片品川根羽沢湯沢
日程:2016/09/03
概要:大清水から徒歩30分の物見橋に幕営用具をデポして、軽装で湯沢へ。厳しい笹薮漕ぎの後に物見山頂に着き、鬼怒沼湿原を見物してから、物見山経由物見橋に戻る。
山頂:物見山 2113m
同行:よっこさん / おトミさん / リンタロウさん / アイさん
山行寸描
よっこさんに「この夏どこかの週末で沢登りに行きませんか?」と声を掛けたのが7月17日。そこから、日程調整をしては雨で潰れてジムに転進してということを繰り返し、ようやく東京を飛び出したときには9月に入っていました。メンバーはリントミペアとアイさん、そしてよっこさんに私。行き先は片品川水系の根羽沢湯沢と大薙沢。ここには2010年にも足を運んでいますが、そのときは大薙沢しか遡行できませんでした。もちろん今回は、湯沢・大薙沢の両方をゲットしようというプランです。
金曜日の夜、横浜から環八を通って練馬区を経由し、関越自動車道を沼田ICへ。大清水に着いたのは午前1時半頃で、休憩所は施錠されていたのでその軒先にシュラフをのべて4時間余りの仮眠をとりました。起床は6時。朝食をとってお手洗いを済ませて、斜めに差し込む朝日を浴びながら出発です。
2016/09/03
△06:45 大清水 → △07:15-45 物見橋 → △07:55 入渓 → △09:10 カラノマタ沢出合 → △10:40-45 奥の二俣 → △13:15-35 物見山 → △13:50-14:15 鬼怒沼湿原 → △14:35-40 物見山 → △16:05 物見橋
各自、食材やらお酒やらでぱんぱんに膨れたリュックサックを背負って、大清水の休憩所の戸倉寄りから「物見山経由鬼怒沼 6.0K」と書かれた標識に従って林道を歩きました。
この道は木漏れ日がきれいな歩きやすい道ではありますが、ところどころぬかるんでいるところもあるので最初から沢靴で歩く方が快適です。やがて懐かしい物見橋の広場に到着しましたが、ここは湯沢と大薙沢の出合である上に、この見事な広場が幕営には最適です。ただし本当は幕営指定地外らしく、そのことをリマインドする看板もあるにはあったのですが、見れば真新しい焚火の跡もちらほらとあったので私たちも許してもらうことにしました。
グラウンドシートを広げて荷物をその上にテポし、沢装備になったところで物見橋の広場からほぼ真東にあたる物見山への登山道に入りました。まず今日遡行するのは前回遡行していない湯沢で、私が持参した古い遡行図や地形図では入渓点までの間に登山道が川を二度渡るように書かれていたのですが、どうやら道が付け替えられているらしくずっと左岸のやや高いところを歩いて、やがて沢に降り立ったところで巨大な倒木に手すりやステップが付けられている場所が入渓点でした。
すぐ右手奥に落ちている直瀑が6mF1で、がんばれば右壁から越えることもできそうでしたが、ここはおとなしく少し戻って左岸の土のルンゼから巻き上がりました。そこから沢筋へ戻るには傾斜が急だったので、手早くロープを出して懸垂下降しました。
狭い沢筋を遡行して、小さな釜でバランシーなへつりを楽しんだ後に出てきたのが8mF2です。すぱっと断ち割ったようなゴルジュの奥に豊富な水量を落としていて、その手前は深そうな細い釜になっており、皆が身を切るような水の冷たさに尻込みしているとアイさんが果敢に胸まで水につかって釜を渡りきりゴルジュの奥に達しました。続いておトミさんも後を追いましたが、適当なホールドがないらしく釜の向こう側で足が水底から離れた途端に水流に押し戻されてしまいました。これを見た残りのメンバーは釜の突破を断念したため、ゴルジュの向こうでフォトジェニックな1枚をモノにできたのはアイさんだけということになりました。
F2を左岸から大きく巻いた後にちょこちょこと小滝を越えると沢はナメ状になって、やがてカラノマタ沢出合に到着しました。この辺りのナメはとてもすてきで、この日の水量の豊富さがことここに関してはいい方向に働いている感じ。そして出合の先でもいくつかの小滝を問題なく越えると再びナメが続きましたが、こちらは両岸が低い草地になっていて、沢と岸とが一体となったその開放感が整備された庭園の中にいるように感じさせてくれました。
