を「あんまがえし」と呼ばれるようになったと伝えらるママ
やまのかみ
禊橋を渡ったこの参道は、北側から御嶽神社に向う参道なので、北御坂と呼ばれている。山ノ神は、山に宿り、そこに棲むすべての生物を支配する、神霊の総称である。往来する人たちは、山地内での安全を、山ノ神に祈願する。
くろもん
江戸時代、それぞれの集落(街)の出入口には、夜間、外部からの訪問者を防ぐため、「黒門」が設けられ、番人が見張っていた。この場所は山上の御師集落の出入口にあたるため、黒門が置かれていたと伝えられる。しかしながら、番人がいたかどうかについては、不明である。