塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

三ツ峠屏風岩鶴ルート / 中央カンテ / 直登カンテ

日程:2009/05/04

概要:三ツ峠屏風岩でトレーニング。登ったのは、鶴ルート(山頂までバージョン)、中央カンテ、直登カンテの3本。

山頂:三ツ峠山 1786m

同行:現場監督氏

山行寸描

▲9年ぶりの三ツ峠。ゲレンデといいながらも充実度は満点。(2009/05/04撮影)
▲「亀ルート」「鶴ルート」の出だし。上に見えているフレークをパワフルに乗り越える。(2009/05/04撮影)
▲朝の9時から夜の19時まで、よく遊んだもの。(2009/05/04撮影)

今年の黄金週間は後半に雨の予報だったため、ここ数年恒例となっていた北アルプスへのアルパインツアーは涙を飲んで中止。しからばと現場監督氏と三ツ峠へトレーニングに行くことにしました。

2009/05/04

△07:15 三ツ峠裏登山口 → △08:15 三ツ峠山荘 → △08:40 屏風岩左フェース → △12:45-55 三ツ峠山頂 → △13:20 屏風岩中央フェース → △19:05 登攀終了 → △19:25 三ツ峠山荘 → △20:05 三ツ峠裏登山口

前夜のうちに裏登山口に入っておいて朝方にのんびり出発し、ジープも通る歩きやすい裏登山道を登ること1時間で稜線に達しました。この曇り空では展望は望めないだろうなと思いながら展望地に立ち寄ってみると、意外にも目の前に富士山の姿がはっきりと拝めます。さらに、三ツ峠山荘では極めて人なつこい黒犬の、その下の登山道では人の姿をまるで意に介さないカモシカの出迎えを受けて、いよいよ屏風岩の下に到着しました。右フェースの方は見えませんが、少なくとも左フェースから中央フェースにかけては人っ子一人いないまったくの貸し切り状態です。

どこを登るかあらかじめ決めていなかったので、その場でトポを出して協議開始。左フェースの左端には有名な巨人ルートがあって、上の方には名前の由来になった巨人の顔(状の岩)も見えています。

現「IV+からV+までだから、手頃じゃないかな」
私「あのー、『IV+』じゃなくて『VI+』って書いてあるんだけど」
現「えっ、VI+?本当だ!」
私「朝イチからそれはちょっと厳し過ぎるんじゃ……」

こんなやりとりがあってその右側の、これも有名な亀ルートを登ることにしました。リュックサックは登山道脇にデポし、一応最初の階段状もロープをつけて第一バンド上の取付に移動。見上げる1ピッチ目は濡れている上に、頭上に突き出したフレークが威圧的です。

現「リード、どうする?」
私「お願いしようかな(←弱気)」

というわけで現場監督氏のリードでスタートしました。

〔鶴ルート〕

1ピッチ目(IV+)は垂直の凹角をずりずりと上がって、頭上のフレークを最初アンダーでとり、さらに身体を安定させて上からガバっと抱えて強引にフレーク上に乗り上がります。その後の立ち木テラスへの右トラバースも意外にバランシーで、グレード以上の難しさを感じました。

続く2ピッチ目(IV+)は私のリードで、前半が左斜上バンドを乏しい手掛かりを頼りに上がり、後半は立ったカンテを露出感たっぷりに回り込んで左上のバンドに乗り上がるまで。後半の方がIV+とされているようですが、自分としては前半の方が微妙で怖く感じました。

さて、ここから左に細〜いバンドが伸びていて、これがどうやら亀ルートの3ピッチ目となる八寸バンドらしく、確かによくよく見れば細かいホールドをつないでバランスを保つことも可能ながらあまり心臓によさそうではありません。それよりはさらに左上していくラインの方が自然で、3ピッチ目はそちらへ転進することになりました。こちらは「鶴ルート」と呼ばれており、目の前のピッチはIV級です。このさして難しくないピッチを終えて第三バンド上に着いたのですが、左フェースの各ルートはいずれも第三バンドを終了点にしているのに我々は中途半端なこの高さでルートが終了するとは考えず、さらに上を目指してしまうという判断ミスを犯してしまいました。

4ピッチ目は私のリード。とりあえず易しい岩を一つ上のバンドに上がって、そこで行き詰まりました。残置ピンはまるで見当たらず、見た目一番易しそうなところを選んで登ったものの先の見通しが立たないことからクライムダウン&立ち木を使ってロワーダウン。その隣のクラックはすっきりしていそうですがカムがなければ突っ込めない状況です。うーん、このルートファインディングの難しさは本チャン並みだぞ(←もともとルートがないので難しいのは当たり前)とうろうろした末に、たぶんこっちだろうと野生の勘で狭いバンドを左にトラバースしたところどうやら上に続いているすっきりした岩が見えて、そこにはハーケンも打たれていました。

