丹沢横断④
Rec. 998
日程:2026/04/15-16
概要:途中宿泊を入れて西丹沢から東丹沢へつなぐ丹沢横断コースの第四弾。山中湖畔の平野を起点として、初日は金山沢沿いの林道に下り大栂経由で地蔵平。さらにセギノ沢を遡行して大滝峠に上がり、一軒屋避難小屋から箒沢権現山に立ち寄って箒沢に下って宿泊。翌日、犬越路を越えて神ノ川ヒュッテから地蔵尾根経由で地蔵平に上がり、姫次の先から縦走路を離れ榛ノ木丸を経て大平へ下って鳥屋まで歩く。
◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
◎GPSログのダウンロードは「ヤマレコ」から(要ログイン)。
山頂:大栂 1204m / 箒沢権現山 1138m / 榛ノ木丸 1312m
同行:---
山行寸描
過去3回実行している長尺山行「丹沢横断」。その3回目を歩いたのはつい先月のことでしたが、バリエーションの要素を削ぎ落として長距離を歩くことにフォーカスしたプランだったのに、3日目の天気に恵まれなかったことから相州アルプスへの継続を諦めることになったため、不完全燃焼に終わっていました。そのためどうしてもこのままで終わらせたくないという思いが募り、3回目からまだ1カ月もたっていないこのタイミングで第4回を実行することにしました。
ルート選定に際しては、上の図のようにまず過去3回の軌跡を地図上に引いてから、これらとなるべく重ならずに西から東へと繋げられるラインを探すわけですが、ざっと眺めると3本の軌跡と甲相国境稜線の間にまだ新しい線を引く余地が残っていそうなので、ここを横断するプランを何通りか作ってシミュレーションしてみました。その結果できあがったのが、山伏峠付近から西丹沢に入り、大栂を経由して地蔵平に下ってさらに一つ山越えを行い中川川流域に出たのち、犬越路を通って東丹沢方面へ抜けるプランです。
ただし問題は宿泊場所で、菰釣山と犬越路の二つの避難小屋を使えば2泊3日のゆとりのあるプランにすることができますし、過去には菰釣山避難小屋をありがたく使わせてもらったことが何度かあるのですが、今や避難小屋への計画的宿泊は控えることがコンセンサスになっているため、平野での前泊付きの1泊2日として箒沢を中継地とすることとしました。その結果、1日あたりの距離が長いために初日も2日目も極端な早立ちを要するせわしない行程になった上に、後述するように登山道の一部が使えず林道の通行止め区間があることもプランニングを不自由なものとしましたが、そうした制約要因を受け入れた上でどのような線を地形図上に引くことができるかを考えるのも、この手の山行の面白みです。
2026/04/15
△03:00 山中湖平野 → △04:10 山伏峠 → △04:40-45 水ノ木分岐 → △06:30-35 林道分岐 → △08:35-45 大栂 → △10:50-55 地蔵平 → △13:25 大滝峠 → △14:15-20 一軒屋避難小屋 → △15:55-16:00 箒沢権現山 → △17:25 箒沢荘
前夜は山中湖平野のリーズナブルな価格の宿に泊まり、この日の2時半に起床してコンビニで朝食。しばらく晴天が続いていた山梨・神奈川も雨男である私の来訪を察知してこれからの2日間だけ思わしくない天気予報です。


3時ジャストにコンビニ前からスタートして、まずは山伏峠を目指します。この車道区間は昨年の丹沢横断②のときにも歩いているので、今回は途中から右に折れて富士岬平から水ノ木分岐(要所小屋ノ頭)まで甲相国境稜線を歩きたかったのですが、山行直前になって富士岬平から大棚ノ頭までの区間が崩落のため通行止めとのニュースが入ってきたため、やむなく再び車道を歩くことにしました。


