赤岳

日程:2013/03/23-24

概要:初日は赤岳鉱泉のアイスキャンディでアイスクライミングの練習。2日目に文三郎尾根から赤岳に登頂し、地蔵尾根を下降してそのまま下山。

山頂:赤岳 2899m

同行:さとし&よっこ夫妻 / スミヨさん

山行寸描

▲アイスキャンディでのアイスクライミング練習。日の当たる西面の大半が使えなくなっていたため、使える面にはスダレのようにロープが下がっていた。(2013/03/23撮影)
▲赤岳登頂。ほぼ初アイゼン山行のスミヨさんもよく頑張った。(2013/03/24撮影)

この週末は谷川岳一ノ倉沢へ入る予定でしたが、3月に入ってから気温が高い日が続いているせいで、とうとう22日から「谷川岳遭難防止条例に基づく危険地区への登山禁止」期間に入ってしまいました。そこで月末に予定していた赤岳山行の繰上げをさとし&よっこ夫妻とスミヨさんに打診した結果、中2日で再び八ヶ岳に入ることになりました。

2013/03/23

△10:20 美濃戸口 → △11:15 美濃戸 → △12:55 赤岳鉱泉

早朝に都内を発った「赤い彗星」ことツジタ号は、十分に早い時刻に美濃戸口に到着しました。ここからのんびりと赤岳鉱泉を目指すのがこの日の行程です。

美濃戸口から美濃戸までの間には、涙なくしては見られないセキネ遺跡が2カ所。いずれも3日前にセキネ号の前輪がはまって痛い目にあった場所ですが、このわずかの日にちの間にも雪の状態が変わっており、今日ならFF車でも問題なく通過できそうに見えました。さらに第2遺跡=やまのこ村手前の後輪が路肩から落ちかけてセキネくんが顔を青くした場所では、よっこさんが崖下を一瞥してこうご託宣。

yo「ここなら落ちても死なないね」
私「……」

通い慣れた赤岳鉱泉への道は、やはりこの冬の多雪を反映してこの時期としては雪が深い感じですが、道はしっかり踏まれていて何の問題もなく歩くことができました。あっという間に着いた赤岳鉱泉ではあらかじめ予約してあった個室に炬燵もついていてついのんびりしたくなりますが、実は、私にとっての今回の山行でのメインイベントは翌日の赤岳ではなくこの日のアイスキャンディでのアイスクライミング。早々に身支度を整えて屋外に繰り出しました。

赤岳鉱泉への到着直前に見たところではアイスキャンディは空いていそうに思えたのですが、それは西面の氷の状態が悪く使用禁止になっていたためで、残された半分余りの氷壁にはスダレの如くにロープが下がっており、途方に暮れかけました。それでもなんとか空きスペースを見つけてさとし氏がトップロープをセットし、さらに隣のパーティーが「空いているときは自分たちのセット済みトップロープを使っていいですよ」と言ってくださった(ありがとうございました!)ので、切れ込んだオープンブック状の場所とオーソドックスな垂壁の2カ所で練習することができました。さとし&よっこ夫妻は1月の岩根山荘に続き先週末も赤岳鉱泉に来ていてこれが3度目、スミヨさんは2度目のアイスクライミングで、青空の下の氷壁登りはとにかく楽しく、また私も含めてそれぞれにテクニックの確認と向上を果たせたのではないかと思います。

今宵のディナーはゴージャスなステーキで、ビールと日本酒とをいただきながらおいしく食事を終え、その後は個室に戻って炬燵でぬくぬくしながら焼酎で軽く宴会としました。21時には就寝してすぐに寝付きましたが、私、イビキをかいていなかったでしょうか?

