湯川
日程:2021/10/16-17
概要:安達太良山東面の塩沢登山口から登り馬返し分岐付近で湯川に入渓。八幡滝で遡行をいったん終えてくろがね小屋に向かい泊。翌日八幡滝に戻り、霧降の滝まで往復してから塩沢登山口へ下山。
⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:---
同行:トモミさん
山行寸描
10月中下旬の安達太良山は紅葉の名所。その東面に流下する湯川は見栄えのする滝をいくつもかけながら技術的には易しく、紅葉狩りを兼ねた気楽な遡行にはうってつけとされています。ただし東京方面から公共交通機関を使ってアプローチするならくろがね小屋泊を組み合わせたくなりますが、この時期のくろがね小屋の予約は受付を開始するゴールデンウィーク明けに早めに手を打たないとすぐいっぱいになってしまうので、我々もずいぶん前から日程を合わせて宿泊の権利をゲットしました。こうなると紅葉の最盛期に当たれるかどうかは運次第、おまけに天気も運次第で、案の定ものの見事にこの週末だけが雨天という不幸な巡り合わせに当たってしまったのですが、天気予報をぎりぎりまで睨み、代替案も考慮した末に、多少の雨は我慢しようと計画を実行に移したのでした。
2021/10/16
△11:05 塩沢登山口 → △11:20 馬返し分岐 → △11:25-50 入渓点 → △12:45-55 5m滝 → △14:10-25 三階滝 → △15:00 相恋の滝 → △15:10-20 八幡滝 → △14:20 くろがね小屋
トモミさんの自宅から始発でアクセスしても二本松駅到着は10時ちょうど。10時10分に二本松駅入口(二本松駅前ではない点に注意)を通過するバスに乗って塩沢登山口に降り立ったときは雨がそぼ降る天気でした。
11時をピークに雨はおさまるはずだという天気予報を信じ、傘をさしたまま登山道に入ったのですが、なにせ道はドロドロの泥田状態。こんなことなら出だしから沢靴に履き替えておくのだったと後悔しましたが後の祭りです。
馬返し分岐を右に折れて僧悟台へ通じる登山道が湯川を渡るところで沢装備に切り替え、ここから入渓しました。しばらくはこれと言った見どころのない河原が続きますが、幸いなことにさほど増水してはいないようで、遡行自体はおおむね順調に進みました。
入渓してから1時間弱、ようやく最初のイベントである5m滝に到着しました。この滝は左端が階段状で容易に越えられますが、トモミさんはクライミング技術を駆使する山行が久しぶりなので、ここから先、不確定要素を伴う滝はすべてロープを結んで私が確保することとしました。
5m滝を越えて少し進むと釜のある滝。左から容易に越えられそうですが、岩が濡れている上に落ち葉がスリップを招きそうなのでここも確保。時間はかかっても安全第一がモットーです。
その代わり、続いて出てくる三階滝の登攀は時間短縮のために諦めざるを得ません。少なくとも下段は左壁を左下から右上するラインが階段状で、トモミさんもこれなら登れるという見立てだったようですが、潔く左(右岸)を少し登ったところに出てくる登山道を辿って落ち口近くに上がりました。
こちらは中段の滝。登るなら右壁ですが、トラバース気味になるので確実に振られを止められるランナーがとれないと少々危険そう。もとより我々はここも左から巻きです。
上段の滝。これも登るなら右壁ですが、見たところこれは歯応えがありそうです。まぁ、登るならという目線は横に置いて純粋に滝見という観点で見ても、これら3段の滝の連なりは見応えがあり楽しいところでした。
三階滝の先にもちょっとした滝が出てきます。釜を持つこの滝は右(左岸)の外傾した岩の上をそろそろと進んで落ち口近くに滑り降りて突破。
さらに連なる釜持ちの滝二つは、手前を腰まで水につかって越え、奥は左(右岸)に渡ってスリップに注意しながら落ち口へ。これらの滝を越えると右岸に顕著な崖が現れますが、これはどうやら屏風岩の足元である模様です。
岩壁の基部を左へ回り込んだ沢筋が右に折れると2段になった立派な滝が出てきて、これが屏風岩の上からも見える相恋の滝です。下段2mはなんということもなく越えて、続く8m滝は一見したところ右壁が簡単そうですが、水に濡れずにそこに取り付くには小さく巻かなければならない様子。どうせ巻くのなら、と滝を丸ごと右から巻いてしまうことにしました。
相恋の滝を過ぎるとすぐに右から本流に合わさる八幡滝が出てきました。多くのパーティーはここから八幡滝を越えて霧降の滝まで足を伸ばしているのですが、この時点で時刻は既に15時を回っているので、この日の遡行はここで終了することにしました。
