塾長の山行記録
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塾長の山行記録

北穂高岳

日程:1999/05/02-04

概要:上高地から涸沢に上がってテント泊。北穂高岳をピストンしてさらにテント泊し奥穂高岳を狙ったが、天候が悪化したため下山。

山頂:北穂高岳北峰 3,100m

同行:---

山行寸描

▲涸沢へあとわずか。ヒュッテの鯉のぼりが徐々に近づいてくる。(1999/05/02撮影)
▲北穂沢を下る。涸沢カールの底のテントが小さい。(1999/05/03撮影)

1999/05/02

△08:50 上高地 → △12:00-30 横尾 → △16:05 涸沢

4カ月前にワカンを履いて歩いた道も、今はすっかり夏道のようになって観光客が闊歩しています。その喧騒の中をテントを含む雪山装備一式を背負って寝不足の頭でふらふらと歩きましたが、眠気に勝てずにポイントごとに10-20分の仮眠をとりました。それでもどうにか着いた横尾で昼食をとったのち、日焼け止めをしっかり塗って涸沢を目指しましたが、雪が本格的に現れたのは本谷橋らしきところからでした。

稜線にガスがかかり始める頃、休み休みのスローペースながらようやく涸沢に到着し、受付で手続を済ませテント村の中を歩き回ってモレーンを越えたカールの中ほどに空きスペースを見つけ幕営しました。雪山にテントを張るのは久しぶりですが、近くに涸沢ヒュッテがあっていつでも暖かい食べ物を補給できるのが心強い限り。おまけに涸沢ヒュッテのトイレの便座がヒーターで暖かいのにはびっくりです。それにしてもここから見上げる北穂沢はほとんど垂直の雪壁のように見えますが、本当に明日はあそこを登れるのだろうか?と不安になりました。

18時頃にはテント内で夕食を済ませ、一寝入りして20時頃手洗いに立つと、テント村がオレンジや黄色、赤などカラフルにほの明るく、その向こうに涸沢小屋の三角屋根がシンデレラ城のように輝いて見えました。

1999/05/03

△06:10 涸沢 → △08:50-09:20 北穂高岳 → △10:50 涸沢

4時半起床。食事を済ませ身繕いをしてテントの外に出ると、曇り空の下で既に何人もの登山者が北穂沢に取り付いていました。こちらも涸沢小屋の右手から雪の斜面に取り付きましたが、ゴルジュまでは楽勝で高度を上げたものの、昨日の疲れが出たのかそこから先がなかなか進みません。やがてガスが周囲を覆い始めたあたりが核心部のインゼル通過で、ここから松濤のコルまでは斜度40度。ところどころアイゼンの前爪を立てて登りながら「帰りにはこんなところを下るのか……」と気が重くなってきました。

コルから右手へちょっと登ったところが北穂高岳山頂(北峰)ですが、ガスの中の雪のピークで何の目印もありません。晴れていればここから大キレット越しの槍ヶ岳が素晴らしいのは夏に経験済みですが、今回は展望が目的ではないのでそれほど惜しくはありません。すぐに山頂直下の北穂高小屋に降りて、コーヒーと缶詰の黄桃で一息つきました。

山頂滞在30分で下山開始。転落事故の多い下降路と聞いていたので身構えて下り始めましたが、アイゼンが想像以上によく利き、先行者のステップを辿って下るとほとんど危険を感じることなくすんなりインゼルの下へ抜けることができました。最後はシリセードを併用して、たったの1時間半で無事帰投です。

昼食を終えてテントの中でうだうだしていると、12時半頃涸沢の上空にヘリコプターが爆音を響かせて現れ、ゆっくり前進してザイテングラートの中ほどに着地すれすれでホバリング。これを2回繰り返して飛び去っていきました。どうやら遭難救助だったようですが、詳細は不明です。

15時半頃からは霰がパラつき始め、所在なくテントの中でウイスキーをなめ、参考書に書いてあるブーリン結びの練習をし、16時からの気象通報をもとに天気図を書いているらしい隣のテントの様子に聞き耳を立てました。しかし「寒冷前線が意外に伸びている」「低気圧が毎時30kmで移動中ということは……」と結論が出ない様子の会話にため息をつき、早々に夕食を作って早寝をしたところ、20時頃からテントを雨が叩き始めました。

1999/05/04

△06:55 涸沢 → △08:40-55 横尾 → △11:40 上高地

今日も4時半起床。テントの上に積もった雪を内側から叩いて落としてから外の様子を伺うと、雨混じりの雪になって風が稜線方向から吹き付けています。今日のうちには帰京すると決めていたので、奥穂高岳登頂は次の機会に回すことにして撤収を決意しました。

朝食をとっている間にもだんだん風が強くなり、テントが激しく揺さぶられるようになってきました。テントは四隅に十文字に組んだ木の棒を捨てペグとして埋めてあるので飛ばされる心配はありませんが、そうは言っても畳むときがちょっと心配です。テントの中で靴を履きスパッツを着けている間にも、一足早く撤収中の隣のテントから風の音とともに「ひえー」「うぉーっ」と悲鳴が聞こえてきました。こちらもテントの外に出ましたが意外に暖かく、それもそのはず、気温計を見ると0度を示しています。ともあれ風の中で手早くテントを畳み、涸沢ヒュッテに立ち寄ってから下山を開始しました。

横尾に着くと雨になっており、見上げる雪混じりの山肌はガスがまとわりついて水墨画のようにきれいでした。明神では空腹に耐えかねてカルビ丼と生ビールを補給し、さらに歩みを進めて上高地に着いたところでタイミングよく出発時刻寸前のバスに乗り込むことができました。

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