塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

早川尾根

日程:2013/08/17-18

概要:北沢峠から仙水峠を経由し、早川尾根を栗沢山、アサヨ峰と縦走して早川尾根小屋泊。翌日、赤薙沢ノ頭を越えて白鳳峠から広河原へ下山。

山頂:栗沢山 2714m / アサヨ峰 2799m

同行:よっこさん / トモミさん / ヒロセ氏

山行寸描

▲初日の行程=北沢峠から早川尾根小屋まで。(2013/08/17撮影)
▲2日目の行程=早川尾根小屋から広河原まで。(2013/08/18撮影)
▲赤薙沢ノ頭から振り返った早川尾根。仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳に挟まれてうねうねと延びている。(2013/08/18撮影)

ボルダリングジムつながりのヒロセ氏がFacebook上で、8月中旬の金曜日から月曜日にかけての3泊4日で

甲斐駒から早川尾根・鳳凰三山を経て夜叉神峠まで縦走するので、全部または一部、もしくは山行中の宴会のみに合流希望者はご連絡下さい。

というアナウンスをしたのは7月27日のこと。これに私がなぜ反応したかというと、以前栂海新道の記録でも紹介したように、日本アルプスの主稜線でまだ歩いていない「ミッシングリンク」がいくつかあり、早川尾根もそのうちの一つに入っていたからです。その後、おなじみよっこさんとトモミさんも土曜日から2泊3日で参加することになり、一方私の方は仕事の都合で土日のみとなったため、土曜日の夕方に早川尾根小屋で全員が合流しての宴会メインの計画となりました。

2013/08/17

△07:55 北沢峠 → △09:10-25 仙水峠 → △10:45-11:20 栗沢山 → △12:20-40 アサヨ峰 → △14:45 早川尾根小屋

金曜日の23時に新宿を発つ特急かいじで甲府に下り立ったのは、土曜日の0時40分。駅前のロータリーの空きベンチを確保して始発バスまでの3時間半の仮眠をとることにしたのですが、2時間ほどたったところでやってきたのは暴走族のお兄さんたちで、ベンチのあるプラットフォームの両脇をバリバリと轟音をたてながらゆっくり通過し、その後にけたたましいサイレンの音を鳴らしながら警察が追いかけていきました。まったく、災難だった……と思いながら再び眠ろうとしたのですが、私が寝ていたベンチは早朝の空港行きバスの発着場だったらしく、まだ3時半だというのに成田や羽田へ向かう人々が三々五々集まり始めました。これはダメだと観念して起き上がり、近くの吉野家で朝食をとってから広河原行きのバス停に並びました。

数時間後、芦安まで車で来てそこからバスを乗り継いだよっこさん・トモミさんと北沢峠で合流し、眠い目をこすりながら仙水峠を目指しました。カラフルなテント村と真新しい長衛小屋に驚きつつ緩やかな登り道を歩いて、昔ながらの風情の仙水小屋を横目に見ながらわずかに登ると岩礫の斜面が左手に広がり、やがてふと気付けば左前方に唐突に摩利支天。その現実感のないほどの巨大さに目を見張りながら仙水峠に着いて、ここで最初の一本を立てました。

仙水峠から甲斐駒ヶ岳とは反対の南方向へ急坂を登ること1時間20分、最後に岩がちの斜面をぐいぐいと登って、この日最初のピークである栗沢山に到着しました。早川尾根の北側からはガスが上がり始めていて甲斐駒ヶ岳も下部は白く隠されていましたが、それでも山頂から駒津峰、双児山にかけての山体はよく見えています。さすが「山の團十郎」、その大らかで個性的な姿の立派さは感動的ですらあります。かたや「南アルプスの女王」と呼ばれる仙丈ヶ岳も優美な姿を見せていて、その山頂の手前には先週登ったばかりの小仙丈カールがはっきり見られました。さらに左手に目を転じると真北から見る少し変わった姿の北岳の尖りがあり、その右遠くには兜のような塩見岳、そして塩見岳の左奥には特徴的な形をした聖岳もはるか彼方に見えていました。