さらに遡行を続けるうちに徐々に高度が上がってきて、幾何学的な節理を見せる滝に達しました。斜度はないものの苔でヌメるこの滝を越えてしばらく進むと沢筋は徐々に狭まり、そしてガレと流木で荒れてきました。
その荒れた中に奥の二俣が現れました。標高は1700mくらいで、見た目には右の方が本流筋に見えますが、アイさんの慎重な読図により、物見山の山頂に突き上げるならここは左だということになりました。
他人の記録を見ると、この沢は最後の詰めが長いために適当なところで登山道のある左の尾根へ逃げるケースが多いのですが、それでも藪漕ぎに奮闘させられることになるようなので、我々はこの沢筋を最後まで詰めて極力真っすぐ物見山の山頂を目指すことにしていました。この奥の二俣を右に進むと物見山と燕巣山の間の稜線に抜けることになり、そちらでも藪漕ぎの苦労は変わらないかもしれませんが、ここはドンピシャで物見山に達して読図力の正確さをアピールしたいところ。ただし地形図によれば山頂直下は等高線がぐっと詰まって崖状になっているので、正確には物見山頂のやや南に出ることになりそうです。
奥の二俣から左に入るともはや沢とは呼べないような細い凹角となり、そこに水がちょろちょろと流れている状態になりました。ここから後はひたすら体力勝負です。
途中に出てきたワンポイントの渋い段差をリンタロウさんの危なげないリードで突破してさらに進むと、予想通り前方左側に岩壁が現れました。その裾を巻くようにして登高を続けると、沢形は徐々に浅く、笹は徐々に深くなり、そして楽しかったナメや小滝の思い出もはるか昔のことのように遠くなっていきます。
ついに沢は形を失い、後はひたすら笹薮漕ぎ。ラッセルとなるとなぜか燃えるタイプの私が途中から先頭に立ち、岩壁の下から笹を漕ぐこと1時間でやっと稜線らしき場所に到着しました。
一気に薄くなった笹に気を良くして向きを左に変えるとほんのわずかで明瞭な登山道にぽんと飛び出して、展望のないそここそが物見山の山頂でした。しかしぴんぴんしているのはリンタロウさんだけで、笹薮漕ぎの経験が少ない女子3人はへたり込むように座ると、ここで大休止となりました。やれやれ、お疲れさまでした。あとはベースキャンプである物見橋の広場へ下るだけですが、せっかくなので近くにある鬼怒沼湿原を見に行くことにしました。
物見山から20分ほど下ってかすかに登り返すと木道が現れ、そして三叉路を右に折れればすぐそこが鬼怒沼湿原です。ここには2005年に来たことがありますが、高層湿原のこの穏やかな空間は何度来てもよいものです。
曇り空にもかかわらず、心の中にまで吹き渡るような爽やかな風をのんびりと浴びてから、再び物見山へ登り返しました。
山頂で再び大休止に入ったおトミさんとアイさんを残置して、よっこさん・リンタロウさんと私は一足先に下山にかかりました。物見山の下り道は一応整備された登山道ですが、鉄砲下りと言ってもいいくらいの急降下でなかなか大変です。しかし先頭を行くよっこさんの足取りは軽く、私はまるで追いつけません。いったいどこにあのパワーを残してあったのか……。
結局、コースタイム2時間と地図に表記されているところを1時間10分で下りきり、後は平らになった道を手頃な薪を拾いながら歩いて、物見橋に帰り着きました。
テントを設営している間にリンタロウさんがせっせと集めてくれた薪を組み上げて火をつければ、後はひたすら食べて飲むだけの楽しいパーティータイム。今回の山行は、これが目当てのようなものです。
私が皆に振る舞ったウインナーと野菜の炒め物は、先月北岳に登ったときにハマちゃんが作っていておいしそうだったので真似したものです。
水餃子、サーモンのホイル焼き、ハンバーグ、唐黍ご飯の焼きおにぎり、焼きリンゴ……ここでは紹介しきれないほどさまざまなおいしいものが出てきて、ワインや日本酒も消費されて、そして静かに夜はふけていきました。
◎「片品川根羽沢大薙沢」へ続く。