塾長の山行記録

男山ダイレクト

日程:2021/10/14

概要:信濃川上駅近くに聳える男山のマルチピッチルート「男山ダイレクト」(3ピッチ・最高ピッチグレードIV+)を登る。

分類:関東周辺 / マルチピッチ

山頂:---

同行:ヨーコさん

ハイライトシーン

▲男山山頂部。男山ダイレクトはスカイライン左側の傾斜が強い部分。(2021/10/14撮影)

この日は、昨年の秋に登った天狗山ダイレクトに続き佐藤勇介ガイドが2010年に開拓した男山ダイレクトをヨーコさんに組んでもらって登ります。無雪期はもっぱらスポートクライミングのヨーコさんと沢登りが多くなる私との共通項は冬のアイスクライミング。そろそろ冬に向けて呼吸合わせの機会を持とうという目論見をもって、易しいマルチピッチであるこのルートをチョイスしました。

2021/10/14

△09:40 男山登山口 △10:40 分岐 △12:00-30 取付 △13:45-14:05 終了点 △14:20-35 男山 △15:00 林道終点 △15:15 分岐 △16:00 男山登山口

韮崎駅前8時過ぎにヨーコさんと合流し、互いの近況報告を行いながら小川山へ向かう道を走ること1時間余り、行く手に男山から天狗山に連なる山の姿が見えてきましたが、目下のところはもくもくと白い雲も覆われて山頂は見えません。しかしこの日の天気予報は良好なので、登っているうちに雲はとれるだろうと楽観視しています。

いったん信濃川上駅に立ち寄って、すこぶる綺麗なトイレを拝借してから男山登山口を目指しました。本来であれば駅前から700m東で千曲川に架かる男橋を渡るのですが、工事中のために通れないのでさらに1本東の橋を渡ってアプローチ。男山登山口の近くには明確な駐車スペースがあるわけではないものの、道路が膨らんだところがあってここに数台駐車可能です(ここがダメなら信濃川上駅の脇に村営駐車場あり)。

猪除けらしい柵を開いて林道に入ると、つづら折れで高度を上げてから切り通しで尾根をまたぎ越します。

またいだ後の道はほぼ平坦で歩きやすく、やがて送電鉄塔があって開けたところから目論見通りに雲のとれた男山山頂部を眺めることができました。この道には分岐がところどころにありますが、手元のGPSで見当をつけて途中で左へと林道の本線を離れます。

道はすぐに草に覆われてわかりにくくなり、適当に進んで小沢を渡ってから対岸の尾根を目指します。このあたりは道がわかりにくいところですが、そもそもこれという道があるわけではないので、男山山頂に向かう尾根に乗ることだけを心掛ければ問題ありません。

登るにつれて踏み跡が収斂してきて楽に歩けるようになり、さらに林業用のワイヤーの残骸が併走してよい目印になってくれます。やがて傾斜がいったん緩んで平坦になったところが標高1,620m強で、ここから左へ踏み跡を辿ってトラバース。1本隣の尾根に出るところは傾斜が緩いので、適当に歩いていても大丈夫です。

乗り移った尾根を山頂方向へ向かうと露岩がいくつか出てきますが、やがて「これは!」と思うような大岩が出てきます。これ自体は岩に乾いた苔が貼りついた状態で登攀対象になっていないことは明らかですが、ここでちょっと迷うことになりました。

ルートを開拓した佐藤勇介ガイドのトポ(ブログ)によればこれを右から巻いて越えるとあるので大岩の右に回り込みそのままトラバースを続けたところ、踏み跡はすぐに下り気味になり、そしてこの高さにも関わらず滝を落としている沢筋に行く手を阻まれました。

これは失敗した……と引き返すと、そのまま自然に大岩の一段上に出てしまいました。そして振り返るとすぐそこにさらに上へ続く踏み跡あり。なるほど「巻いて越える」というより「巻き上がる」ということだったのかと納得して尾根筋を登ると、すぐにはっきりそれとわかる第一岩稜に突き当たりました。

