大山
日程:2001/02/04
概要:長靴を履いて、蓑毛からヤビツ峠に上がり大山に登る。下山は不動尻から広沢寺温泉へ。
山頂:大山 1252m
同行:---
山行寸描
昨年12月のアイスクライミングで右足を傷めてからしばらく山に登っていなかったのですが、そろそろリハビリを始めようと行き先を物色しはじめたのが1月下旬。ちょうど関東地方に大雪が降った直後なので丹沢方面もそれなりに楽しかろう、と大山へ行くことにしました。職場の窓からもピラミダルな山容が望める大山に登る道はいくつかありますが、ここでは昔々の丹沢表尾根縦走で懐かしいヤビツ峠から登って、弁天岩のロッククライミングでおなじみの広沢寺温泉方面へ下ることにしました。
2001/02/04
△09:15 蓑毛 → △10:15-30 ヤビツ峠 → △11:35-50 大山 → △13:30 不動尻 → △14:25 広沢寺温泉入口バス停
秦野駅からのバスは無雪期ならヤビツ峠まで登ってくれますが、今は残雪の影響で蓑毛までしか登っていません。バス停からしばらくは舗装路をぺたぺたとスニーカーで登りましたが、すぐに雪が出てきたので、沢を一つ渡ったところで靴を代えることにしました。今回の新兵器は実はゴム長靴です。北岳バットレスに登ったときに黒澤ガイドがバットレス以外のところではずっとゴム長靴で登降していたのを見て、その山靴としての機能に驚きいつか試してみようと思っていたのですが、なかなかこうしたハイキングの機会がなく今日に至っていました。今回私が(靴屋のおやじに勧められるままに)買ったのはブルー地に黄色と黒があしらわれたブーツ風のしゃれたもので、口のところにヒモがついていて水や雪の侵入を防ぐことができるスグレモノ。今日をこいつのデビュー戦としたのでした。
何度か折り返しながら高度を上げるにつれて雪は徐々に深くなってきましたが、ゴム長靴の底のフリクションは期待以上でまったく滑る心配がありません。しかも案外軽いので足がどんどん前に進み、軽アイゼンで武装した先行パーティー群を次々に追い抜いてしまいました。そうこうするうちにヤビツ峠に着きましたが、売店は閉まっておりトイレも凍結のため使えません。ともあれここで軽く行動食を口に入れてから、さらに大山への尾根に取り付きました。
白く雪に覆われた尾根道を登ると、やがて背後に表尾根から塔ノ岳方面の眺めが良くなり、右手下方には伊勢原方面の平地が見えて高度がずいぶん上がっていることに気付きます。さらに何人かを途中で抜かしましたが、抜かされる方はこちらの足元を見て怪訝そうな顔をしています。とうとう、大山方面から来た対向者のおじさんが「(その長靴では)滑るでしょう?」と聞いてきたので、よくぞ聞いてくれました!とばかりに「いえいえ、全然滑らないし軽いし具合がいいですよ」と吹聴しました。
快調なペースで道を進むとやがて右手から道を合わせてすぐに鳥居があらわれ、さらにわずかに登って大山山頂・阿夫利神社に着きました。大山の人文史は天平勝宝4年(752年)良弁僧正(東大寺創建者として有名)が石尊権現と大山寺を開創したことに始まり、雨乞いの神として、また海上からの羅針盤の役目を果たす海の守り神として崇められ、江戸時代には大山参りの講中が盛んで江戸市民の成人儀式として広く登られたということです。現代の阿夫利神社も年に何度かの例祭に信者を集めて大いに栄えているそうですが、今日の山頂は真っ白い雪と色とりどりの登山者に占められたハイカーの憩いの場所です。展望の山としても素晴らしく、空気が澄んでいれば新宿方面まで見通せるそうですが、今日は下界は霞んでいて相模平野がうっすらと見渡せるだけ。それでもなかなかの高度感です。展望もさることながら、山頂の売店で温かいものを手に入れることを期待しつつ登ってきたのですが、残念ながらそうした店は見当たらず、ベンチで行動食の残りを食べたらさっさと下山を開始しました。
15分ほど下ったところから見晴台方面への道を分けて左手の不動尻方面に進みましたが、こちらはあまり人が歩いていないようです。さらに30分ほども下ると東屋があって、少し進んだところに今日唯一緊張する場面が待っていました。そこには鐘ヶ岳を見下ろす位置に鹿よけのフェンスを越える木の下り階段があるのですが、横木が打ち付けられているだけの斜めの板に雪がびっしり付いてつるつるに凍っており、後ろ向きになって手すりに身体を預けながらそろそろと下りましたが、山慣れない人にはちょっと難しい場所だったに違いありません。
ともあれ難所を乗り切って、後はひたすら下るだけ。不動尻のキャンプ施設から雪に覆われた車道を歩き、真っ暗なトンネルを抜けて20分ほどで人里に出ました。
今回の目的であった「リハビリ」ということについて言うと、一日を通して快調に雪道を飛ばすことができて、少なくとも心肺機能に関しては全く問題なし。しかし右足の方はまだ若干のつっぱり感が残っていることと、ごくわずかではありますが右膝で体重を支えきれなくなる場面があり、完治とまではいっていないようです。とはいえ山を歩くこと自体に対する不安は払拭できたので、後は実戦を重ねるのみです。
なお、ゴム長靴のフリクションは下り道でも威力を発揮しました。フラットフッティングでもしっかり止まってくれるし、急坂ではヒールでステップを切りながらでもどんどん下ることができます。ただ、靴下でのサイズ調節には慎重でなければならないようで、今回は中敷き+薄手の靴下の組み合わせにしていたところ、左足の中指の爪をちょっと痛めてしまいました。引き続きいろいろ試し工夫しながら、このゴム長靴を積極的に活用していくつもりです。