トンネルを抜けたところから折り返して山腹の道を上り、国境稜線に達したらわずかに北へ進むと水ノ木分岐。そこにあるテーブルを借りて身繕いを行って、西丸へ伸びる尾根に入る頃から徐々に空が明るくなってきました。昨年はこの尾根上にある西丸と東丸を越えて尾根の末端にある水ノ木まで下ったのですが、今回は西丸の手前から左に巻き下る道を辿って金山沢へ降りてしまいます。山伏沢での沢登りのアプローチとしても使われるこの道(山伏歩道)は、ところによりやや際どく感じる場所もあるものの、おおむねよく踏まれていてわかりやすい道でした。

金山沢に到着。対岸にこれから歩く水ノ木林道が見えています。これを下っていけば水ノ木に達し、そこから地蔵平に出るために昨年は織戸峠・富士見峠越えの道を採用しましたが、今回は水ノ木の手前で方向転換して大栂を経由しようというわけです。


水ノ木林道をてくてくと歩いて、菰釣橋で左に折れて今度は菰釣山林道に乗り換えます。この林道はすぐに富士見林道を分けて水ノ木沢の左岸を上流へと伸びていますが、大栂から南西に降りてくる尾根の末端にある林道終端部の表記が地形図と林班図とでは異なっています。地形図ではこの尾根のあたりで林道が終わり、そこから点線が左岸をさらに上流へ続いているように書かれていますが、林班図ではこの尾根の末端を過ぎたところでUターンして尾根の南側を巻いており、実態も後者の通りになっています。


菰釣山林道のどん詰まりからは、適当なところから左斜面に取り付いて尾根の上に乗り、そこからは尾根通しに大栂まで一本道です。この尾根は2018年の水ノ木沢の遡行の際にアプローチで下降したことがあり、特に悪場がないことはわかっています。

ひと頑張りで大栂に到着。ここに達する少し前に雨がぱらぱらと降ってきたため雨具に着替えましたが、幸いなことに雨はすぐにあがってくれて、遠くには青空も見えています。どうやら予報通り、本格的な雨になるのは夜になってからのことのようです。

大栂から椿丸方向へわずかに進んだところから東方向へ伸びる尾根が上法行沢左岸尾根と呼ばれる尾根で、地形図通りの緩やかな下りの途中にはブナの美林が広がり、気持ちの良い尾根でした。

さらに、この尾根の途中にあるP1024はそこだけ伐採によって好展望が得られ、あいにくの雲の中に裾の部分だけでしたが富士山の巨体も見ることができました。このピーク上は細長い広場のようになっていて、天気が良い日にここで富士山を眺めながらお弁当タイムにしたらさぞ楽しいだろうと思えるところでした。


さらに尾根を下り続けて、眼下の林道に無事着地。そこは富士見林道と富士見峠林道の分岐のすぐそばで、これから向かう地蔵平へ直行するのであれば南側の富士見峠林道を使った方が早いのですが、これも昨年の丹沢横断時に歩いているので、今回は北側の山腹をぐるっとトラバースしていく富士見林道を歩きました。それにしても、水ノ木林道や菰釣山林道やこの富士見林道はたいへんな労力をかけて作られたはずなのに、今や随所で車両の通行ができない状態になっていることを見ると、果たしてその設置コストは回収できているのか?と疑問に思えてきます。


いつ来ても癒される地蔵平で小休止した後、中川川流域へ向かうために昨年は三ヶ瀬古道の一部を使って二本杉峠を越えましたが、今回は東北方向へセギノ沢を遡行します。この沢はかつて地蔵平から大滝峠を越えて中川川流域へ出る道が通っていたところで、その痕跡を探るためにこの沢に入る篤志家もいますが、今回はそうした古道探索のための時間はないので、とにかく進めるところを進むのみです。


地蔵平を離れてしばらくは地蔵沢林道になっており、この道が左岸から右岸に渡った先で堰堤が目に入ってきます。ここを私はそのまま右岸側から越えたのですが、実はこの堰堤の手前で林道は再び左岸に渡っていたようで、そちらにははっきりした道型が続いています。ちょっと冷や汗をかきながら堰堤の上流に出たところでそのことに気づき、ただちに軌道修正して左岸の道に復帰しましたが、この道は沢筋から意外に高いところを上流に向けて続いていました。


