河内川火打沢

日程:2016/04/23

概要:西丹沢の河内川火打沢を遡行。「道の駅 山北」から歩いて火打ダムの上から入溪し、標高720mの最後の二俣で遡行を終了して登山道から下山。

山頂:---

同行:かっきー

山行寸描

▲3段30m滝。上の画像をクリックすると、河内川火打沢の遡行の概要が見られます。(2016/04/23撮影)
▲ゴルジュ内の樋状滝。濡れることを厭わなければ簡単。(2016/04/23撮影)
▲渾身のシャワークライムとなった10m滝。右のバンドから近づき、水をかぶりながら滝の中ほどまでトラバースして直上。(2016/04/23撮影)

2016/04/23

△08:50 道の駅 山北 → △09:10 吊橋 → △09:20-45 入渓点 → △11:50-12:10 二俣手前の河原 → △13:45 最後の二俣 → △14:50 吊橋 → △15:10 道の駅 山北

今年2本目の沢は、2週間前のボウズクリの沢と同じく丹沢の河内川流域にあって少々ピリ辛とされる火打沢ひいちさわ。前回同様に7時に本厚木駅で待ち合わせ、国道246号を西進して「道の駅 山北」に車を駐めました。

曇りがちでやや肌寒い気候の下、沢靴でひたひたと車道を歩けば遠目にも沢の位置は明瞭。山市場バス停の先の青い吊橋を渡って前回は右でしたが、今回は左です。不老山へ向かう登山口の左、火打沢沿いを登っていくと少々くたびれた東屋があり、ただの堰堤にしか見えない火打ダムを右から越えたところで河原に降りました。

ここでヘルメットやハーネスを身に着け、前方に見えている堰堤は左から越えることにして植林の中の踏み跡を登っていくと、朽ちかけたログハウスが目に入りました。かつてはここで観光客をもてなしたのであろう洒落た作りのログハウスですが、今はただの廃墟と化しており、このログハウスの高さから右手の斜面を水平に進むとほぼどんぴしゃで堰堤の上に出て、その少し先に最初の10m滝が現れました。なかなか見栄えのする滝ですがこれを登るのは無理で、右手のグズグズの斜面を巻き上がりました。

適当に巻き上がって沢筋へ戻ると8mナメ滝が登場しましたが、これは傾斜もなく、水流の右から難なく上がることができます。そして、その先に今度は3段30m滝が姿を現しました。

この滝はなかなか立派で、トポには「3段」と書かれていますが見たところ4段あるようにも思えます。出だしから困難そうに見える上に2段目以降もまるで登れそうになく、さらに滝の右にもスケールの大きな流水溝があって滝のみならずあたり一帯の地形がダイナミックですが、これらと正面から取り組むのは得策ではないと判断して右上の滑りやすい土の斜面を登ることにしました。

せっかくだからと2段目を覗き込むために流水溝を横断して滝に近づいてみましたが、やはり取り付く島なし。すごすごと小さく戻って本流沿いを巻き上がってから沢の中へ懸垂下降で戻りました。

降りたところは早くもゴルジュっぽい谷底で、先ほどの滝の水量が不思議なくらい細い流れを遡行し、小さなCS滝を越えて奥へ進みました。

すると前方に現れたのは、これも立派な10m滝です。手前の右岸に太いフィックスロープが垂れ下がっているのを横目に見ながら近づいてみると正面からの突破はまず無理で、右の流水溝はややスリッピーな感じ、左壁は逆層かつ脆そうでやはり登れません。

そこでフィックスロープを掴んでゴボウで登り、左からの巻きにかかりました。巻いている途中で見下ろすと先ほどの10m滝の上にもう一つの10m滝が見え、これも見るからに立っていて直登は困難に思えたためにまとめて巻くことにしたのですが、かっきーは「高巻きのときに見下ろす滝は実物以上に立って見えるものだ理論」を持ち出して、あれは登れるのではないかと主張しました。結局、既に高いところまで追い上げられていたのでそのまま巻きを続けたのですが、後からトポや各種記録を見てみるとやはりあの上の10m滝はさしたる困難なく登れるもののようでした。うーん、もったいないことをしました。

これら二つの10m滝とその前後の小滝の上に降り立つと、これまたはっきりとゴルジュの様相です。最初の刺客は樋状の小滝で、手前の釜の深さと滝本体の水圧の高さが威嚇的ですが、取り付いてみれば水の中に手掛かり足掛かりが豊富でさしたる苦労もなく越えることができました。さらに樋状の先の狭隘な谷底を突破するべく奥へ進んで、積み重なった流木の先に右から落ちてくる7mの壁滝は多くの記録では右岸に逃げています(と言っても悪いバンドのトラバースがあって易しくないようです)が、かっきーは「行ける」のサイン。これがこの日最初の奮闘ポイントになりました。

