塾長の山行記録
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塾長の山行記録

横岳西壁小同心クラック

日程:2003/11/01-02

概要:初日は赤岳鉱泉まで。2日目に大同心稜を登り、大同心ルンゼを渡って小同心クラックを登攀。横岳山頂から硫黄岳方面へ少し下ったところから大同心ルンゼに入り、大同心稜を下降して赤岳鉱泉帰着。その日のうちに下山。

山頂:横岳 2,830m

同行:きむっち

山行寸描

▲大同心取付で小同心をバックに。上の画像をクリックすると、小同心クラックの登攀の概要が見られます。(2003/11/02撮影)
▲小同心2ピッチ目を登るきむっち。ちょっと歯ごたえのあるピッチをしっかり登ってきた。(2003/11/02撮影)
▲横岳山頂直下のきむっち。一般縦走路の登山者たちからカメラの集中砲火を浴びてまんざらでもない様子。(2003/11/02撮影)

2003/11/01

△11:20 美濃戸口 → △14:20 赤岳鉱泉

新宿駅を8時発のスーパーあずさ3号できむっちと合流。今年は精力的に沢登りに取り組んできたきむっちですが、いわゆるアルパインは未体験です。そこで、ちょっと岩が脆そうなのが心配ではありましたが、ロケーションがいい八ヶ岳の小同心クラックに冬への偵察を兼ねて行くことにしたのでした。当然、足回りはアイゼンではなくクライミングシューズです。

美濃戸口からの道は、カラマツの葉が黄葉を通り越して茶色くなりかけている様子を見ながらつとめてゆっくり歩きました。途中「やまのこ村」で大休止をとって、それでも赤岳鉱泉までは3時間ちょうど。元気がよければテントを張るところですが、今回は前週の長谷川恒男CUPの後遺症で膝が心配だったので、荷を軽くして小屋泊まりにすることにしています。早速宿泊を申し込み、大広間に寝床を確保したら缶ビールを買ってきて前祝い。夕食はおいしいカレーにおいしい鍋、そして豪快に生ラディッシュが入ったサラダですっかり満腹になりました。さらに食後は談話室で読書タイムとなりましたが、きむっちは『夏子の酒』、私は『沈黙の艦隊』……。

2003/11/02

△06:15 赤岳鉱泉 → △07:10-30 大同心取付 → △08:00-15 小同心クラック取付 → △10:00-40 横岳 → △10:50 稜線から下降開始 → △11:10 大同心取付 → △12:05-45 赤岳鉱泉 → △14:45 美濃戸口

日の出が遅いこの季節、朝食もしっかり小屋でとってからおもむろに外へ。こういうことができるのも八ヶ岳ならではのアプローチの良さです。硫黄岳方面への道に入って最初の沢筋が大同心沢で、その左岸につけられた踏み跡を上流へ進み、しばらく登ってから左手の尾根=大同心稜に上がりました。道は急斜面をぐんぐん登っていますが、昨日ペースをセーブして歩いたせいか快調なペースで高度が上がります。風邪気味のきむっちはちょっと苦しそうでしたが、それでもいいスピードで大同心の直下に到着し、まずはヘルメットとハーネスを装着しました。ここから見上げる大同心は凄い迫力で、正面壁には雲稜ルートの残置スリングが何カ所かに垂れているのが見てとれ、来年はここにトライするぞと心に誓いながら大同心の基部を右に回り込むバンドを辿って、大同心ルンゼを渡りました。

大同心ルンゼから小同心クラックの取付まではわずかの登りで、近づいてみるとなぜか頭上のヘンなところにロープが2本も残置してありました(末端が空中にあったので懸垂下降の跡とも見えないし)が、取付の小広いテラスには先行者はいませんでした。ここからの背後の眺めは抜群で、北アルプスの主だった山が白く雪に輝いているのを見ながらロープを結び、クライミングシューズに履き替えました。八ヶ岳では10月に一度雪が降ったという話でしたが、見上げる限りルート上に雪の残りはまったく見当たらず、そして上空は快晴で絶好のクライミング日和です。スタート地点の残置ビナに支点を作ってきむっちにビレイしてもらい、いよいよ登攀を開始しました。