2013/03/24

△06:15 赤岳鉱泉 → △06:35-55 行者小屋 → △08:35-50 赤岳 → △10:15-55 行者小屋 → △12:05-15 美濃戸 → △12:55 美濃戸口

朝食は6時からとなっていましたが、この日は遅くなるほど天気が悪くなるという予報だったので、朝食を弁当に変えて前夜のうちに受け取っていました。起床後、布団を押し入れに片付けて炬燵を引っ張り出し、食堂で水筒にもらった温かいお茶(1人200円)と共に弁当を食べてから、朝食待ちの行列をかき分けるようにして外に出ました。

早朝は何となく空が白っぽい感じでしたが、西の方には青い空も見えているので一安心。中山乗越を越えて行者小屋に達し、ここにロープやストックなどの不要なものをデポすることにしましたが、ふと見ると行者小屋から西の方にくっきりと北アルプス、それも大キレットが見えています。ここから槍ヶ岳や穂高岳がこれほど明瞭に見えたという経験はこれまでなく、空気の澄み具合や日の当たり具合などの条件が揃ったためにこうなったのだと思いますが、それにしてもびっくりしました。

さて、多少荷を軽くしていよいよ赤岳へ向かいます。文三郎尾根を登って赤岳に登頂し、地蔵尾根を下って行者小屋へ戻ってくるというのがこの日のプランですが、我々の前方には女性ガイドに引率されているらしい5人ほどのパーティーがおり、さらにいずれも単独行の男性複数もちらほら。よく踏まれた道を進んで尾根筋の登りに差し掛かりましたが、まだ樹林帯を抜けきっていないあたりで先頭を行くスミヨさんのペースがめっきり落ちてしまいました。聞けばぎっくり腰の後遺症で腰の痛みを感じているそうで、一瞬「敗退」の2文字が心に浮かびましたが、大丈夫です登りますとスミヨさんが自分を鼓舞してくれました。

文三郎尾根が右に折れるあたりからは左手に赤岳西壁主稜の取付が間近に見えており、何パーティーかが既に取り付いているのも見てとれました。この頃になると気象条件ははっきり良くなってきており、快適なクライミングを約束された彼らの姿をうらやましく眺めましたが、我々が赤岳と中岳・阿弥陀岳を結ぶ尾根筋上の分岐に達すると冬山らしい強風の洗礼を受けるようになり、ここからは風と氷と岩に気を使いながらの登りとなりました。

この日もGoPro HERO3を持参しており、専用チェストマウントハーネスに装着して撮影してみましたが、なかなかいい感じです。

行者小屋前から1時間40分で全員が無事に赤岳山頂に到着すると、そこからは360度遮るもののない素晴らしい展望が得られました。遠く西には北アルプス、御嶽山、中央アルプス、南アルプス。南には富士山、東には奥秩父の山々。よく見れば北アルプスの右手=北の方には妙高山や火打山などの頸城の山々、そしてその右手には浅間山。もちろんそれらの手前には、権現岳や阿弥陀岳や横岳といった八ヶ岳の山々も控えています。それらを見下ろす八ヶ岳最高峰の山頂で思う存分展望を堪能したら、名残を惜しみつつ下山にかかりました。

赤岳から展望荘方面の下りもそこそこ急で気を使いますが、雪はしっかり締まっていてアイゼンがよく利いてくれました。前方を見ると一列に連なった色とりどりの登山者が地蔵尾根上に渋滞に近い行列を作っているところでしたが、どうやら全て登り方向らしく、彼らが登りきった後ならスムーズに下れそうです。

地蔵ノ頭からは予想通り前後に人のいない、我々だけの下りになりました。最初の岩がちのところはスミヨさんを先頭に下りましたが、途中急な雪稜下降となるところからは私が先頭に立ち、先ほどの行列パーティーがつけてくれている階段状の踏み跡を辿って慎重に高度を下げていきました。長い急な下りをこなして樹林帯に入ればもう安心なので下部で尻セードも試してみましたが、雪面が堅くて速度のコントロールが難しく、樹木に激突しないようにするためには滑落停止動作を駆使する必要がありました。

行者小屋に帰り着いたら完全に安全地帯です。特にスミヨさんは初アイゼンだったにもかかわらず落ち着いた登りと下りで、これなら一般道であれば自力でどこにでも行けそう。1週間前のアイゼントレーニングの効果があったのだと思います。さとし氏たちの方も、もう次は冬季アルパインに行くしかありませんね。

……とは言うものの八ヶ岳の雪山シーズンはもうほぼ終わりです。行者小屋でデポ品を回収し、少し下ったところから振り返って、今年も何度か遊ばせてくれた八ヶ岳を仰いで御礼と別れを告げ、後は一目散に美濃戸口を目指しました。