塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

第11回日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」

日程:2003/10/25-26

概要:奥多摩の山々をめぐる71.5kmのコースを24時間以内に走破する長谷川恒男CUP。記録は22時間46分だった。

山頂:三頭山 1527m / 御前山 1405m / 大岳山 1266m

同行:---

山屋にとってもランナーにとっても気になるレース、日本山岳耐久レース「長谷川恒男CUP」(東京都山岳連盟主催)。武蔵五日市を起点とし、戸倉三山の市道山から醍醐丸に渡って笹尾根を北上、三頭山〜月夜見山〜御前山〜大岳山と縦走して、御岳山から日ノ出山経由武蔵五日市へ戻ってくる71.5kmのコースを24時間以内で走破するレースです。前から一度はこれに挑んでみたいと思っていたのですが、職場の同僚てっしーがランニングフリークなのを幸い、声を掛けて一緒に出場することにしました(しかし、あいにくてっしーは所用のためレース前日に出走キャンセルに……)。このコースの大半は、私が山を始めた初期の頃に細切れに歩いてはいたのですが、通して歩いたことはもちろんなく、今回下見もしなかったのでほぼぶっつけ本番です。

2003/10/25-26

武蔵五日市の駅から歩いてしばしの五日市会館で受付。ここでヘッドランプや水、食料などのチェックがあることになっているのですが、係員の指示にしたがってチェック用のテーブルに行くとリュックサックを開けるまでもなく、必要装備が書かれた紙がテーブルに貼ってあって「ここに書かれているものありますね?大丈夫ですね?ではがんばってきて下さい」と実におおらかなチェックで、その後に会館内の所定の場所でゼッケンとRCチップを受け取りました。

この大会では主催者側からの補給は第2関門での飲料1.5リットルのみで、自分が必要とするものは自分で最初から担ぐというのが基本コンセプトになっていますが、受付会場内のスポンサーコーナーでは、行動食はもとよりウェア、シューズまで揃えることができます。

更衣室は道をはさんでお向かいの中学校の体育館で、その校庭がスタート地点になっています。この日の私のいでたちは、足はノースフェイスのULTRA102、下半身はCW-Xエキスパートといかにもランナーっぽいですが、上半身はクロロファイバーの長袖アンダーウェアの上に半袖Tシャツという山屋ルックで、背中のリュックサックはユニクロの1,800円のデイパックです。しかし辺りを見回すと、あからさまにランナースタイルもいればニッカボッカで固めた山屋もおり、その統一のなさがこの大会の性格を如実に現しています。つまり、この大会はランナーのスピードと山屋の歩行技術がともに求められるというわけです。

開会式で「Let's go!!」と気勢をあげているのは、アメリカのトップトレイルランナーのScott Jurek(左)とBrandon Sybrowsky(右)。会長の挨拶も簡潔で親しみやすかったし、競技委員の説明も「まぁ全員は完走できないと思いますけど、がんばって下さい」と脱力系で、よい(?)開会式でした。

スタートは13時ちょうど。五日市の市内を通り抜けて秋川の南から山に入りました。今回、私はタイムトライアルの発想は捨てて24時間以内の完走のみを目指すことにしているので出だしはゆっくり早足程度のスピードで流れについていきますが、1,400人も参加していればいろんな人がいるわけで、ランナースタイルでびしっと決めているのにスタート後30分で足をつらせている男性や地下足袋でひたひた歩くおじさん、一人でぶつぶつとあらぬことをつぶやきながら走る若い男など、周りを見ているだけでも飽きることがありません。コースは市道山までの峰見通りも細かいアップダウンがきつかったのですが、なんといっても醍醐丸から徐々に高度を上げて三頭山を目指す笹尾根の縦走が恐ろしく長くてこたえました。

笹尾根に入ってしばらくしたところで素晴らしい夕焼けと富士山を左に眺めながらヘッドランプを用意し、やがて暗闇の中を同タイムの集団をいくつも作りながら北上し、第1関門の浅間峠で行動食をとりさらに北上を続けましたが、そのうちまだ19時頃だというのに睡魔が襲ってきました。ヘッドランプはペツルのティカプラスで、焦点が定まらないLEDランプであることもあるいは影響していたかもしれません。最初のうちは眠気を我慢していましたが、そのうち足元がふらつきだして道を踏み外しそうになってきたのでたまらず三頭山手前の西原峠で仮眠をとりました。しかしこの夜はかなり気温が下がっており、ゴアテックスの雨具を上下とも着ないと寒くてとても眠れません。以後も5〜10分程度ずつこまめに仮眠をとりながら先に進みましたが、三頭山から鞘口峠への急下降で膝を傷めてしまい、ここからの縦走は厳しい苦行となってしまいました。

第2関門では飲料(水またはエネルゲン)を補給することができます。ここも含めてコース上の随所に大会運営メンバーが寒い中立ち尽くしながら選手の誘導と声援を行っており、その献身的なサポートぶりには本当に頭が下がります。

これはなんの写真かわかるでしょうか?実は、コースの脇に倒れこんで眠り込んでいるランナーの姿です。コース上のちょっと平坦なところには必ずといっていいほどこうした力尽きたランナーが転がっており、まさに死屍累々。中には半袖・膝丈パンツ姿でぴくりとも動かず「このままでは疲労凍死するんじゃないか?」と心配になってくる者も少なくありません。しかし、彼らは10分もするとゾンビのようにむっくり起きだして再び足を進めるのです。私も疲れたら草の上に丸まって小刻みに眠りながら進んだため、御前山と大岳山の鞍部の大ダワを越えるあたりまでは時間内にゴールに辿り着けるかどうか自信がなかったのですが、大岳山への登りが意外にはかどり、快晴の大岳山の頂きで三頭山と御前山を振り返り見たときに、ようやく完走を確信しました。

残り200mをてくてく歩いていたら後ろから走ってきた元気なランナーが「最後は走りましょうよ。写真も撮ってくれるそうですよ」と声を掛けてくれたので、私も最後(だけ)は元気な姿でゴールインし、拍手で迎えていただきました。膝はガタガタ、靴はボロボロ、まったくひどい目にあった……というのが走り終えての正直な感想ですが、完走できたことの充実感はこの上もないものでした。なお、全体では1,457名が出走して完走したのは1,102名で、私の総合順位は988位。そしてトップのタイムは8時間24分です。うーん、恐ろしい……。

▼タイム
第1関門 第2関門 第3関門 ゴール
05:53 12:44 19:26 22:46