立ち木で支点を作って現場監督氏を迎え、ここからは(我々にとっての)最終ピッチ。現場監督氏は立ったコーナーをステミングで登っていきましたが、壁の上端に乗り上がるところに信用できるホールドがなく、おまけにその上もぼろぼろの斜面で落石を起こさないようにするのが至難の厳しいピッチでした。無理矢理作られた終了点で現場監督氏と合流して「ひどい目に遭った!」と言い合いながらすぐ近くの山頂まで歩いて登りましたが、正直、ギア満載の格好でハイカーの皆さんの奇異の目に触れながら歩くのはかなり恥ずかしいものでした。また、そもそも第三バンドから上はぼろぼろで落石を起こす危険が高く、しかも岩場の取付は一般登山道になっているので、他者のためにも突っ込むべきではありませんでした。

クライミングシューズのまま登山道を下って元の取付へ戻り、簡単な昼食をとってからさて次はどうしよう?という話になりました。アブミも持ってきているので逆V字ハングは?という話も出ましたが、ちょうど他のパーティーがそちらに取り付いていたこともあり、現場監督氏はまだ登ったことがないという中央カンテに向かうことにしました。このルートも三ツ峠では定番ルートです。

〔中央カンテ〕

階段状を1ピッチ上がって強烈に堅固なつくりつけの支点で態勢を整えてから、現場監督氏のリードで登攀開始。

トポでは1ピッチ目(III)と2ピッチ目(IV+)となっているところをつなげて1ピッチとして、現場監督氏はすいすいと登っていきます。後続の私にとってはここは懐かしいルートで、最初の左上ランペは外岩で初めてリードをさせてもらったところ。支点の作り方もおぼつかない、初々しい(?)頃の記念のピッチです。が、そんな感傷に浸る暇もなく核心部の立ったクラックとなったものの、かつてどうやって登ったのかすっかり忘れていました。こんなに立っていたっけ?とどぎまぎしながら、とにかくクラックにフィストジャムを決め、足はステミングで身体を上げてなんとか解決しましたが、9年前の自分によくここが登れたものです(9年間ほとんど進歩がないということなのかも?)。

最後のピッチ(IV)は私のリード。クラックから左カンテへ足を飛ばすラインを覚えており、後は第三バンド下の立体的な岩の重なりをパズルを解くようにして登るだけです。

空中懸垂を交えて懸垂2回で取付に戻ったところで時計を見ればいい時間ですが、せっかくアブミを持ってきているのでどこか人工登攀のルートを登ってみようとトポを片手に右往左往。ちょうど逆V字ルートを降りてきた外国人クライマー(日本語が上手)とも会話を交わしてみましたが、結局、逆V字ルートの左隣の直登カンテが手頃でよさそうだということになりました。

〔直登カンテ〕

1ピッチ目(A2,IV)は私のリード。鶴ルートと中央カンテで使用したバラクーダが足指に痛かったので、アプローチシューズのフェノムXCRでの登攀です。出だしから10mあまりは何ということもない素直なボルトラダーで、「A2」とグレーディングされているのはその後にハングの乗越しがあるからだと思いますが、フィフィに体重を預けて立ち上がればなんとかハング上のボルトに手が届き、その上の斜面もIV級というほど難しくはなく無事に第一バンド上のビレイポイントに到着しました。ちなみにここをフリーで登れば「大道芸人」(5.12a)となり、そのためのハンガーボルトも設置されています。

続く2ピッチ目(A1)は現場監督氏のリードで、最初は垂壁、途中から顕著なカンテを薄かぶりの人工登攀となりますが、かえって巻き込み姿勢が決まってそれほど消耗はしません。ボルトの距離も最上段に立ち上がるほどではなく適正な間隔で、気持ち良く後続することができました。トポでは3ピッチ目となっているIII級のセクションも現場監督氏は継続して登っており、一応その右から顕著な三角形の切れ込みを私がリードして樹林帯まで達しましたが、その上の支点はスリングが腐って死んでおり、これはおまけだった模様です。

いつの間にかガスが流れ出してあたりも暗くなってきており、人気の絶えた岩場を懸垂下降3ピッチで登山道に降り着いたときには、すっかり暗くなっていました。

アルパインの本チャンルートに行けなかったのは残念でしたが、久しぶりの三ツ峠もなかなか充実したトレーニングとなり、満足の一日でした。しかし本当は今日登ったルートを、アイゼン&手袋で登れてこそのアルパインなのだろうと思います。そう考えると、アルパインの道は険しいなあ……。