割れたカーブミラーに諸行無常を感じ、岩屑で道が覆われた斜面を慎重に渡って、やがて到達したのが大滝沢橋で、林道はここからセギノ沢を離れて左隣にあるバケモノ沢に向かいます。よってそのままセギノ沢の上流に進むにはここから沢に降りなければなりませんが、橋の上流側に容易に下れる踏み跡ができていました。


大滝沢橋のすぐ上流側にある堰堤は、右(左岸)から高巻きます。ここも踏み跡明瞭である上にトラロープもあって、進路に迷う心配はありません。

20分ほど進んだ先にこの沢で唯一の滝らしい滝が現れました。これは右壁が階段上になっており、簡単に滝の上へ出られます。なお、この滝の前でも後でも沢を左右に渡らなければならない箇所があるのですが、水量が少ないおかげでどこでも飛び石で渡ることができ、この日履いているトレッキングシューズも濡らしたのは底だけでした。

滝のすぐ上流には最後の堰堤がありますが、これは左(右岸)から越えることになります。ただし、少々急な土の斜面を登って堰堤左端の狭い踏み跡に乗ることになるため、チェーンスパイクを装着した方が無難です。


あとは淡々と沢筋を進み、最後にGPSの力を借りていくつかも分岐を適切な方向へと進んで、沢筋の突き当たりに乗り上がるべき尾根が見えたら早めに右の尾根に逃げれば、難なく大滝峠近くの登山道に乗ることができました。

本当の大滝峠には、地蔵平方面へ下る道の跡が残されています。今回は古道探索ははなから考えませんでしたが、いずれ大滝峠からこの道がどこを通ってセギノ沢へ降りているのかこの目で見てみようと思います。


大滝峠上のベンチで一息ついたら、一軒屋避難小屋まではよく整備された登山道です。少し前に丹沢の避難小屋に設置された消火器が次々に盗難被害に遭っていることが話題になっていたので気になって小屋の中に入ってみましたが、幸い消火器はあるべきところに設置されていました。


そしてこの日最後のアルバイトは、この一軒屋避難小屋の近くの尾根から登る権現山です。丹沢にある他の権現山と区別するために箒沢権現山と呼ばれるこの山の姿は、取り付いた尾根の途中からきれいな三角形に見えて登高意欲をそそります。

権現山は全体が樹林に覆われていますが、山頂からは丹沢湖方面だけが開かれていて見事な展望を堪能することができました。なるほどこの展望が得られるなら、この山だけを目当てにこの地に足を運ぶのもありです。


……などと褒めたのも束の間、権現山からの下りは厳しいものでした。通常ルートとしては登ってきた道を少し戻って畦ヶ丸に通じる尾根の途中から北側に下り西丹沢ビジターセンターへ出る道が用意されており、バリエーションルートとしても西丹沢ビジターセンターへ下る尾根の方は傾斜がマイルドなのですが、箒沢へダイレクトに下る尾根はまずもって傾斜がきつい上に、途中にはなかなかトリッキーなセクションもあって一筋縄ではいきません。ありがたいことに赤丸のマーキングが方向を示してくれているのですが、暗くなってからこの尾根を下るのは危険だとすら思えました。


それでも200mあまり高度を下げると傾斜が緩み、そのうち謎の電線にも導かれるようになって、無事に箒沢に降り立つことができました。宿にあらかじめ伝えてあった到着時刻は18時でしたが、それより30分ほど早い下山となりました。
この日の宿は箒沢荘です。投宿したらまずは入浴、そしてビールで一人乾杯して、14時間半行動を終えた自分の身体を労わりました。明日の歩きも14時間の予想です。がんばろう。