ここは流木の頭を使って出だしの高さを稼ぎ、そこから細かいホールドをつないでじわじわと登ることになるのですが、先行したかっきーは落ち口手前でホールドの甘さに危険を感じハーケンを打ってセルフビレイをとると、気合一発で抜けていきました。私の方はこの奮闘ぶりを見て上からロープを投げてもらってから後続しましたが、確かにここのリードはなかなか厳しく、しかも倒木がなければ出だしはエイド混じりになるかもと思わせるものでした(ハーケンは回収)。

ともあれ前半のハイライトとなるゴルジュ内の滝を登り、すぐに出てくる5m滝は問題なく越え、とたんに癒し度を増した沢の中のところどころの滝を楽しく登っていくと、ゴルジュは完全に解消されて広河原状の場所に出ました。

ここでこの日最初で最後の大休止とし、私はコンビニで買った菓子パン、かっきーはお気に入りの飲料とお湯を沸かしての焼きそばを口に入れました。ゴルジュを突破したことでほっとした我々は「いやあ、面白かった」などと過去形でこの沢の品評を始めましたが、実は、まだこの後にも奮闘ポイントが待っていました。

大休止を終えて遡行再開。河原をしばらく歩いた先の二俣は右の沢床の高い方が本流という不思議な地形で、出だしの狭い滝を両手両足の突っ張りでなんとか越えるとそこから先には癒しの世界が待っていました。丹沢とは思えない穏やかなナメ床がどこまでも続く渓相に喜んだ我々は「クワウンナイ川を連想させるなー」などとほざきながらひたひたと歩みを進めます。さすがにクワウンナイ川を引き合いに出すのは言い過ぎですが、それでもこの沢のナメは素晴らしいものがあり、この時点で我々はすっかり火打沢のファンになってしまっていました。

とは言うものの、それで終わる火打沢ではありませんでした。やがて出てきた10m滝は見た目には手掛かり足掛かりが豊富そうですが、問題は間違いなくシャワークライミングとなる点です。リードを志願した私はカッパの袖口をぎゅっと絞り、右のバンドから滝の中段に近づいて様子を見ましたが、例によって滝は見た目以上に立っており水圧も侮れません。まずは滝に入る手前の岩にリスを探してバガブーのロングを打ち込みランナーをとってから、意を決して滝の中に入って行きましたが、思い描いていた右端の直上ラインは触ってみるとホールドが甘めで少々危険。このため水をざんざん頭からかぶりながらオブザベーションをやり直し、水流の中ほどまで横断してから上に向かうことにしました。後でフォローしたかっきーから「あのトラバースは痺れた」と言われましたが、ここを耐えてから数歩上がるとしっかりしたホールドに手を掛けられて一安心。相変わらず水をかぶり続けてはいるものの多少傾斜が緩んで息ができるようになり、安定した態勢で再びバガブーを打って二つ目のランナーをとってから落ち口を目指しました。

後続のかっきーはランナーを回収しつつ淀みなく登ってきましたが、最初のハーケンは岩が緩んで利いておらず、落ちたら止まらなかっただろうと言われて遅ればせながら冷や汗をかきました。そして10m滝のすぐ上の8m滝を適当に登って先に進み、二俣を右に進んだ少し先でまたしても手応えのありそうな滝が出てきました。

少々悪い下段をこなして滝の右端を登ったかっきーでしたが、落ち口手前で危険を感じた模様。ちょうどそこに残置ピンがあったためにロープを出すことにして、最後の数mを確保された状態で抜けていきました。確かにこの滝は角度も高さもあり、滑落は致命的となるので最初からロープを出すのが無難。巻くとするなら左からですが、落ち口から見たところでは巻きのラインもバンドが外傾しており手放しで安全というわけではなさそうでした。ともあれ、これで本当に滝場は(ほぼ)終了です。

標高720mで最後の二俣になりましたが、ここを右に進んでみるとすぐにボサが沢を覆うようになったため直ちに右手の斜面に逃げました。そこから登山道へは植林地の中のわずか5分の登りで藪漕ぎをすることもなく到達し、ここでギアを外してから歩きやすい登山道をのんびりと下りました。


この河内川火打沢は遡行する前は「足慣らしの2本目」程度の認識だったのですが、遡行を終えてがらりと印象が変わりました。直登不能な見事な直瀑もあればファイト一発のゴルジュ突破もあり、癒し系のナメ床を進んだ先にはテクニカルなシャワークライミングもありで、沢の魅力がぎゅっと凝縮した感じ。これが道の駅に車を駐めてからアプローチ20分、遡行終了後登山口に戻るまで1時間という至近にあるのですから驚きです。検索した限りではあまりメジャーな沢ではないようですが、実際にはその充実度は小川谷廊下に負けていない、と言っておきます。

ただし、積極的に水をかぶりにいくなら真夏の遡行をお勧めします。ロープは40m以上、ハーケンとハンマーも必携。また、ゴルジュ出口近くの7m壁滝(最初の奮闘ポイント)を巻かずに登りたいなら、流木がなくなっていたときのためにスカイフックの類を持参するとさらに良さそうです。

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