栗沢山からアサヨ峰までは右手に仙丈ヶ岳を見ながら1時間の行程で、これは楽勝だろうと思っていたのに岩がちの尾根筋は意外にアップダウンがあり、真昼の太陽に炙られていることもあって消耗させられました。アサヨ峰は早川尾根の中では最高峰で、山頂の岩の上に立てばお山の大将という感じに浸れますが、視界の半分(北側)をガスで覆われたせいもあって展望はイマイチ(本当は鳳凰三山まで見通せていれば印象も違うのでしょうけれど)。さらに早川尾根小屋までの道のりも、右手の山が北岳に変わりはしたもののしばらくの間は似たような道でしたが、ミヨシノ頭を過ぎてしばらく進むと樹林帯に入り、直射日光からは逃れることができるようになりました。

もう着くかな?そろそろかな?と脳裏にビール缶の姿を思い浮かべながら歩き続けて、ようやく早川尾根小屋に到着。樹林の中にひっそり建つ小屋はいかにも古色蒼然としていましたが、受付ではまず麦茶のサービスをいただきました。テント代は1人400円、ビール代は1本600円(ちなみに1泊2食付で5,000円というのは破格の安さです)。小屋の1段下のテントサイトは広くはないもののきれいに整地されていましたが、我々は直射日光を避けて樹林の中の少々奥まった場所にテントを張りました。とりあえずの仕事を終えたところで、やっと乾杯!しばらくは持ち寄ったつまみでビールタイムにしましたが、夜行の眠気がつのってきたので適当に切り上げてお昼寝タイムとしました。

17時すぎになり気温が下がってきて目が覚めても、ヒロセ氏はまだ着いていませんでした。かろうじてつながっているよっこさんの携帯でメールをチェックしてもこれといった連絡は入っておらず心配し始めたところへ、小屋の上から真っ赤なTシャツの体格のいい登山者が下ってくるのが見えて、それが疲労困憊したヒロセ氏の姿でした。やれやれ、お疲れ様でした。

テントサイトに張られたヒロセ氏のテントの近くでの宴会は、私が持参した瓶ごとワインとヒロセ氏が黒戸尾根を担ぎ上げた瓶ごとOld Parrの対決になりましたが、これは意外性という点で明らかにヒロセ氏の勝ち。他の登山者が早々にテントに引き上げる中、我々は風流に月を愛でながらお酒と食事と会話を楽しみました。

2013/08/18

△06:45 早川尾根小屋 → △07:15 広河原峠 → △08:05-20 赤薙沢ノ頭 → △08:30 白鳳峠 → △10:30 広河原

他の登山者が早々に出発する中、我々はゆっくり5時に起床し、小屋の周囲の樹木の上部に日が当たる頃に出発しました。癒し系の緩やかな下り道を30分で展望のない広河原峠に到着し、すぐに登り返しにかかって高度を上げるにつれて樹間に右手の北岳が見えるようになり、その角度が昨日までと変わってバットレスや大樺沢を見せていることに歓喜しながらさらに登り続けると、見事な展望が開けた赤薙沢ノ頭に着きました。甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、北岳といった南アルプス北部の巨人たちが真っ青な空の下に連なるさまは壮観で、他に誰もいない小さなピークで360度の眺めを堪能しました。この展望に出会えただけでも、重い荷を担いで早川尾根を歩いた甲斐があったと言うものです。

名残り惜しい赤薙沢ノ頭からほんのわずかで下り着くのが白鳳峠で、ここから広河原への下り道はかつてシレイ沢を遡行したときに縦走してきて下った道でもあります。ヒロセ氏・よっこさん・トモミさんはさらに縦走を継続して鳳凰三山を南下し南御室小屋泊ですが、冒頭に記したように私はこの日のうちに下山しなければならないのでここでお別れ。皆さん、引き続きがんばって下さい。楽しい2日間をありがとうございました!

こうして高嶺への登り道に向かう3人を見送ってから、私は一人で野呂川への急下降の道を目指しました。

思ったよりも早く南アルプス林道に下り着いて上流側を見ると、昨日歩いていたアサヨ峰からミヨシノ頭にかけての尾根筋が見えていました。