それにしてもこの宿はすてきです。広い一部屋をあてがってもらった上に夕食はご覧の通りヤマメや山菜が並ぶ豪華版で、これで6,600円(朝食は頼んでいません)というのはコスパ最強では?ぜひリピートしたいものです。
2026/04/16
△04:20 箒沢荘 → △05:10 用木沢出合 → △06:40-07:05 犬越路 → △08:15 神ノ川園地 → △09:10-25 広河原入口 → △09:50-55 岩水沢出合 → △12:55-13:05 地蔵平 → △13:35 姫次 → △14:35-45 榛ノ木丸 → △16:45 大平 → △18:30 鳥屋
前夜20時に就寝して午前3時半に起床し、平野で買ってあった惣菜パンの朝食をとってから出発。就寝時には雨音が聞こえていましたが、幸いすでに雨はあがっている模様です。昨日は大栂越えと大滝峠越え(セギノ沢)、それに箒沢権現山という三つの課題を設定していましたが、この日は神ノ川から地蔵平に向かって登る地蔵尾根と姫次の近くから派生する尾根の先にある榛ノ木丸という二つの課題を設定しています。


箒沢から地蔵尾根の取付きに近い広河原に出るためには犬越路隧道を通り抜けて神ノ川林道を下るのが手っ取り早く、また犬越路隧道を見たことがなかったのでこのコースに興味をそそられたのですが、確認してみると神ノ川林道の広河原〜犬越路隧道間は歩行者も含めて通行止め。このため、遠回りにはなりますが用木沢出合から犬越路を越えることにしています。道なき道を行くのであれば「自己責任」という言葉も使えるかもしれませんが、設置者・管理者がいる林道を使わせてもらうのであれば、これはもうその管理者の指示に従うしかありません。


犬越路への登路は下部で何度か渡渉がありますが、夜半の雨にもかかわらず水位は上がっておらず、昨日と同じく靴をほぼ濡らさずに進むことができました。しかし、犬越路に着いてみると稜線の反対側から吹き付ける風とガスで視界はゼロ。若干気落ちしながら避難小屋に入り、消火器の無事を確認してから軽く行動食をとった後に、神ノ川側の下り道に入りました。


ところが下るにつれてガスがとれ、行手に青空が見えてきました。これはいいぞ!と思いながら足を運び続けて神ノ川ヒュッテに降り着いたときにはすっかり晴天になっており、かえって気温の上昇を心配するくらいになっていました。


日陰沢橋から神ノ川林道の途中までは2019年に伊勢沢を遡行したときに歩いており、そのときにも思ったことですが、西丹沢ではお目にかかれないこれほど立派な林道は誰がどれくらい活用しているのか、人ごとながら気になるところです。

行手に地蔵尾根が見えてきました。これは……なかなかの高距があるのでは?


広河原入口には工事業者さんの車が駐めてあり、バリケードには上述のとおり「当面の間、歩行者も含め通行止」と大書してありました。もし誘惑に負けて犬越路隧道を通っていたら、工事関係者の作業の邪魔をしてしまっていたかもしれません。

一方、地蔵尾根に向かうためにはここから林道を離れて広河原に降り、対岸を目指します。その出だしには「広河原の原生林」と題した解説板があり、かつて台風で大きな被害を受けたこの場所の森林再生の取組みなどが説明されていましたが、その文字のかすれ具合が時の移ろいを感じさせるものでした。


解説板の少し先から左筋に下り、堰堤の上流側を渡って対岸にあるコの字ステップを使って堰堤の下に降りると、踏み跡が広河原へと導いてくれます。


広河原から金山谷側に進み、岩がごろごろした河原を上流方向へと進みます。ここでも渡渉が生じますが、GTXブーティのシューズは浸水に耐えてくれました。

右岸から岩水沢が落ちてきている場所が地蔵尾根(地蔵新道)の取付きです。ちょっと離れたところから見ると「どこから登るんだ?」と不思議に思えますが……。

正面に立つと「地蔵おね」と読める木札やロープが下がっており、そこが取付きだとわかります。よくこんなところに道をつけたものだなと感心したり呆れたりしながら、ここでヘルメットとハーネスを装着しました。まず出だしは正面の岩の前を左上に抜けて、そこから右に踏み跡を辿りますが、のっけから岩の脆さに冷や汗が出てきます。


