北秋川シンナソー

日程:2015/05/31

概要:藤倉バス停からすぐにシンナソーに入渓。遡行終了後、浅間尾根から下山。

山頂:---

同行:チオちゃん

山行寸描

▲シンナソーの遡行。ピンポイントの滝を無難に越えればあっという間に終わってしまう。(2015/05/31撮影)

◎本稿での地名の同定は主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)の記述を参照しています。

今年最初の沢登りは、沢友チオちゃんと奥多摩で最もお手軽な沢の一つ、北秋川水系のシンナソーへ向かいました。昔からこの沢の名前は不思議で、今回遡行するにあたっていろいろ調べてみたのですが、やはり誰も名前の由来がわからないようです。おそらく「ソー」は「沢」のことだろうとは見当がつくものの、では「シンナ」は何なのか?また尾根を挟んでお隣のヒヤマゴも沢の名前としては相当にファンキーで、ガイドブックによってはシンナソーを遡行してからヒヤマゴを下れば充実すると書かれているものもありますが、実際にそうした記録を検索するとお勧めできない的な評価に終わっていたので、おとなしくシンナソー終了後は風呂とビールに期待して南秋川側に下ることにしました。

2015/05/31

△08:45 藤倉 → △08:50-09:10 北秋川入渓点 → △09:15 シンナソー出合 → △09:25 3段10m滝 → △10:05 3段15m滝 → △10:50-11:20 登山道 → △11:45 数馬分岐 → △12:00 浅間の湯

ホリデー快速あきがわ1号に乗って新宿から武蔵五日市まで楽々到着したのはよかったのですが、事前の確認が不足していたために次のバスまで2時間待たなければならないタイミングになってしまいました。仕方なく奮発してタクシーに乗ったところ、藤倉バス停まで6,400円(1台)の出費となりました。うーん……。

四つ辻でタクシーを降りて、北秋川沿いに上流方向へほんの少し歩けば……。

ガイドブックに「廃屋」と書かれた家がありました。表札もあり廃屋っぽくはありませんが、人の気配がないのをいいことに建物の上流側の階段を下りて、すんなり河原に出ることができました。

狭い河原で身繕いをして出発。じゃぶじゃぶと北秋川を上流に進んで5分もしないうちに、右岸に小さな滝が落ちてくる場所に着きました。目立たないこの小滝がシンナソーの入口です。

出だしから小滝の連続となりますが、しばらくは廃棄物なども目立ってあまりいい雰囲気ではありません。さらに倒木が覆いかぶさってきたりして遡行感度はイマイチですが、短い流程の中に小滝が続くのでそれなりに楽しめます。

やがて出てくるのが最初の核心部、3段10m滝です。まずはチオちゃんがトライしましたが、事前の情報の通り中段の1歩が難しく先に進めません。シーズン最初なのでフェルトソールのフリクションが信じられないのは無理もなく、しばらく逡巡した後で私にバトンタッチ。そういう私も少し冷や汗をかきながら微妙なバランスで中段をこなして滝の上に抜け、上からロープを垂らしてチオちゃんを迎えました。

しばらく伏流の上を淡々と歩き、やがて水音が復活したところでちょっと立った黒光りする5m滝にぶつかりました。しかしここは水流の左側が階段状で、ホールドを確かめながら登れば問題ありません。その後も倒木がうるさい沢筋を進み、さらに狭いゴルジュ状を抜けると、前方に再び手応えのありそうな滝が現れました。

これが最後の核心部となる3段15m滝で、狭い岩溝を水流が落ちてきているような滝の形はそれほど危険を感じさせませんが、ここはチオちゃんが「年長者に先を譲る」という日本的美徳を発揮してくれて、またしても私がありがたくリードさせていただきました。

下段を簡単に上がってから、中段は丹念にステミングで上がって1手遠いところを思い切り右手を伸ばしてガバをつかみ、乗り上がって解決。上段は岩溝の中に足を突っ込んで身体を岩の形状に沿うように斜めにしながら登り、最後の段差を右上に抜けて落ち口の安定した場所に立って後続のチオちゃんを引っ張り上げました。ここは高さもそれなりにあり、楽しい滝でした。

小滝をもう一つ越えると沢筋に傾斜がなくなり、その代わり倒木がまたしてもうるさくなってきました。幸い二俣の手前あたりで右岸を尾根まで抜けられそうな斜面が広がったので、沢筋を離れて左上を目指して土の斜面をひたすら登ったところ、さほどの時間もかからず藪漕ぎもゼロで尾根上に出ることができました。さらに数m歩けば藤倉バス停の方向を示す道標があり、ここで装備を解くことにしました。

この尾根は浅間尾根上の藤倉分岐から北に向かって出発点の藤倉へ直接下る道になっていますが、道の下部が崩壊していて危険だという情報を事前につかんでいたので、逆方向に向かっていったん浅間尾根に上がり、南秋川の数馬方面へ向かうことにしました。

道標から浅間尾根まではほんの5分程度。そこから西の方向へ起伏がなくよく整備された道を歩くと、尾根上に「サル石」という岩塔が突き出ている場所に着きました。高札を見るとサルの手形のついた大きな石。サルの手の形はよく探せばわかるよ!と書かれていましたが、いくら目を凝らして探しても見つかりません。おかしいなと思いながらもう一度高札を見てみると、わかるよ!の下に小さく「全くわからん」と落書きがしてありました。見つけられないのは、我々だけではないのか……。

地図によれば藤倉分岐から数馬分岐までは40分となっていましたが、実際にはたったの15分で着いてしまいました。してみるとこの「40分」にはサル石でサルの手形を探す時間も含まれていたのかな?などと冗談を言い合いながら、これまた緩やかに下る歩きやすい道を浅間尾根登山口に向けて下りました。

浅間尾根登山口のバス停に着いたところで、武蔵五日市駅行きのバスがすぐに到着するようなら十里木の「瀬音の湯」へ、逆にバスがすぐには来ないようなら数馬まで歩いて「数馬の湯」に入るつもりだったのですが、浅間尾根登山口へ降り着く手前に「浅間の湯」という想定外の施設がありました。これはうれしい誤算です。

気持ちの良い風呂に浸かって心身共に癒されてから、こんにゃくをアテにビールをいただいてほっと一息。極楽です。ここで蕎麦をいただくのも一案でしたが、次のバスの時刻がそこまでのゆとりを持っていなかったので、食事は武蔵五日市駅近くのおなじみ「魚鶴」までお預けとしました。

あらかじめ予想されたことではありましたが、シンナソーはあまりに短く、しかも倒木がうるさい場面が多くて沢登りとしては少々物足りませんでした。しかし遡行終了後の浅間尾根の歩きやすい道を辿るハイキングと下山後の風呂・ビールの方を主目的とすれば、シンナソーにも一味変わったアプローチルートとしての価値があるかもしれません。さすがにもう一度この沢を遡行しようとは思えませんが、その代わりいずれ隣のヒヤマゴを、シンナソー遡行後の下降路としてではなく「浅間の湯」へのアプローチとして積極的に楽しめるかどうか調べてみようと思いました。