一ノ倉沢衝立岩中央稜

日程:2005/05/21

概要:一ノ倉沢を詰めてテールリッジから衝立岩基部に達し、中央稜を登る。登攀終了後は同ルート下降。

山頂:---

同行:シュクラさん

山行寸描

▲一ノ倉沢出合。この時期のこの雪はかなり多い方なのだとか。(2005/05/21撮影)
▲テールリッジ全景。それにしても人がわずか。(2005/05/21撮影)
▲核心部手前のフェースのビレイポイント。本来はここで切らず、チムニーの上へ一気に抜ける。(2005/05/21撮影)
▲6ピッチ目の懸垂下降。「6ピッチ目」というのは登りでのカウントで、下降時にはここは上から5ピッチ目だったと思う。(2005/05/21撮影)

シュクラさんから5月の解禁直後の谷川岳に登ろうという誘いを受けて一ノ倉沢へ。ルートはお互いがそれぞれ登ったことのないところということで土曜日に中央稜、日曜日に中央カンテとしました。あいにく車のない悲しい身分の組み合わせなので、金曜日の最終電車で水上駅(23時57分着)に着き、そこから予約してあったタクシーで天神平ロープウェイ駅近くの谷川岳ベースプラザ(立体駐車場)まで。ここには初めて泊まりましたが快適で、今後「ホテル湯檜曽」など使う気にはなれないほどです。朝はゆっくり5時前に出て車止めのゲートを越え、新緑の美しい道を40分ほどかけて一ノ倉沢出合の駐車場に着きました。

既に何張りかのテントがありましたが驚くほどクライマーの姿は少なく、どうやらゆったりとクライミングを楽しめそう。我々もテントを張って余分な荷物をデポしてから、のんびりテールリッジを目指しました。

2005/05/21

△06:30 一ノ倉沢出合 → △06:55 テールリッジ末端 → △07:35-08:10 中央稜取付 → △11:50-12:25 終了点 → △15:10-35 中央稜取付 → △16:40 テールリッジ末端 → △17:05 一ノ倉沢出合

この時期の一ノ倉沢に来たのは初めてですが、出合には雪壁ができていて、シュクラさんによればこれは例年に比べてずいぶん雪が多いのだそうです。雪渓上のアプローチは軽登山靴で、上部にいくにつれて雪渓に角度が出てきますがそれでも不安になるようなところはなく、あっさりとテールリッジ末端に到着しました。

テールリッジはきれいに乾いていてフリクションもよく、岩のところどころにイワカガミ、ブッシュ帯にはコブシやシャクナゲが咲いていてなかなかいい感じです。右のコップスラブ方面を見ると雪がかなり残っていて北稜を下降したときはやっかいな目にあいそうな気がしましたが、我々は中央稜登攀後は同ルート下降の予定なので問題ありません。テールリッジ中間の傾斜の強いスラブ状の部分には真新しいフィックスロープが長く引かれていて、その助けも借りて難なく中央稜取付に登り着きました。

中央稜取付にいる先客は2人組のみ、それも衝立岩のダイレクトカンテを登るということなので、この遅い時刻にもかかわらず中央稜一番乗りということになりました。後から別の2人組が登ってきて我々を後続することになりましたが、それでも結局この日中央稜を登ったのは我々を含む4名のみ。空は晴れ岩は乾き、先行からの落石も心配しなくてよくてなんと恵まれたコンディションなのだろうと喜びながら、奇数ピッチは私、偶数ピッチはシュクラさんのリードというオーダーでスタートしました。

1ピッチ目(IV)、あいかわらず易しい。いったいどこがIV級?

2ピッチ目(III)、出だしを左奥に回りこんで土のルンゼを直上。

3ピッチ目(IV)、最初の際どいトラバースがちょっと嫌な感じですが、フットホールドを見つけて右へ回り込み、凹角からフェースを登ります。ところがこの辺りから浮き石がぐっと増えてきて、一見しっかりしているように見える岩も手で叩いたり足で蹴飛ばしてみるとボコボコと空洞があるような音がし、はっきりとぐらついている岩もあって慎重に進まなければなりません。フォローのシュクラさんも石が浮いていて嫌だとぼやいているし、後続パーティーのリードも同じ感想を漏らしていました。これは昨年の新潟地震のせい?

4ピッチ目(IV,A0)=核心ピッチ。シュクラさんの持っているトポにはここが25mと書かれていたためシュクラさんは途中の支点でいったん切っていましたが、もちろんここは上のチムニーを抜けてもらわなくてはなりません。そこで途中の支点から改めてシュクラさんがリードでロープを伸ばし、核心部をみごとにフリーで抜けていきました。フォローの私はチムニー直前で左のフェースに逃げたかったのですが、ランナーを回収するためにチムニーの中に入らざるを得ず、結局またしてもA0にしました。しかも前回登ったときにはチムニーには残置スリングが豊富だったという記憶がありますが、今日垂れていたのはぐらつくピトンにタイオフされた白いテープスリング1本のみで、その最後の1本をつかんで身体を引き上げた拍子にピトンが抜けて残置スリングが皆無となってしまったことをここで白状しておきます。

5ピッチ目(III)、凹角を登ってリッジ上の顕著なピナクルまで。

6ピッチ目(III+)、岩が堅くて快適なフェース。今日みたいな天気のいい日は最高の気分です。

7ピッチ目はブッシュ帯の右寄りの岩を拾いルンゼ上部に出て、8ピッチ目は岩場を左から回り込んで草付の上部まで。この後、最終ピッチは右に回って易しい凹角を登るのですが、事実上の登攀は既に終わっているので協議の結果8Pで終了としました。

尾瀬方面の眺めが良いテラスで行動食をとり大休止。ここからの同ルート下降はロープを2本つなぐとスタックして登り返しという羽目に陥る可能性が高いので、50mロープ1本で懸垂下降を繰り返すことにしました。シュクラさんが支点を補強してくれて、ここから順番を入れ替えながらの下降ですが、とにかく支点に届かなければえらいことになるので多少短いと思ってもこまめに切っていくことにしました。それでも、いざ下ってみるとロープがロープ自身に絡んでその処理に往生したり、支点にスリングを足さなければ不安な場所もあったりしてどんどん時間がたってしまいます。ただ、やはり我々同様50m1本で下るのはよく行われているようで、それくらいの距離ごとに支点がちゃんと出てくるのには助けられました。

最後に1ピッチ目を登りきったところのビレイポイントでようやくロープ2本をつなぎ、一気に真下の横断バンドへ下って終了です。結局登り3時間40分、下り2時間45分。やれやれ、ずいぶん時間がかかってしまった、と思いながらロープを畳んでいるときに、ブンッ……ドスッ!という音が身近でしてびっくり。我々の後に中央稜を登ったパーティーが下降中に石を落としたようでしたが、この日初めて落石の危険を身近に感じた瞬間でした。そして、もしかするとこれが翌日の敗退の予兆だったのかもしれません。

中央稜取付に戻ったときに衝立岩正面壁では雲稜ルートを登るパーティーがまだ奮闘中で、この時刻に壁のど真ん中ということはどこかでビバークするのだろうか?と見上げながらデポしてあった軽登山靴に履き替え、後はとっととテールリッジを下るだけ。雪渓を一ノ倉沢出合へ下ってテントに帰着したらガチャ分けをし、装備を翌日用に詰め直してから、まずはこの日の登攀成功を祝って持参したアルコールで乾杯しました。

どうか明日も晴れますように!

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