広沢寺弁天岩
日程:2001/06/02
概要:岩登りのゲレンデ・広沢寺弁天岩で岩登り講習会に参加。
山頂:---
同行:黒澤敏弘ガイド
山行寸描
2001/06/02
△09:55-15:00 広沢寺弁天岩
今日の弁天岩は数日前の雨で水がしみ出し遠目にはいやな感じですが、近づいてみると主だったルートはおおむね乾いていて問題なし。今回は職場の同僚でフリークライミングを体験してみたいというエイジを連れて来ていて、『猫の森』の黒澤ガイドに道具一式を貸していただいての初心者講習と私のリード練習を兼ねています。
樹林帯の中でエイジに道具を身につける方法をひと通り説明して準備を整えてからいよいよ岩に向かいましたが、初めて岩に触れるのに最適の右側の小さな壁は派手な嬌声から明らかに初体験講習とわかる大パーティーが占領していたので、仕方なく必ずしも初心者向けとはいいがたい左奥の壁に向かいました。まず黒澤ガイドが私のビレイで最左端ルートの途中までロープを引っ張ってクイックドローにかけ、当然それではトップロープの支点として十分ではないのでそこから右へ3mほどトラバースしたところにある支点を経由させました。この後黒澤ガイドが初受講者に必ずやる儀式があって、初受講者に確保させておいて黒澤ガイドが上に登ってからいきなり予告なしに宙に飛んで初受講者に止めさせ「ほら、落ちても大丈夫でしょう?」とやるのですが、だいたい初受講者は人が空から降ってくるなどとは思っていないので驚いてしまいます。エイジも後でこの荒っぽい洗礼を受けるのだろうな、かわいそうだな、とほくそ笑みながらロープを操作していたら、支点で作業を終えた黒澤ガイドと目が合い、その目がにやっと笑ったような気がしてギクリとした次の瞬間「て〜んしょ〜ん!」と声が掛かっていきなり黒澤ガイドが飛びました。何のことはない、私がハメられたわけです。
この後、TRでこの中間支点まで登ってロワーダウンという手順をやってみましたが、エイジは岩登りの経験がまったくないにもかかわらずなかなかのスピードで登れたのには驚きました。ただし、さすがにロワーダウンでロープに体重を預けるのは初めての彼には恐かったようです。ついでロープを伸ばして最左端ルートを一番上まで登ることにしましたが、4人パーティーがやってきて最左端ルートと隣の左凹角ルートの間の狭いところに割り込んできたため黒澤ガイドは一気に不機嫌に。ロープの流れこそ重ならないようにしてはいましたが出だしは同じ斜面を使うことになって順番待ちが生じる上に、4人のうちの2人はどうやら経験が少ないらしく動きもスロー。とは言っても今日の広沢寺は混み合っているので仕方なく、まずエイジ、ついで私がTRで上がってロワーダウンという同じ手順を繰り返してから、私が前回の宿題としていた最左端ルート(IV+)のリードに取り組むことになりました。ラインの途中にあらかじめ掛けられているクイックドローは全部で4本で、そのうちの下の方でロープをクイックドローにクリップしようとしていたら黒澤ガイドから妙に切迫した声で「早く掛けて!」と指示が飛びました。「?」と思いながらロープを処理してさらに上に進み、4本目のランニングから上はボルトが見つけられず5mほどのランナウト気味になって無事終了点に到着。ロワーダウンしたところ、「早く掛けて!」の指示が飛んだのは後続の別パーティーのメンバーがなぜか私のロープにつかまろうとしていたのだということを聞いてぞっとしました。こちらはまだ低い位置だったしクリップする直前ですから一番ロープが出ている状態にあるわけで、そこで後ろから引っぱられて落ちればグラウンドフォールは免れなかったでしょう。また、最上部のランナウトしたところでもその女性が私のフォールラインに入っていたそうで、確実にボルトを見つけてクリップするようにとの注意を受けました。
休憩後、今度は中央の壁に向かって最初にクラックルート(IV+)をTRで登りました。ここは出だしの数mが核心部で、右手をクラックの奥に入れて固定し、右足を一歩高い位置に上げて左手で遠いホールドをとったら左足を壁に押し付けて一気に身体を引き上げる、というムーブになりますが、エイジはここもスムーズに乗り越えてみせて感心させられました。上まで着いたら今度は懸垂下降で、当然エイジは初めて。地面から45mの高さまで登らせておいてからおもむろに懸垂下降の仕方を教える黒澤ガイドもずいぶんだと思いましたが、エイジは少々びびりながらもなんとか無事生還しました。ついで一般左ルート(IV+)をTRで1本登ってから、最後に私がリード。今回は途中のテラスまでの10mもリードし、そこに確保支点を作るというテストが加わっていましたが、手順が全然頭に入っておらず横に上がってきた黒澤ガイドに「何やってんですか」と呆れられてしまいました。
- まずしっかりしたボルトに仮の自己確保。
- 流動分散を作ってメインロープのインクノットで本確保。
- 後はATCをセットするだけという状態まで仕事をしてから「ビレイ解除」をコール。
- ロープをたぐり上げて「ロープいっぱい」のコールを聞いたら後続の確保にかかる。
という一連の手順が淀みなくこなせないと、マルチピッチでリードを勤めることはできません。というわけでまたまた課題を次回に残しつつ前回も登った一般左ルートを上までリードし、終了点で黒澤ガイドとエイジを迎えて、最後に懸垂下降で下界に戻って今日の講習は終了となりました。
エイジの感想は「恐かった……」ですが、どのルートも逡巡することなくぐいぐい登ってきたのは立派。これをきっかけにクライミングに親しんでくれればうれしいのですが。