塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

大丹波川真名井沢

日程:2013/08/07

概要:青梅線川井駅からバスで上日向下車。林道を歩いてとりがや橋から入渓し、遡行を続けて植林地に入ったところで左上の赤杭尾根へ上がる。そこから登山道を古里駅へ下山。

山頂:---

同行:アイコ

山行寸描

▲魚止めの滝。上の画像をクリックすると、大丹波川真名井沢の遡行の概要が見られます。(2013/08/07撮影)
▲高度感のある滝。遡行していくうちにぐんぐん腕を上げるアイコに驚く。(2013/08/07撮影)

◎本稿での地名の同定は主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)の記述を参照しています。

「8月上旬の平日なら、沢登りに行けるぜ」(←やや脚色)と無茶振りをしてきたのは、昨年久しぶりに沢登りに復帰したアイコ。仕方ない、ひと肌脱ぐことにするか。

2013/08/07

△10:15 上日向 → △10:40-11:00 とりがや橋 → △12:20-50 魚止めの滝 → △14:30 植林地 → △15:20-35 赤杭尾根 → △17:50 古里駅

……というわけで思い切り平日のこの日、青梅線川井駅でアイコと待ち合わせ。バスの便が少ないために、山に入るにはかなり遅い10時少し前の集合となりました。

改札を出てバス停はどこだ?と探し、青梅街道の少々上流にあるバス停をなんとか発見しました。ここから山間に入った上日向まではバスに乗ってたったの10分強でしたが、とても炎天下を歩く気にはなれません。

上日向バス停からそのまま道なりに上流へ歩いてすぐに出てくる立派な橋が「真名井橋」、これを渡って右に進み林道真名井線を20分歩いて沢を右岸に渡るところが「とりがや橋」。この「とりがや橋」が入渓点です。

装備を身に着けて橋の上流右側から踏み跡に入り、すぐに真名井沢に下りました。少し上流に進むと現役のワサビ田があり、その先の橋をくぐると立派な堰堤が連続しますが、いずれも左右どちらかに明瞭な巻き道があって遡行には困りません。

堰堤が終われば小さな滝も現れて「おっ、いい感じ」と思ったのですが、ここでアイコが「なんだか砂利が多いですね」と指摘しました。言われてみれば確かにずいぶん荒れた渓相で、ところどころには苔むしたゴルジュとかかわいい小滝とかが出てくるものの、その間の平坦な部分は砂利に覆われていてどうにも興ざめ。ついでに次々に行く手を阻む蜘蛛の巣にも閉口しながら遡行を続けて、左岸の上の方にオレンジ色の彼岸花(?)の群落を見送り、さらに小滝を一つ二つ越えたところで、砂利の原因である崩壊地が右岸に現れました。なるほど、こいつのせいであったか。ここを過ぎれば沢は穏やかな様相を取り戻し、そしてすぐに二俣になりました。ここで沢床の低い左俣を選択するとすぐに現れるのが魚止めの滝で、高さは6mとちょっとばかり威圧感がありますが、水流の右壁にはホールドが豊富で登れそう。まずは私から取り付いてみましたが、多少ホールドが甘く感じられる部分もあるものの特に問題なく抜けることができました。上からロープを投げてアイコも後続しましたが、これも淀みない登りで落ち口へ上がってきました。

ここから先、広葉樹林帯の中の苔むす真名井沢は、手元のトポでは魚止めの滝と古い取水パイプの滝との間に何もないように書かれていますが、実際には楽しい小滝がいくつかあって飽きることがありません。この間、アイコにはずっと先頭を行ってもらいましたが、滝を恐れる様子もなくぐんぐん遡行を続けてくれて、頼もしい限りです。

ただし昨年のシダクラ沢でもそうでしたが、蛙はアイコにとって不倶戴天の敵であるらしく、何度も悲鳴を上げて後ろを向いてしまっていました。よく見ればかわいいのに……。

古い取水パイプの滝は水線通しの直登は無理で左から滝のすぐ横を上がり、やがて出てきた5mほどの滝は見た目ホールドが豊富そうだったのでアイコに先に登ってもらいました。この滝は落ち口のところの大きな岩が丸まっていてちょっと不安定な態勢を強いられながら右へ抜けることになるのですが、アイコはここも問題なくクリアしてくれました。

この先はもう難しい滝はないだろうと思っていたのですが、1カ所テクニカルに面白い小滝がありました。たぶん本来は左から簡単に上がれるところなのでしょうが、この日は左壁に掛かった流木が邪魔をしており、右壁を出だしのガバカチで耐えて身体を引き上げレイバック風の態勢を作りながらガバをつないでいくという登り方が必要です。これはさすがにアイコには無理で、先に登った私が上からロープで引っ張り上げることになりました。

その後も楽しく直登できる小滝がいくつか続き、やがて右岸に植林地が現れたところで沢は倒木に埋め尽くされるようになりました。トポにも植林が出てきたら左の尾根へ上がれと書かれているので遡行はここで打ち切り、滑りやすい斜面を登ることにしました。

樹林帯の登りはなかなか厳しく、いったん平坦になったところでハーネスを外してさらに急斜面を登り続けましたが、ここはなるべく左寄りに登っていけば登高距離を短縮できたのに右手の尾根筋が登りやすそうだと勘違いしてルートどりをしたために余分に高さを稼がなければならなくなり、50分間の奮闘の末にやっと赤杭尾根の登山道に出ました。腰の曲がったお婆さんのような格好で登り続けていたアイコは登山道に出たときには「やったー!頑張った、自分!」と自分を褒めちぎっていましたが、確かにそれだけの価値のあるアルバイトでした。

しかし、登山というのは下界に着くまでは終わりではありません。尾根の上の古式ゆかしい登山道から最近整備されたと思しき林道を辿っての下山は2時間余りかかりました。

途中でやたらと目にしたキノコ類がわずかばかりの慰めにはなりましたが、延々と続く下り道にぐったり。実はこの赤杭尾根を下って古里駅に達する登山道は、まだ自分がただのハイカーでしかなかった1986年に歩いているのですが、まるで記憶が残っていません。

それどころかこの日の記憶が飛びそうになるほどうんざりする下りを経て、やっと下界に達しました。やったー!頑張った、自分!

真名井沢は、魚止めの滝から植林地に入るまでの間は小粒ながらも楽しい滝が次々に現れて本当に楽しい沢でしたが、その手前の蜘蛛の巣攻撃と砂利に覆われた渓相、そして遡行終了後の登りのきつさ(ルートどりで変わるとは思います)と下山の長さはマイナスポイント。もっとも真夏だったから下山がこたえたのかもしれず、新緑の季節ならより楽しめるかもしれません。

夕方だというのにまだまだ蒸し暑い古里駅で、まずは炭酸飲料で乾杯。その後は奥多摩遡行後の定番になりつつある河辺の「梅の湯」のお風呂でさっぱりしてビールで乾杯し、がっつりとんかつで打ち上げました。