八幡滝の正面まで降りてきている登山道に乗ったところでギア類を片付け、足回りはそのままに登山道をくろがね小屋目指して歩きます。途中、地図の記載と実際の道の付き方が合わないところがあって道迷いをしかけたりしながら、それでもどうにか車が通れる広い登山道に出て小屋を目指してがんばりました。
くろがね小屋到着は16時20分。小屋の方は我々の到着が遅いので心配してくださっていたそうで、大変申し訳ないことをしました。それでも温かく迎えていただいて、与えられた部屋に荷物を置いたらただちに入浴。熱いお湯にゆっくりつかって身体を温め、そしてカレー(おかわり自由)の夕食の後は部屋に戻ってトモミさん持参のお菓子をつまみながら翌日に向けた作戦会議です。ここでは、
- 勢至平を通って奥岳登山口に下る
- 八幡滝に戻ってこの日やり残した霧降の滝往復を実行する
の二案が検討されたのですが、折しも強風予報が出ていることを材料に「勢至平は吹きさらしですよ」という私の脅し文句が奏功し(?)、霧降の滝を往復する案に決したのでした。
2021/10/17
△07:35 くろがね小屋 → △08:45-09:05 八幡滝 → △09:20 中の滝 → △09:45-55 霧降の滝 → △10:35-11:00 八幡滝 → △11:10-15 屏風岩 → △12:00 馬返し分岐 → △12:15 塩沢登山口 → △12:30 青木荘
6時朝食。やはりこの天候のせいか宿泊客は我々を含めても10人程度でしたが、それぞれ順次出発して我々が最後になりました。
外に出てみると相変わらずの雨(しかもはっきりと)ですが、霧がとれて見通しは昨日より良くなっていました。紅葉の様子はご覧の通りで、小屋の方の話によれば湯川あたりは1週間後がベストだろうとのこと。うーん、やはり最盛期を外してしまったか。しかし、週明けから最低気温が氷点下まで下がる日が続くようで、1週間後の週末が沢登りに適した気候かどうかは定かではなさそうです。
どんより曇った空、これもまた安達太良山の「ほんとの空」。登山道を少し下ったところからくろがね小屋を振り返り、1週間後の錦繍の安達太良山を想像してみてから、この日の最初の目的地である八幡滝に向かいました。
八幡滝はそこそこ高さがありますが、滝の右側に行くと傾斜が緩く、かつ階段状になっているので難なく登ることができます……というのは岩が乾いているときの話で、実際に登ってみると濡れた岩が滑りやすく少々神経を使いました。
八幡滝の上は長いナメ滝になりますが、ここもまかり間違ってスリップすると八幡滝の下まで一直線に落ちることになりそうなので、不用意な歩き方はできません。いったんは各自フリーで登っていましたが、これはリスキーだとすぐに考えを改めてロープを結び私が先行することにしました。
やがて出てくるボリュームのある滝は中の滝。右からでも左からでも登れそうですが、我々は右の笹藪とのコンタクトラインを登りました。
中の滝の上に出ると若干細くなったナメ滝が続いていますが、その左岸に鎖が続いていて、かつてここが登山道として認識されていたことがわかります(現在は廃道)。
ナメ滝の行き着いた先に、いよいよ霧降の滝が現れました。これは大きい!そして降り注ぐ飛沫はそのまま霧と化して周囲を覆っているように見えます。仮に登るなら手掛かり・足掛かりが豊富そうな右壁だろうと思いますが、もちろん我々は見上げただけで目的達成。ひとしきり写真を撮影してから、引き返すことにしました。
中の滝の上のナメ滝は笹藪と鎖とを使ってそのまま下り、中の滝は左岸を巻き下る旧登山道が使えました。そして下のナメ滝に降り着いたときにはここが難所になるだろうと思っていたのですが、登りのときに少々腰が引け気味だったトモミさんはここまでの登り下りで度胸がついたのかしっかりした足取りでナメ滝の左端を下っていきます。設置されている鎖をピッチを切る際の支点としても使いながら下降を続け、無事に八幡滝の下に降り立つことができました。
これで湯川の遡行は終了。登山道を下り、途中で屏風岩の上に立って相恋の滝を見下ろしたり周囲の樹林の中に紅葉の気配を探したりしましたが、この頃から雨が上がり天気が好転してきました。
最後はまたしても泥田の登山道を歩き続け、塩沢登山口に到着。トモミさん、お疲れさまでした。よく頑張りました。
あらかじめくろがね小屋で教えてもらっていた通り、塩沢登山口から徒歩15分ほどの青木荘を訪れて日帰り入浴をし、衣類をすべて乾いたものに着替えてすっきりさっぱり。施設はやや古めですが、透明な熱い湯が気持ちの良い風呂に満足しました。
さらに近くの渓谷入口停留所でバスを待っていたところ、たまたま通りがかった青木荘のご主人が車に乗せてくださったばかりか、二本松駅に向かう途中で展望台に立ち寄って雲の下に全貌を現した安達太良山の姿を見せてくださいました。ありがとうございました。