湯川の岩場
日程:2017/06/03-04
概要:アルパインガイド保科雅則氏の保科クライミングスクールの講習で、湯川の岩場でクラックの練習。
山頂:---
同行:保科雅則ガイド
山行寸描
2017/06/03
△10:10-16:20 湯川の岩場
ちょうど1カ月前の小川山に続くクラック強化対策の第2弾は、八ヶ岳東面の湯川の岩場。湯川渓谷でのアイスクライミングには何度か来ていますが、乾いた岩を登るのは初めてです。以下は、すべてTR。また「無名ルート」としてあるのは『日本100岩場』にルート名が載っていなかったため便宜上そのように表記しているだけで、もしかするとちゃんとしたルート名がついているのかもしれません。
正面壁
- うたかたの日々(5.9)
- 下部はほとんどレイバックで簡単に抜けられた(それがいいかどうかは別問題)のですが、テラスを越えてからの次のセクションで奮闘。結局またしてもレイバックで解決することに(これは明らかにおかしい)。勉強させていただきました……。
- サブタナル(5.9)
- ステミングに背中も使ったチムニー登りのあと、かぶった岩の下をアンダークリングでトラバース。あっさりTO。このタイプは得意です。
- 山案山子(5.10b)
- 手(指?)が決まらず、下部1/3にも達せずにギブアップ。勉強させていただきました……。
- こちらは保科ガイドの模範演技。まったく重力が感じられません。
- コークスクリュー(5.9)
- きれいなクラックがうねうねと上に伸びるルートで、途中まではフィスト〜ハンドジャム、中間からクラックをホールドにほぼフェース登り。途中で力尽きてテンションをかけましたが、最後はガバに導かれてTO。
最後の「コークスクリュー」でジャミングが決まる感覚が得られて、翌日に期待がつながりました。
この日の泊まりは民宿「りんどう」。八ヶ岳に沈む夕日を眺め、おいしい夕食をいただいたら20時から翌日7時まで爆睡してしまいました。
2017/06/04
△08:45-15:45 湯川の岩場
今日は右壁。そちらに回り込む前に、1988年に保科ガイドが登って当時の国内最高グレードを更新した「白髪鬼」(5.13d R)を見上げました。
あのシンクラックを登れるようになる日は、100万年待っても来ないでしょう。
右壁
- 台湾坊主の右の無名ルート(5.8)
- 下半分がクラック、上半分が大きなホールドを使ったかぶり気味のフェースとなるルート。またしてもクラック部をレイバックで抜けて、上のフェース部でムーブが解明できずテンションをかけながら、なんとかTO。
- 左:台湾坊主 / 右:無名ルート
- デゲンナー(5.8)
- 斜めのハンドクラックが逆くの字に伸びるルート。部分的にシンハンドになるところがありますが、これは気持ち良く一撃でTOしました(だからと言ってリードできるかと言えば別問題)。
- こちらは保科ガイドの模範演技。二度ほどズルっといっているのはジョークだと思われます。
- 台湾坊主(5.9)
- フィスト〜ハンド〜フィンガーサイズのクラックを使い分けながらステミングで高さを稼いでゆくルート。我ながらうまく登れました。
- 北風小僧(5.9)
- 下3分の2のクラックはうまくこなせたものの、かぶった凹凸部の乗越しでテンション。これはジャミングの巧拙ではなく単純にフリークライミング能力の問題です。
- こちらも保科ガイドの模範演技。あくまでも優雅。
- 台湾坊主の右の無名ルート(5.8)
- リトライ。今度は淀みない完璧な登り方ができました。下から見上げてイメージした通りに登れたときにこれほどうれしいものだとは、今さらながらに知りました。
- デゲンナーの右の無名ルート(?)
- 下部の垂直のクラック部が細かく指に痛い。それでも横引きで身体を引き上げれば高さを稼ぐことができましたが、右上のトラバース部で力尽きてTOならず。
ひたすらジャミングの小川山のクラックとはタイプが異なり、湯川の岩場ではフリクションの良い左右の壁へのステミングを多用しながら三次元の動きで高さを稼ぐのがコツだとこの2日間で学習しました。なるほど、一口にクラックと言っても奥が深いものです。
それにしても、小さいながらこの岩場の雰囲気はすてきでした。鳥のさえずり、川のせせらぎ、カラマツ(ブナもところどころ)の新緑の中のツツジの朱色、木の間越しの青い空。この2日間ちょっと肌寒い気候でしたが、美しい自然の中に浸ってハッピーでした。もっとも、そんなすてきな環境を楽しんでいたのは我々だけではなかったようで、初日は「テレポーテーション」(5.10d)の上に蛇が3匹いたそうですし、2日目は「デゲンナー」周辺をスズメバチが巡視飛行していました。初日の蛇は数日前に保科ガイドがここに来たときにもいたそうで、保科ガイド曰く「おとなしいですよ。頭をなでてやりました」とのこと。クラック登りには、そうした包容力(?)も求められるようです。