塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

水無川新茅ノ沢〜広沢寺弁天岩

日程:2001/06/17

概要:丹沢の新茅ノ沢をF5まで遡行。大棚12mを登ってから懸垂下降し、巻き道を使いつつ入渓点へ。その後広沢寺弁天岩へ転進。

山頂:---

同行:黒澤敏弘ガイド

山行寸描

▲核心部のF5(IV+)全景。先行パーティー5人が抜けるのに50分かかった。(2001/06/17撮影)
▲F5上部をリードする黒澤ガイド。この後私もリードしたが、カメラが湿気でダウンしたため映像はなし(残念!)。(2001/06/17撮影)

2001/06/17

△09:55-13:05 新茅ノ沢 → △15:15-18:30 広沢寺弁天岩

〔新茅ノ沢〕

久しぶりの沢登りは、戸川林道から丹沢表尾根の烏尾山へ突き上げる新茅ノ沢。テクニカルな12mの大棚F5が難しく、過去に事故も多発していてガイドブックに「初心者には(直登は)勧められない」との御託宣あり。

『猫の森』の車を新萱橋の先に駐め、沢靴を履いて入渓すると、両岸が迫っている沢の中は全体に暗くひんやりしています。出だしの3mの滝を難なく越えて次の7mがF1で、ここは50mロープの先頭に黒澤ガイド、最後尾が私、その真ん中に去年北岳バットレスで御一緒したM氏がアンザイレンされたかたちで左のクラックから越えました。以下、7mのF2、4mのF3を登って5mのF4は左から軽く巻くと、前方にいよいよF5が立ちはだかりました。

F5までは入渓からたったの20分で到着したものの、F5の下には5、6人のパーティーが待機しており、1人ずつ上から確保されながら登っていました。しかし、見ればサブリーダーらしき最後の1人を除いてほぼ例外なくランニングのクイックドローを掴みA0にしてしまっています。これをただぼけっと眺めているのも芸がないので、急遽黒澤ガイドによる「ツェルトの張り方講座」が開催され、立ち木へのロープの縛り方、ツェルトのぶら下げ方など一通りの講議をしてもらいました。

50分ほど待ってようやく先行パーティーが上に抜けたので、いよいよ我々の番です。まず黒澤ガイドが手本を示しながらリードしましたが、滝の右から取り付いて下から2分の1くらいのところで右手を横に引きながら水流の中にホールドをとりに行くところがポイント。さらに落ち口近くも意外に悪く、落ち口から離れて右へ逃げても可との話でした。黒澤ガイドが上で確保の態勢をとってから、まずM氏が登り、次に私の番が来ました。水流の中に果敢に手掛かりを求めに行くところは予想外にホールドが遠く、上から水圧を受けて物理的にも心理的にもプレッシャーがかかります。ここを切り抜けても最後が行き詰まりかけましたが、何とか上に登り着き右岸のしっかりした確保支点に到達して懸垂下降で滝の下に降りると、後続パーティーがいないことを見てとった黒澤ガイドが「リードやってみますか?」と誘いをかけてきました。

寒さと緊張で武者震いしながら、先ほど登った滝の右手の壁に今度は上からの確保なしで取り付きました。幸い今日のF5には名物の「花を生けた牛乳瓶」もないので、勇気を振り絞って登るだけ。ランニングの支点は古いハーケンで、ここに細いスリングを通してクイックドローをかけるのですが、ロープをクリップするまでの間にも飛沫がかかってきて寒さのために筋肉が消耗してくるので、とにかく手早く登らなければなりません。1本目をクリップしたら左足を外傾したフットホールドに乗せて左へ回り込みつつ身体を上げ、1段上のフットホールドに右足を上げて左足を水流の中に止め左手いっぱい伸ばしたガバホールドを取ってさらに1段上がる……とここまではうまくいったのですが、この次の1手がわからずしばし逡巡しました。やがて先ほどはさらにシャワークライムを続けて水流の中を行ったことを思い出しましたが、右を見るとちょっと高いところに格好のフットホールドが見えています。その先のホールドに右手を掛け、右足を上げてじんわり立ちこんで行くと目の前に残置ピンがあってどうやらこのムーブが正解だった模様。後は傾斜が立ってはいるもののホールドには困らないIV+くらいのフェースクライミングとなって、最後を右に逃げて先ほどの確保支点へ無事に逃げ込みました。流動分散を作って確保態勢を整え、ギアを回収しながら登ってきた黒澤ガイドを迎えましたが、確保支点までやってきた黒澤ガイドが開口一番「塾長さん、リードのときはいいムーブをしますねぇ」。

懸垂下降でF5の下へ降り、F4からF1までは左岸を巻いて、最後に3m滝をクライムダウンして終了。久々の沢登りで水に親しみ、滝のリードも成功して充実感に包まれました。

〔広沢寺弁天岩〕

本来なら今日は沢登りだけなのですが、ワケあってスペシャルメニューがおまけについています。車で広沢寺へ移動し、今度はクライミングシューズに履き替えました。テーマは「人工登攀」で、中央フェースの左側にある前傾ハング帯の「最強のA1」というライン(「ナバロン」と「パピヨン」の間)でアブミの練習を行います。M氏と交代でTRで黒澤ガイドの指導を受けましたが、1回目は2本目のボルトにアブミをかけることすらできず敗退。しかし休憩しながらM氏が黒澤ガイドにしごかれている様子を横で見ているうちに気付くところがあり、2回目はなんとアブミの掛け替え4回からハング上のフェースのフリーに移行してアブミを回収するところまでノーテンでできてしまいました。といってもアブミの中に足がずっぽり入ってしまったりクイックドローを外し忘れてフェースに乗り上がってしまったりといった失敗もあり、そのたびにギャーギャーわめきながら1手戻ってトラブルを解決したので黒澤ガイドもM氏も恥ずかしい思いをしたのではないでしょうか。ともあれポイントは、アブミに乗った足をしっかり巻き込み反対側の足を極力高い位置で壁に押し付けて上体を垂直に保つことにあると理解しました。しかし3回目は既に消耗著しく、3本目のボルトにアブミをかけるところで力尽きてしまい、ここで人工登攀の練習は終了。仕上げに中央フェースを大きくトラバースして一般ルート右クラックを登りましたが、普段なら問題なく登れるこのルートも体力の限界に達していたのか出だしの核心部で二度続けてフォールしてしまい、最後は上から引っ張りあげられるようにして登ることになりました。しかもそれで無事に終わるほど黒澤ガイドは甘くなく、終了点手前をひいひい言いながら登っているところへ次なる指示が飛びました。「それではここで振り子トラバースの練習をしてみましょう」……こちらも覚悟を決めて宙を駈けました。

終了点からは、50mロープ1本なのでピッチを2回に切って懸垂下降し、今日の講習を終了しました。帰宅してみると膝やすねは傷とあざで真っ赤、指先もじんじん痺れていて、強烈に盛り沢山だった一日が改めて思い起こされました。