夏油川枯松沢

日程:2024/09/07

概要:夏油温泉から少し歩いて石灰華ドームの前で夏油川に入渓。途中から支流の枯松沢に入ってこれを遡行し、二俣を左に進んで稜線を越え、登山道に出たら起点に戻る。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:ヅカ氏

山行寸描

▲夏油川枯松沢の遡行。コンパクトな中にも見どころが連続し飽きさせない沢だった。(2024/09/07撮影)

この週末はヅカ氏と北陸地方の某沢に赴く予定でしたが、前線の不穏な動きのために直前まで悩んだ結果、方向を変えて東北地方の日帰り沢2本とすることにしました。2日間の過ごし方は、まず土曜日の早朝の新幹線で上野から北上へ向かい、そこでレンタカーを借りて夏油げとう温泉を起点に半日行程の夏油川枯松沢を遡行してその日は水沢(奥州市)泊まり。翌早朝に焼石岳の中沼登山口まで車で入って尿前川本沢を遡行し、あわよくば焼石岳に登頂した後に登山口に戻り北上へ帰ってレンタカーを返して帰京するという少々慌ただしいものです。

2024/09/07

△10:40 夏油温泉 → △11:05 石灰華ドーム → △11:35-40 夏油川・枯松沢出合 → △13:25 二俣 → △14:35 登山道 → △15:40 夏油温泉

上野駅から乗った東北新幹線やまびこは、関東地方を抜けて福島、宮城、岩手へと北上します。北に行くほど土地が広くなるように感じるのはメルカトル効果であろうか?などと考えながら3時間弱の乗り物の旅を終えて降り立った北上駅でヅカ氏と合流し、レンタカーの受取りを終えたらただちに夏油温泉を目指しました。

アイヌ語の「グット・オ」(崖のあるところ)が語源だとも、「夏湯」が「夏油」に書き違えられたとも伝わる夏油温泉の駐車スペースから、まず向かったのは夏油川の右岸に聳え「天狗の岩」と呼ばれる石灰華ドーム(特別天然記念物)です。国内最大の石灰華ドームだと言われても勉強不足でいまいちそのありがたみを実感できないままにここから入渓し、さらに堰堤を二つ越えたら純然たる沢登りの世界。とは言ってもしばらくは単なるゴーロ歩きで、やがて右に曲がる夏油川から分かれて目指す枯松沢を左へ向かいます。

枯松沢に入ると間髪入れずにV字状のゴルジュになっており、前衛の釜に腰までつかって近づいたら右から左から、あるいは突っ張りも駆使して沢の奥へと進みます。

いつもは可能な限り水に浸かることを回避する私ですが、この日はいつもに比して積極的に水に入っていたのでヅカ氏は驚いていましたが、それは水温が高いためであると共に、ウエストポーチに入れているiPhoneにしっかり防水措置を施してあるためです。

V字ゴルジュの後にはどれも楽しく登れる小滝と釜の組合せがいくつか続き、ヅカ氏は例によってウォータースライダーでご満悦。そしてしばらく進むと右岸側に湯気が立っている箇所があり、そこには毒々しい緑色の藻類(?)を伴って50℃くらいの熱々の湯が湧き出ていました。

熱湯泉の先にはこの沢で最大の10m滝が待っていますが、これは水流右側の階段状の斜面を簡単に登ることができます。

その後も釜を持つ小滝が連続して、正直それほど期待していなかった我々は嬉しい誤算に大喜び。ホールドが細かく少々難しい滝もありますが、落ちてもドボンするだけなので気楽なものです。ただしある程度水に浸からないと滝に近づけないところもあるので、この沢は寒い季節には向いていないかもしれません。

その典型がこちらの強い水流とカーブした釜を持つ滝で、ヅカ氏は果敢に泳ぎ切って滝の最下段に乗り上がり、そこから左上に一段上がって後続する私を待ってくれたのですが、私の方は半ば流れに押し戻されそうになりながら時間をかけてなんとか滝の最下段に立ったところまでで体温が下がってしまいギブアップ。お助け紐を投げてもらって一段上がって、そこからは再びフリーになり目の前の膨らんだ岩の上をフリクション頼みで登り切りました。

さらに二つほど小滝を越えると標高740mで二俣になって、経塚山に向かう右俣の先にはナメが見えていましたが、ここまででも十分満足していたのでより早く登山道に出られる左俣に入りました。

左俣に入ると岩がぬめりだし、それまでとは違って岩肌が黒っぽくごつごつした感じの滝がいくつか立ちはだかるようになるもののいずれも難しくなく、中で最大のこちらの滝も水流の中〜右にしっかりしたホールドが得られて快適に越えられました。その先も小滝を登ったり巻いたりしながら、斜度の強い沢筋の中をひたすら登るだけ。途中に謎のピンクテープもあったりしましたが、とにかく本流と思われる方を目指して足を上げ続けていくと薄い藪漕ぎの後に稜線に出て、そこから少々笹を漕ぎながら進むと駒ヶ岳から夏油温泉へ下る登山道に降り立つことができました。

途中の開けたところから彼方の岩手山や姫神山の姿を眺めたりしながら下り続けて、1時間ほどの下降で車に戻りました。このようにコンパクトな中にアトラクションを詰め込んで下山も容易なこの沢は、関東地方から奥州へ遠征する場合の初日の1本として手頃かつ魅力的。まずは楽しい半日を過ごすことができました。

夏油温泉の日帰り入浴時間は逃してしまいましたが、さほど遠くないところにある「夏油高原温泉 兎森の湯」で入浴でき、文字通りの雄大な眺めが得られる展望露天風呂を満喫してから、夕景色の中に巨体を浮かべる早池峰山の遠景の立派さをしみじみと味わいつつ今宵の宿に向かいました。冒頭に記したようにこの日は水沢駅近くに投宿することにしているので、まず立ち寄ったのはヅカ氏が「水沢に泊まるのであれば立ち寄るべし」と地元の方から勧められたというクラフトビール工房「315beerサイコービール」です。

こちらは店舗で飲ませるビアバーではなくテイクアウトが基本業態のようで、そのための専用ボトルも貸し出してくれます。そこで5種類のラインナップの中からIPA系の二つを選んで買い求め、後でホテルの部屋で飲んでみたところ、IPAなのに品のある味わいが感じられるすてきなビールでした(ボトルは翌朝に店舗前に置かれた返却ボックスに戻しました)。

そしてホテルにチェックインして濡れ物をバスルームに干してから繰り出した夜の街では、良質な牛肉の産地でもある水沢の食を堪能しようと「食遊園」に入りました。分厚い!柔らかい!旨い!の三拍子揃った牛肉はやはりすばらしく、東京から遠路はるばる足を運んだ甲斐がありました(←ちょっと違う)。

◎「尿前川本沢」へ続く。