湯檜曽川東黒沢
日程:2019/09/07-08
概要:土合駅からすぐに東黒沢に入渓し、詰めの尾根を乗り越してウツボギ沢を下降、ナルミズ沢との出合に幕営。翌日、ナルミズ沢沿いの登山道を宝川温泉へ下山。
山頂:---
同行:サチコさん / エリー
山行寸描
笛吹川日川曲り沢で沢登りを覚えたエリーに、次は泊まり沢の楽しみを教えてあげようと企画したのが東黒沢からナルミズ沢への継続遡行。このコースを私は2004年にも遡行していますが、そのときは最後のツメで誤ったコースに入ってしまったようで、巷間言われる「天国のツメ」を体験できていません。よって自分自身にとってもこの沢登りは、ナルミズ沢完結編という意味合いをもっていました。また、秋に予定している計画に向けた体力テストとしてサチコさんにも参加していただき、3人で土合駅を目指すことにしました。
2019/09/07
△09:45 東黒沢入渓点 → △10:20 ハナゲの滝 → △10:40 白毛門沢出合 → △14:05-20 丸山乗越 → △15:35 ウツボギ沢出合 → △15:40 広河原
土合駅名物「地獄の階段」を登るのは、私は久しぶり、同行の2人は初めて。
驚くほど大勢の登山者がこの階段を登り、土合駅から三々五々、谷川岳に向かっていきました。我々もその後を追い、湯檜曾川をまたぐ土合橋の手前の駐車場で身繕いをしてから、東黒沢に入りました。
しばらくはなんということもない河原が続きますが、徐々にナメっぽくなってきて、ウォータースライダーを楽しむことができるポイントも現れます。本格的な沢登りはこれが初めてのエリーは大喜び。つられて一緒に滑ったサチコさんにとってもこれが初めてのウォータースライダーだったそうで、そうと知っていたら動画を撮ってあげたのにとちょっと残念でした。
やがて出てきたハナゲの滝の、その名前に似つかわしくない雄大さにも歓声が上がります。見た目の迫力とは裏腹に、この滝は左の水際を行けばまったく易しく、ロープを出すこともなくどんどん登りました。
むしろその先のミニゴルジュを小柄であまり泳ぎが得意ではないエリーが突破できるかがあらかじめの心配事項で、水深が深いようなら右から巻こうと思っていたのですが、実際に踏み込んでみれば彼女の身長でも胸までの深さですみ、難なくここを抜けることができました。
2段になったちょっとした滝はサチコさんを先頭に、これもフリーで右から登りました。なお、下降用に設置されたと思われるトラロープが垂れているのが目障りだったので、これは3人が登りきったところで引き上げておきました。
幅広のナメ滝や崩壊地の大滝などを快調に越えていき、先行パーティーも抜かしたりしていい調子だと思っていたのですが……。
その先のナメ床がどうしたことか、恐ろしくヌメヌメ。ラバーソールの私ばかりか、フェルトソールの2人も沢靴の滑りに恐怖を覚えながら慎重に登っていたのですが、ふとした拍子に足をヌメりにとられたサチコさんが左足のかかと周辺を捻挫してしまいました。
エリーが出してくれたテープで受傷部を仮固定したおかげで歩行継続は可能だったのですが、ここから足の痛みにスリップの怖さが重なって、サチコさんの遡行スピードががくっと落ちてしまいます。
どうにかこうにか丸山乗越に着いたところで大休止。サチコさんも行動継続は可能のようですが、既に時刻は14時を回っており、この時点でナルミズ沢の遡行は諦めるしかありませんでした。もっとも、東黒沢の途中で言葉を交わした他パーティーも明日の天気が思わしくないので東黒沢だけで帰ると言っており、だからというわけではありませんが、ナルミズ沢にこだわる気持ちは3人ともあまりありません。
丸山乗越を越えてウツボギ沢に向かっての下降も時間がかかりました。途中いくつかの顕著な段差はたいていはクライムダウンや巻きで対処できるのですが、1カ所だけ懸垂下降した方が確実だと思われる場所があり、ここではエリーの事前の練習が役立ちました。やがてウツボギ沢に辿り着き、すぐ下流の広河原に到着しましたが、広河原もナルミズ沢を渡った対岸の樹林の中のテントサイトも既に満員御礼状態です。しからばとナルミズ沢をほんのわずか下って、左岸のやや開けた笹の中に幕場を求めることにしました。
テントを設営し終えたら待望の焚火タイムです。河原の流木や樹林帯の中に落ちている小枝を集めて火をつけ、食事を終えてあたりが暗くなったところでエリーが持参したマシュマロを焼いてデザートとしました。とろとろと穏やかに炎を上げている焚火を眺めていれば、時間のたつのも忘れてしまいます。
2019/09/08
△07:10 広河原 → △07:25 徒渉点 → △09:05 林道終点 → △10:55 宝川温泉
午前4時、テントを叩く雨の音で目が覚めました。昨日の他パーティーの予言が当たったか、と思いながらしばらくのんびりして、あたりが明るくなってきた午前5時にシュラフを出ました。
手早く朝食を済ませ、テントを畳んで撤収です。昨日ここに泊まることが決まった時点での修正プランはナルミズ沢の代わりにウツボギ沢を遡行して白毛門の山頂に達するというものでしたが、サチコさんの足の具合も思わしくないことから、ナルミズ沢沿いを下流に向かう登山道を使って宝川温泉へエスケープすることにしました。
登山道を使うと言っても渡渉ありアップダウンありのそこそこワイルドな道のりですが、歩いた距離だけ確実に温泉が近づくというのはうれしいもの。2人の頭の中でもお風呂マークが渦巻いていたようです。
しかし、その前にお楽しみが二つ待っていました。一つは登山道の途中で出合うきれいな小滝で、もう一つは黄色い巨大なナメ床です。
特に後者は「天国のナメ」……と呼ぶのはさすがに持ち上げ過ぎですが、ひたひたと流れる水の美しさは特筆もの。左岸の高いところにある林道から容易に降り立つことができて、この山行最後の良いアクセントになりました。この登山道は上述の2004年のときにも歩いているのですが、これらがまったく記憶に残っていなかったのが不思議です。
宝川温泉ではバスの時間までゆとりがあったので、素晴らしく充実した露天風呂をハシゴし、さっぱりしたところで乾杯しました。お疲れさま!特にサチコさんは負傷にもかかわらず最後までよくがんばってくださいました。こうして終わってみれば、プラン短縮にはなったもののそれなりに充実した沢旅だったようにも思います。「天国のツメ」は、また来年にでも。