続いて眼前の岩壁を回り込むロープが左右二方向に分かれている場所に出て、さてここでどちらがいいのかと悩んでしまいました。かつては今回取り付いた場所のさらに50mほど上流に取付きがあったという記事を読んだことがあるので、まずは右方向へトラバースしてみましたが、進んだ先からこの岩壁の上に登る方法が見当たりません。もしかするとトラバースした先に岩壁上へ切り返すラインがあったのかもしれませんし、さらに奥の大きな斜面を横断するラインにもそれらしい踏み跡があったのですが、万一スリップすれば致命的な地形に逡巡した末に、悩むくらいなら先ほどの分岐まで戻って左上した方が確実だと思い直しました。そこであらためて左上ラインに入ると、土のランペ・トラロープ・木の根が手がかりと足がかりを提供してくれていますが、どれか一つに全体重を預けるのはリスキーすぎるのでうまく体重を分散する必要があります。そうした中でも岩の角を回り込むところではワンポイントだけ岩に乗る場所があり、「崩れませんように」と祈りをこめてそこに乗り込みました。この区間は決して難しくないのですが、なにしろ信用できるホールドがないので下手なアルパインよりよほど冒険的です。


岩壁の上に抜けた先には予想通りのザレた急斜面が待っていました。ロープやワイヤーも設置されてはいますが、切れかけているものも少なくないのでこれらは単に道しるべにすぎないと考え、自分の手と足を頼りに木と木をつなぎながら登ります。そんな登りを標高差150mも続けてやっと平らな馬酔木平に登り着いたときは、さすがにほっとしました。

馬酔木平から先は、さほど難しいところはありません。空中索道のワイヤーが固まっている場所を通過し、脆い土のルンゼやキレットをこなし、P1159の手前では「イエスケ」(?)と名前らしい文字列が彫られた小ぶりな鉄剣も見ながら高度を上げていきます。


長い登りの末に鹿柵に行き当たったら地蔵尾根は終わりで、その先の円頂を越えた向こう側に登山道が待っていました。地蔵平の道標の前で休憩をとってヘルメットとチェーンスパイクを外し、カロリーを補給しているときに蛭ヶ岳方面から単独の登山者がそこを通りがかったので挨拶を交わしたのですが、彼がこの二日間で出会った唯一の登山者ということになりました。

姫次の手前には西に開けた場所があり、昨日は見られなかった富士山の全貌を眺めることができました。しかしそれよりも、その手前に見えている犬越路の鞍部に注目。数時間前にあそこを越えて神ノ川まで下り、登り返して今ここにいるのだと思うと我ながら感無量です。


姫次から焼山方向へわずかに進んだところから、縦走路を離れて東南方向に細い尾根が伸びています。これが、この山行での最後のピークとなる榛ノ木丸に通じる尾根です。


地形図が示すとおり、この尾根道は最初に緩やかに下るとあとは小さいアップダウンを重ねながらもほぼ水平にまっすぐ伸び、そしてこちらにも見事なブナ林が広がっていました。尾根上の至る所に「鳥屋森林組合管理地」の標識があるのに、それにしては植林が尾根上に達していないのが不思議ですが、おかげで気持ちの良い空中散歩を楽しむことができました。


展望はないもののひっそりと静かな榛ノ木丸の山頂で最後の休憩をとったら、直角に折れて大杉沢ノ頭の左を巻き、そのまま尾根を下ります。ただし「東丹沢登山詳細図」には榛ノ木丸東尾根として早戸川林道の魚止橋へ下るルートが紹介されていますが、早戸川林道も「徒歩による通行もご遠慮ください」という状態なので、大平へ降りられる別の尾根を使うことにしました。