もっともこの第一岩稜の正面は強傾斜の上に水が染み出していて、とても登れそうにはありません。そこで右に回り込んでみると、日に照らされて岩が乾いた状態の凹角が現れました。ここだ!と喜んで、ここで登攀準備を行うことにしました。

1ピッチ目(III):ヨーコさんのリード。何ということもなくするするとロープを伸ばし、途中の岩角と松の木とでランナーをとって40mほどでピッチを切りました。しかし、後続してみるとガバと言えるホールドは意外に少なく、どちらかと言えば外傾気味で使いにくいものばかり。自分としては全3ピッチの中でここが一番嫌らしく感じることになりました。

ピッチを切ったところから先はいったん傾斜が落ち灌木も生えているのでセカンドの私がロープを引きずりながら先行すると、すぐに第二岩稜にぶつかります。

2ピッチ目(III):私のリード。ラインはいく通りか選べそうですが、私は出だしからトラバース気味に右上し、傾斜の緩んだところで切り返して左上、その後リッジ上を上へ向かうことにしました。

ランナーはトラバースの途中のスラブ状に残置ピンがひとつあり、さらに切り返して登ったところに格好のクラックがあってリンクカム(黄)ががっちり決まりました。ホールドも豊富で登りやすく、気分よく登っていったん安定したところの太い木に古いスリングが巻かれていたのでそこでピッチを切ろうかと思ったのですが、確認してみるとロープはまだ半分も出ていないとのこと。それならと見上げた壁をもう一段登ることにしました。

結局ここもロープを40m伸ばして木の幹にスリングを巻いてピッチを切り、またしても歩き。今度はヨーコさんに先行してもらいます。するとすぐに出てきたのが第三岩稜で、ここは出だしの5mが今までとは異なる強傾斜になっています。

3ピッチ目(IV+):私のリード。オブザベーションしてみると最初の壁の途中と最上部の二カ所に残置ピンがあり、ホールドもそこそこ豊富で登りやすそう。実際に取り付いてみると、さすがにIV級だけあって少々手順を考えなければならないところはあり、ホールドも不用意に全体重をかけるわけにはいかないので慎重に足の置き所を探す必要はありましたが、残置ピンの安心感もあってゆっくり手足の置き所を確かめながら登り壁の上に立つことができました。

そこから先は傾斜が緩んで登りやすくなり、10m余り登ったところの木の幹にまたしても古いスリングの残骸が巻かれているところで終了としました。

ヨーコさんを迎え入れて、これで登攀終了。ロープを畳みギアを片付け、アプローチシューズに履き替えて山頂を目指します。ただし万一に備えてヘルメットとハーネスは付けたまま、ロープもザックの一番上に入れていつでも取り出せるようにはしておきました(が、結局ロープの出番はありませんでした)。

山頂まではすっきりした岩稜が続いており、部分的に左右が切れ落ちた箇所(II〜III)もありましたが、丁寧に登っていけば何ら問題なし。

誰もいない男山山頂に到着し、ここでヨーコさんと握手を交わしました。振り返ると歩いてきたリッジが見えましたが、男山ダイレクトはあの向こう側なので山頂からは見ることができません。

小広い山頂からは八ヶ岳の眺めがとりわけ良いそうなのですが、あいにくこの日の八ヶ岳は雲に覆われて姿を見せてはくれませんでした。それでも一仕事終えた満足感に浸りながら行動食をとり、十分休息したところで下山開始です。

登山道は最初に天狗山方向へロープもフィックスされた滑りやすい急下降となり、やがて分岐を御所平方向へ折れてさらに急坂の下り。しかし山頂から標高差にして280m下るとそこに林道の終点があって、ここからは平坦な歩きやすい道を男山登山口へだらだらと歩くだけでした。


この「男山ダイレクト」は2時間のアプローチの後に簡単な3ピッチで終わるので、はっきり言ってコスパはおそろしく悪いですが、なにせ外岩でクライミングシューズを履くのは今年これが最初なので、まずはここから。つまり私にしてみれば岩登りのリハビリを兼ねてもいたのですが、なんだかこのところあらゆる山行が「リハビリ」と化している感じです。果たして巡航高度に戻る日は来るのか?

とにかく、この山行が今年最後の岩登りということにならないようにしたいものです。