八ヶ岳全山縦走〔敗退〕

日程:2006/11/04

概要:蓼科山から南下する八ヶ岳全山縦走を目指したが、中山峠までの北八ヶ岳縦走で終わる。

山頂:蓼科山 2,531m / 双子山 2,224m / 北横岳 2,473m / 縞枯山 2,402m / 茶臼山 2,384m / 丸山 2,330m / 中山 2,496m

同行:---

山行寸描

▲北横岳山頂からの蓼科山。遠いような近いような不思議な距離感。(2006/11/04撮影)
▲縞枯山と茶臼山の間から望む南八ヶ岳の峰々。こちらははっきり言って遠過ぎる。(2006/11/04撮影)
▲中山峠手前から見た天狗岳。予想外の雪に縦走継続を断念。(2006/11/04撮影)

一昨年頃から、八ヶ岳のワンデイ縦走に取り組んでみたいと考えていました。北は蓼科山からスタートし、八ヶ岳の主脈を北から南へ縦断して小淵沢へ抜ける長大なルート。日の長い6月がベストだろうと機会を窺っていたものの、諸々の都合や気象条件が合わず今年も空しく見送っていたのですが、考えてみれば前半の北八ヶ岳は夜間歩行でも特に問題はないはず。ならば、ちょうど予定が何も入っていない11月上旬の三連休が月齢も頃合いで好都合だろうと狙いを定めたのですが……。

2006/11/04

△00:15 蓼科山登山口 → △01:50 蓼科山 → △03:10 大河原峠 → △03:55 双子池 → △06:20 北横岳 → △06:30-40 北横岳ヒュッテ → △08:10 雨池峠 → △13:25 縞枯山 → △09:45-10:00 麦草峠 → △10:55-11:15 高見石小屋 → △12:30 中山峠 → △12:40-45 黒百合ヒュッテ → △14:15 渋の湯

新宿発21時のあずさ35号で茅野に降り立ったのが23時23分。あらかじめ手配してあったタクシーで女乃神茶屋に着いたのが23時55分(お代は9,170円也)。着衣を調節し、ストックを伸ばして山道を歩き始めました。十三夜の月は明るいものの雲が流れていて時折あたりが暗くなりますが、よく整備された登山道はヘッドランプの明かりだけでも普通に歩くことができました。坂道と平坦地を交互に繰り返し、最後はがらがらの岩場をロープに導かれて静まり返った蓼科山頂ヒュッテの前に着き、そこから道を外れてわずかの歩きで山頂標識に達した時点では既にコースタイムを1時間短縮しておりしめしめと思ったのですが、山頂標識の辺りの岩がつるつるでシューズ(モントレイル・ハリケーンリッジXCR)が妙に滑る上に、光が当たると水滴のようなものがきらきら光っています。なんと、氷と雪でした。

蓼科山頂からの急な下りも恐怖でした。こちらにははっきりと雪が残っており、岩の上に下手に足を置くと根こそぎ持っていかれそうになります。なんとかかんとか将軍平に降り立ち、平坦な道を急いで大河原峠、さらに冷たいガスに巻かれながら双子山を越えて双子池。それでも気温は氷点下までは下がっておらず、案外暖かいのが助かりました。

八ヶ岳をランの対象とする場合、将軍平から天祥寺原に下りて亀甲池から北横岳に登るショートカットコースをとるのが一般的であるようですが、今回のプランでは山ヤのこだわりでぐるりと大迂回する双子山経由のルートにしました。しかし双子池から北横岳までを歩いてみて、なぜランナーがここをショートカットするのかがよく理解できました。まず大岳までの道が非常にわかりにくく、樹林帯の中に岩がごろごろした不明瞭な道はところどころのペンキマークを見落とすと途端に行き詰まってしまいます。そして大岳から北横岳までの標高差のない道も、火山らしい大きな岩塊の積み重なりを微妙なバランスやフリクションで渡っていく箇所が多く、まったくスピードを出せません。おまけに、ここでもシューズが滑る!やはり11月にしたのは失敗だったか?と、この時点で心の中に暗雲が広がりました。

北横岳のほんの少し手前で御来光を迎え、見晴らしの良い北峰からは押し寄せるガスの上に蓼科山が頭を覗かせているのが見えました。すぐ近くの南峰から目指す南八ヶ岳の秀峰群がオレンジ色に染まる様子を眺めてから、下り着いた北横岳ヒュッテの前のベンチでこの日初めての小休止とし、持参のおにぎりとみかんで朝食にしました。この小屋には昔一度泊まったことがあり、山歩きから切り離して単に泊まりにくるだけでも楽しいところですが、今日は時間にゆとりのない身、小屋には立ち寄らずに先を急ぎました。ここから三ツ岳の間も大岳〜北横岳間と同じ岩石帯で、スピードが上がらない……というか、一般縦走路にしてはけっこう難しいと感じます。