1ピッチ目(IV-)はでこぼこのフェースを15m左上し、凹角に入って直上していくライン。「小同心クラック」と命名されてはいますが、どちらかといえばチムニーです。噂通りボルトやピトンの類は多くなく、途中1カ所は岩の出っ張りにスリングをかけてランナーとしましたが、岩は比較的しっかりしていてフリクションもよくきき、あまり不安は感じません。新しいボルトが二つ打たれたところでロープの残りを聞くとまだけっこうありそうなので、さらに急な壁を1段上がってみたら小さなテラスに立派な支点が作られていました。そこでピッチを切ってきむっちを迎えることにして下にコール。きむっちはランナーを回収しながらスムーズに登ってきて支点にセルフビレイをとりましたが、ここで「あっ、しまった!」。どうしたのかと思ったらATCを落としてしまったそうですが、取りに戻るわけにもいきません。今回は全ピッチ私がリードなので、私のATCを渡して先を急ぐことにしました。

2ピッチ目(IV)はすぐ上のハング下を右に回りこんで急なチムニーに入り、これをステミングで真上に登ると小テラスに出てそこに支点も作られていましたが、ロープの残りを確認し続けて進むことにしました。左側のかぶった岩にそっくりかえるようにして取り付き、腕力でここを突破すると後は簡単な登りでお日さまが明るい肩に飛び出し、50mロープぎりぎりで肩の突き当たりの支点に到着しました。長いピッチだけに後続のきむっちも時間をかけていましたが、一度もテンションをかけることなく無事に肩に到着しました。ここからは横岳山頂が近く、稜線を人が歩いているのがよく見えています。

3ピッチ目(III)はそのまま正面の凹角を登っても行けそうでしたが、ガイドブックにしたがって左のバンドを歩き、そこから右上したらあっという間に小同心の頭に着いてしまって拍子抜け。ここでロープを巻き、コンテで尾根上を横岳へ向かいました。

横岳直下(III+)はクライミングシューズなら何ということもない簡単なフェースで、それでも途中に残置ピンもあるので律儀にロープを伸ばしました。上に出たところが横岳山頂にどんぴしゃで、私「こんにちわ〜」登山者「ご苦労さまでーす」と緊迫感のない挨拶をかわして稜線に飛び出しました。山頂標識にスリングを巻き付けセルフビレイをとってきむっちを迎えると、登山者の人たちが皆カメラを構えてきむっちを待ち構えていて、まるで芸能人なみの扱いです。

山頂で軽く食べ物・飲み物を口に入れたら、ギアやロープをザックにしまって登山道を硫黄岳方面へ進みます。といっても硫黄岳まで登り返すわけではなく、大同心が左に見えるところでヘルメットをかぶり稜線を離れ、ザレた斜面を下って大同心ルンゼに入りました。途中の脆い岩場も全てクライムダウンで下降し、ほどなくして登りのときにトラバースした場所に下り着きました。ここから大同心を注意して見ると南稜の取付らしいリングボルトが2カ所見えて、時間もあるしもう1本登ってもいいかと一瞬思いましたが、この頃にはずいぶん気温が上がっていて岩の状態が不安だったので今回は見送り、そのまま大同心稜を下降しました。

赤岳鉱泉でおでんとビールで祝杯!さらにきむっち持参の白桃の缶詰を開けてしばらく寛いでから、美濃戸口へ向かいました。歩き出してすぐに振り返ると、雲がスピーディーに流れている青空をバックに大同心と小同心が高く、つい先ほどまでそこにいたことが信じられないほど。さあ、次は冬の横岳西壁だ。

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