こちらの尾根は箒沢権現山の下りの尾根とは異なり傾斜が緩やかで、高度を下げるにつれて新緑の木々が美しく広がっていました。緩やかな斜面であるために尾根の選択が難しい面もあるのですが、地形図からも読み取れる溝状の地形のすぐ右を選んでいけば概ねOKです。

最後は門子小屋沢の二俣に向かう尾根を下り、その右に左俣、左に右俣を見下ろすことになります。ここでは近そうに見えた右(左俣)へ下りましたが、後から思えば逆に左(右俣)へ降りた方が良かったかもしれません。


左俣に降り着いて少し下るとすぐに滝場になりましたが、幸い滝自体の斜度はきつくなく、その上から見て左側の斜面を難なく下ることができました。一方、右俣の方には立派な直瀑がありましたが、その上に人工物が見えているように、この二俣から下流側は左岸の方が安定した地形になっています。したがって、先ほど下ってきた尾根からは右俣側へ下り、ただちに対岸に渡ってあちらの斜面を下流に向かうのがベターだったようです。


そこで適当なところで渡渉して左岸に渡ってみると、案の定歩きやすい斜面の中に踏み跡が続いていました。この跡を辿って下流に向かっていくと、やがて出会ったのは麗しのピンクテープ。ここから左の尾根に取り付いて、これをまたぎ越します。


尾根をまたぎ越す場所(昔風に言えば略奪点)に立つと、眼下に堰堤が見えています。その上流側を渡った先で林道に乗り上がり、そこでヘルメットやハーネスなどバリエーション装備の一切をリュックサックにしまって身軽になりました。とはいえここから大平まで15分、さらにそこから鳥屋まで登山地図のコースタイムで2時間35分かかりますが、鳥屋から橋本への終バス(18:51)までの残り時間は2時間25分です。急がなくては。

……と言いつつ、こうした景色を見るとつい写真を撮ってしまいます。左奥に連なっているのは先月雨の中を歩いた丹沢三峰、そして右のすっきりした山が2時間半前にそのてっぺんにいた榛ノ木丸です。この美しい眺めを堪能したら、写真を撮るのはこれを最後にしてひたすら競歩のごとき歩みを続けた結果、鳥屋には終バスの予定時刻の20分前に到着することができました。
踏んだピークは大栂・箒沢権現山・榛ノ木丸と地味なものばかりですが、今回の山行はピークや展望ではなく軌跡自体に意味があります。よって、あらかじめ立てた計画そのままに歩き通し、狙い通りの軌跡を地図上に描けたことで、自分としては満足度の高い山行になりました。また、このルート上では箒沢権現山からの下降と地蔵尾根の登りが難しさを含むパートでしたが、それよりも上法行沢左岸尾根や榛ノ木丸周辺のブナの美林、上法行沢左岸尾根上のP1024の好展望など、純粋に山歩きの楽しさを味わうことのできる場所に出会えたことが収穫でした。
| 日数 | 時間 | 距離 | 累積標高差 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 登り | 下り | ||||
| ① | 2泊3日 | 39:27 | 58.7km | 4,769m | 5,577m |
| ② | 2泊3日 | 33:52 | 66.5km | 4,871m | 5,779m |
| ③ | 2泊3日 | 25:11 | 53.2km | 3,787m | 4,485m |
| ④ | 1泊2日 | 28:33 | 57.8km | 3,795m | 4,538m |
林道歩きが長かったせいで累積標高差は稼げていませんが、その代わり日数を1日短縮して歩けた点も今回の山行のポイントです。そしてこれらの軌跡を一枚の地図上に合わせて描くと、下の図の通りです。
これで横に長い丹沢地域を上(北)から下(南)まで満遍なく横断できたように思うので、自分としては「丹沢横断」はこれで打止めです。しかし今後、他の人が「こういう線も引けるぞ」と知恵比べを仕掛けてくれることを楽しみに待ちたいとも思っています。