雨池峠に降り立つあたりから他の登山者とすれ違うようになり、ガスもとれて青空が広がってきました。これで雪が消え、岩が乾いてくれれば後半スピードアップできるかもしれないと期待を持ちましたが、縞枯山、茶臼山と緩やかなアップダウンを重ねた先の見晴らしの良い場所から眺めた南八ヶ岳は「まだあんなに先なのか?」とがっくりくるほど遠くに見えました。

R299が横切る明るい麦草峠の麦草ヒュッテに立ち寄り、甘酒を注文しながら受付のお兄さんに話を聞いてみると、この辺りの雪は2日前の昼に降ったもので、天狗岳には「積もって」いるようです。これを聞いて、心の中の暗雲が遠い雷鳴を響かせ始めました。

麦草峠からだらだらと登って下ってまた登って丸山、下って高見石(お手洗いを拝借)、まただらだらと登って中山、そして中山峠への下り。この辺りは似たような登りと下りが続きますが、オオシラビソの林の中に日の光が射し込み、足元の柔らかい苔や幼木を照らしているのがきれいです。しかしだんだん疲労がたまってきました。時間の経過も不安要素で、遅くとも正午には夏沢峠に達していたかったのですがこれではまったく無理そうです。

中山峠の手前のビューポイントから天狗岳の斜面や登山道に広範に雪が残っているのを見たとき、ついに敗退を決意しました。この雪が天狗岳から先、南八ヶ岳の秀峰群に同様についているとするとトレランシューズでは勝負にならないし、夜間歩行になれば融けた雪が氷になって危険がさらに増してきます。それにあまり認めたくないことではありますが、体力的にもかなり厳しいものを感じているのは事実で、仮に縦走路の状態が良かったとしても、どこかで力尽き、ツェルトをかぶってビバークということになりそうです。ツェルトとダウンのインナーを持参してはいますが、今回は潔く戦術ミスと脚力不足を認めることにしました。

撤退するとなれば無駄に宿泊費をかけたくはないので、さっさと下り、その日のうちに帰京することにしました。黒百合ヒュッテでバスの時刻表を見たところ、渋の湯から茅野へ向かう日に3便しかないバスの最終便がちょうど2時間後に出る予定ですが、渋の湯までのコースタイムは1時間45分です。なんというタイミングのよさ。時間があれば黒百合ヒュッテで食事をとろうと思っていましたが、空きっ腹をなだめてただちに下山を開始しました。


今回は残念な結果に終わりましたが、それなりに面白かったので、来年以降に再挑戦してみたいものです。

ただし、予定外の雪の影響はあったものの根本的な部分で体力不足・スピード不足があったことは否めません。コースタイムと実際のスピードを見比べてみると以下の通りですが、快調だったのは出だしだけで、双子池から北横岳までの間で道迷いや歩きが慎重になったことから時間を費やしているのが痛く、もっと貯金を増やせるはずの縞枯山〜中山峠間でも時間を稼げていません(コースタイムは昭文社「山と高原地図2006年版」による。実際のタイムには休憩時間を含みません)。

  コースタイム 実際のタイム 短縮率
区間タイム 累計タイム 区間タイム 累計タイム 区間タイム 累計タイム
蓼科山登山口 0:00 0:00 0:00 0:00    
蓼科山 2:30 2:30 1:35 1:35 63.3% 63.3%
将軍平 0:20 2:50 0:35 2:10 175.0% 76.5%
大河原峠 1:00 3:50 0:45 2:55 75.0% 76.1%
双子池 0:50 4:40 0:45 3:40 90.0% 78.6%
北横岳 2:40 7:20 2:25 6:05 90.6% 83.0%
北横岳ヒュッテ 0:10 7:30 0:10 6:15 100.0% 83.3%
雨池峠 2:00 9:30 1:30 7:45 75.0% 81.6%
縞枯山 0:40 10:10 0:25 8:10 62.5% 80.3%
麦草峠 1:40 11:50 1:10 9:20 70.0% 78.9%
高見石 1:05 12:55 0:55 10:15 84.6% 79.4%
中山峠 1:35 14:30 1:15 11:30 78.9% 79.3%

今回の経験を踏まえて次に向けた作戦を考えるとすれば、まずは時期の設定の問題があります。やはり11月の八ヶ岳を軽装で抜けるというのはちょっと無謀で、せめて9月か10月の連休を狙うべきでした(もっとも今年は10月の三連休に北アルプスで死者を出した雪が八ヶ岳にも降ったそうなのですが……)。コースに関しては北横岳の前後はやはりショートカットするのが確実ですが、ここは節を曲げてよいものかどうか要検討です。「歩き」ではなく「走り」の区間を増やすこともポイントで、今回は下りでもほとんど「早歩き」に終始しましたが、それはもっぱらシューズの滑りに腰が引けたせいですから、乾いた気候の下でフリクションの不安を解消できればペースアップは可能でしょう。そしてもちろん、体力!

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